掛布雅之 阪神・藤浪が問われる「真価」と「進化」

アサ芸プラス / 2014年5月2日 9時57分

 阪神に、プロの本当の恐ろしさをわかり始めた投手がいます。高卒2年目の藤浪晋太郎です。

 昨季はセ・リーグの高卒新人では江夏さん以来となる2桁白星の10勝をマーク。今季は能見、メッセンジャーとともにチームの先発3本柱として期待されています。ところが、開幕から連敗スタート。3度目の先発となった15日の広島戦(マツダ)でようやく初白星を手に入れましたが、まだまだ課題の多いマウンドでした。プロの大きな壁にぶち当たっている状態です。

 1日の中日戦(京セラ)、8日のDeNA戦(甲子園)は、同じパターンで黒星を喫しました。立ち上がりから制球に苦しみ、球威でカバーしていましたが、球数が100球を超えた3巡目以降に捉えられてしまいました。厳しい言い方になりますが、当然の結果です。構えたところに球が来なければ、捕手も配球を組み立てられません。1打席ごとに球筋に目が慣れる打者に対して、藤浪の球は疲労の蓄積とともに徐々に球威が落ちてきます。3巡目、4巡目以降も力任せで押し通すのは無理な話です。

 昨季は球数制限があり、3巡目、4巡目を迎える前に降りていましたが、先発投手がいちばん苦しいのは7、8回なのです。その山を乗り越えて、9回を完投できるようにならないと、先発の柱とは言えません。

 15日の広島戦の初勝利も、藤浪自身、投球内容には満足していないはずです。7回2失点、104球での降板でしたが、6点のリードがあり、本来なら完投しなければいけない試合です。まずは気持ちよく白星をつけるための首脳陣の配慮でしょう。ですが、藤浪は次戦以降も3連戦の頭を任せられるはずです。2戦目以降の中継ぎ陣の体力を温存させるため、少しでも長いイニングを投げてもらわないといけません。

 9回を1人で投げきるための課題は、まずは制球力を磨くこと。特にシュート回転してしまうストレートの質を修正しなければいけません。左打者のインコースを狙った球、右打者のアウトコースを狙った球が真ん中に入るから一発病となってしまうのです。

 このシュート回転の抜け球は、右打者にとっては死球の危険性があり、恐怖心を植え付ける意図せぬ武器となっていたのも事実です。特に藤浪の場合はフォーム自体も、左足を右打者に向かうようにクロスに踏み出してきますから、なおさら腰が引き気味になる打者もいます。

 ですが、その恐怖心も対戦を重ねるにつれ、徐々に薄れてきます。試合の中で球筋に慣れるのと同じことです。球界では「初モノに弱い」という言葉がよく使われますが、初対戦では投手が圧倒的に有利なのです。ですから、プロの本当の勝負が始まるのは、互いに手の内を知り尽くしてからなのです。1年目で10勝しても、そこから進化がなければ、成績が落ちて当然の世界です。

 考えてみれば、藤浪も4月12日に20歳になったばかり。一軍の先発ローテで投げているだけでも大したものです。それでも厳しい注文をするのは、阪神だけでなく、日本球界を背負うエースになる資質があると思っているからです。日本では無敵状態となり、海を渡ったダルビッシュ(レンジャーズ)や田中(ヤンキース)の域を目指してほしいのです。そういう目で見ると、彼の投手としての長所でもある「冷静さ」が気がかりに感じてしまいます。内面では燃え盛るものがあるのかもしれませんが、どこか冷めた一面を感じてしまう。日本球界のエースになるためにはもっと熱くなってほしいのです。

 打者なら遠くへ飛ばす能力。投手なら速い球を投げる能力というのは、持って生まれた才能でスーパースターの条件と言えます。藤浪はシュート回転の抜け球で150キロを出すのです。ゴルフに例えれば、スライス球で300ヤードを超えるショットを放つようなもの。ギラギラとしたものを剥き出しにし、本気で自分を追い込めば、どれだけすごい球を投げることができるのか。想像しただけでワクワクします。

 ただ単に「勝てばいいんでしょ」という投手では終わってほしくない。2年目のジンクスなど吹き飛ばし、ファンが夢を抱ける投手に成長してくれることを願っています。

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