掛布雅之 DC元年「掛布チルドレン」を総括(1)

アサ芸プラス / 2014年11月22日 9時57分

 今年の秋も昨年に引き続き、高知・安芸で若手の指導に当たっています。球場以外にも宿舎での早朝練習、夜間練習と野球漬けの日々です。昨秋、GM付打撃&コーディネーター(DC)という肩書で、再び阪神に籍を置くようになってから1年が経過しました。この1年、自分なりには大きな手応えをつかんでいます。

 二軍のことを球界ではファームと呼びます。ファームとは英語で農場という意味です。我々二軍の指導者は畑を耕し、種をまき、水を与え、芽を出させ、苗とするまでが仕事です。あとは一軍という田んぼで苗を植え、花を咲かせなければいけません。今年、マスコミが言うところの“掛布チルドレン”として、甲子園という田んぼに植えられた苗が伊藤隼太で、植える場所がなく、捨てられてしまった苗が森田一成です。

 伊藤隼は7月1日に昇格すると、一軍の戦力としてシーズン最後まで生き残りました。52試合に出場して打率2割9分4厘、2本塁打の成績でした。彼は慶應大学で主将を務め、11年のドラフト1位で阪神に入団した、いわゆる野球エリート。自分自身を厳しく追い込んでトレーニングできるタイプです。打撃技術に関してはスイングの際に首が折れる悪癖がありましたが、数多くバットを振り込み、肩、腰、膝を平行に回す軸回転のスイングを身につけ始めました。

 ただ、私は、今のままでは伊藤隼はレギュラーを獲れないと考えています。目の前の壁となっている福留に勝つためには、守備力の差を埋める必要がありますが、どこか諦めてしまっているような面が見受けられるのです。定位置を奪うには、もっと貪欲にならないといけないのです。

 ここからは自分自身の力で育たないとダメなのですが、もう一皮、剥けてほしいものです。ひょっとすると、野球エリートとしてのプライドが邪魔をしているのかもしれません。泥だらけになっているけど、何かきれいに感じる。彼には本当の泥んこになれと言いたいのです。もっと自分をさらけ出して、バカになって、野球に取り組んでほしいと思っています。

 一方の森田はどうか。私は彼のことを昨秋のキャンプで「小バース」と命名し、マスコミにも取り上げられました。注目を集めることで練習にやりがいを持たせる狙いもありましたが、実際にその長打力は二軍でもずば抜けていました。ただ、彼は残念なことに一塁しか守れないという欠点がありました。一軍の一塁にはゴメスという主砲が存在しており、今オフにはかつて4番を務めた新井貴浩でさえ守備位置がダブるため、出場機会を求めてチームを去りました。森田という育った苗を植える場所がなかったのです。

 残念ながら戦力外通告を受けましたが、まだ本人は花咲くことを諦めていません。11月9日に行われた12球団合同トライアウトのシート打撃で、バックスクリーンへの一発を含む5打数3安打1四球と実力をアピールしました。彼は確かに隼太と違って、自分を追い込むことが苦手なタイプでした。性格的に甘い面もありましたが、今回、厳しい現実を突きつけられたはずです。拾ってくれる球団があれば、大きく化ける可能性が高いと見ています。

阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。

アサ芸プラス

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