三橋貴明の「列島丸わかり」報告書 ー自民の“全部乗せ公約”は整合性もなく矛盾しているー

アサ芸プラス / 2014年12月28日 9時55分

 第47回総選挙において、公明党とともに「与党議席数3分の2超」という勝利を収めた安倍晋三総理率いる自民党。

 その「公約」は、非常に興味深いものだった。

 何しろ、公約集の中に「デフレ対策」と「インフレ対策」、そればかりか「安全保障強化」と「構造改革(安全保障を弱体化させる)」までもが入り乱れており、整合性がまったく取れていないのだ。

 さらに言えば、公約を「重点」政策集と名付けておきながら、項目数がなんと296(!)もあり、ページ数は26ページに及んだ。細かい字で詳細が書かれた約5万文字の重点政策を隅から隅まで読むことなど、総選挙の立候補者ですらやらなかったのではないか。

 自民党の総選挙における公約を、私は「全部乗せ公約」と表現した。これは推測だが、安倍総理による解散宣言から公示日までの期間が短かったため、公約担当者が各国会議員の要望を片端から詰め込んだ、という話なのではないだろうか。

 自民党の国会議員には増税派もいれば、積極財政派もいる。もちろん、構造改革派も少なくない。互いに立場が異なる国会議員たちから、必要な政策メニューをヒアリングし、300近い政策を優先順位や整合性を無視して突っ込んだとしか思えないのだ。

 このように疑ってしまう理由の一つは、ほかならぬ重点政策集の内容にある。

 成果を語った冒頭を除き、膨大な政策に数字がほとんど使われていないのだ。何しろ、公約部分で数字が使われているのは、消費税「10%」への引き上げと、法人税率「20%」台への引き下げと、農業政策の部分だけなのである。

 結局、第47回総選挙において、日本国民は政策で政党を選択することを封じられてしまったことになる。私は国民経済を重視するが、「グローバル経済」を愛するグローバリストとは、価値観がまったく異なる。自民党の公約は、私もグローバリストも双方が支持しかねないほどに百花繚乱だったのである。

 自民党は、現在の日本政治における「マーケットリーダー」である。企業の競争戦略という視点から見ると、実はマーケットリーダーが「フルライン戦略」を採用することは理にかなっている。トヨタのようにトラックから高級乗用車まで、全ての層に対する商品をそろえる戦略だ。とはいえ、ことは「政治」であり、ビジネスではない。自民党の詰め込んだ公約は、リーダーのふるまいとしては間違っていないのかもしれないが、「政党」として正しいか否かは甚だ疑問である。

 聞こえがいい政策を詰め込んだ公約を掲げられ、公約同士の整合性も問わないのでは、「公約の品質」が間違いなく劣化してしまう。低質な公約を示された有権者ははたして「何」に基づき、投票判断をすればいいのか、わからなくなってしまうだろう。

 今回は互いに矛盾する膨大な政策を「公約」として掲げ、自民党が圧勝した。安倍総理は公約の中から「選択」をすることで、日本丸の舵を「繁栄の方向」にも、あるいは「衰退の方向」にも切ることができてしまうことになる。

 日本国は、政治的にきわめて危うい状況を迎えることになったのではないかと危惧している。

◆プロフィール 三橋貴明(みつはし・たかあき) 日本IBMなどを経て08年に中小企業診断士として独立。ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」は約100万件中、総合1位(14年5月現在)。単行本執筆、各種メディアへの出演、全国各地での講演などに活躍している。

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