元総理安部晋三「新・美しい国」への道(2) 反省すべき「安全神話」過信

アサ芸プラス / 2012年5月8日 10時57分

――今後の日本のエネルギー政策のあり方について、お聞きしたい。

安倍 事故後、さまざまなメディアで長年政権与党の座にあり、原子力発電を進めてきた自民党に対して、そのことを反省し謝罪すべきだ、という議論がよく見かけられます。

 でも私はいつもこう申し上げています。「原子力発電を安定的なベースになる電源として推進をしていく政策を採用したこと自体は、それまでの日本のエネルギー事情を考えれば、その選択肢しかなかったと思います」と。

 なぜなら、戦前、日本はアメリカに石油をはじめとするエネルギーを依存していた。その結果、石油の輸入を止められて、その後、戦争に突入していきます。

 また、戦後、日本が経済成長する中では、オイルショックを経験しますね。あの時は、原油の上昇により、日本中からトイレットペーパーがなくなるという経験をしました。その時にエネルギーを多様化する必要があったわけです。石油だけに頼っていられないですから。比較的安価で、国際市場の投機に左右されにくい資源を、ある程度の水準で確保していく必要が生じたんです。

 その条件にかなうエネルギーは原子力しかなかったんです。日本は、この狭い国土に1億人を超える人口がいますし、すでに1968年には、世界第2位のGDPを誇る経済大国になっていました。

 また、安価で安定したベース電源の原子力発電によって、日本はその後の経済成長を成し遂げ、競争力を持ち、その結果、生み出された富が年金や医療、介護などの充実した社会保障制度の構築に役立ったわけです。

 一方で、原子力発電は安全だという「安全神話」を頭から信じ込んでいたことについては反省しなければいけないと思います。安全神話のもと準備を怠ったことが、今回の福島第一原発での過酷な事故を引き起こしたわけですから。

――大飯原発の再稼働についてどう思いますか。

安倍 私は原発の再稼働は必要だと思っています。「賛成か反対か」という二極対立の問題ではない。日本にとって必要なんです。

 今の政権の問題点は、電力需要に対してどう対応するかということについて、正面から向き合おうとしていないことです。日本の中長期的なエネルギー政策を考える話と、今現在、原子力発電所が止まっている状態で電力需要にどう対応していくか、という話は別の問題です。現在の電力需要の問題に正面から向き合い、答えを出さないと、日本経済は大きな打撃を受けます。それは、雇用や社会保障にも影響しますから。

 原子力発電がゼロになれば、その分は火力発電に頼らざるをえません。年間で燃料費が3兆円も増大します。しかも、各企業に対する電力コストは現在の2割増になります。となると、ある段階で、経営者は海外への移転を決断しなければいけなくなります。

 今後、原発を運用していくにあたっては、もちろん事故の教訓を踏まえて、安全をしっかりとチェックしなければなりません。想定を大きく超える災害に耐えうる設備を持った発電所から再稼働をしていくべきだろうと思いますね。

 日本が原子力発電をやめてしまえば、中国製やロシア製の原発が各地で建設されるわけです。私は、そういう状況になることこそ危険だと思います。せっかく日本が誇る高い技術ですから、それを生かして、安全な原子力発電所を作っていくべきなんです。

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