廃虚のラブホテルは盗んでいい

アサ芸プラス / 2012年10月31日 10時58分

 司法ジャーナリストの長嶺超輝氏が「特に許せない」と憤るのが、埼玉の振り込め詐欺団の犯行だ。

 震災以前から振り込め詐欺を行っていたグループは、震災に乗じて被災者特例措置を悪用。不正に口座を開設し、インターネット上に、メッセージをアップして義援金を募ったのだ。

 さらに、義援金だけでは飽き足らず、岩手県大船渡市の郵便局へ行き、本来、津波被害者が受けられる緊急融資も受けていたというから、どこまで善意をしゃぶり尽くすのかと言いたくなる。長嶺氏が語る。

「裁判を傍聴していると、そういった善意につけ込む犯罪や、ノリで行われる犯罪が多く、あちこちの裁判所で『人としてどうなのか』という話が出てきます。法律以前の話ですよ」

 これは被災地を付け狙う犯罪者に限ったことではなく、「加害者と被害者が被災者同士」という犯罪にも見られる傾向だという。

 津波に襲われた仙台市若林区で、被災したものの建っている家に侵入し、液晶テレビやスノーボードなどを盗んだ20代の男性6人組の犯行。うち1人は、実家が津波被害にあい1人暮らしを始めた直後だったという。他にも、被災したラブホテルから転売目的でテレビやロデオマシンを盗んだ男たちもいた。仲間に持ちかけた男はこううそぶいたという。

「(ラブホテルは被災して廃虚になっているから)盗みじゃないから大丈夫」

 被告が被災者の場合、理解しがたい犯行動機の数々に、長嶺氏も首をかしげることもたびたびだとか‥‥。

「同じくムチャクチャだと思ったのが、無人のコンビニから転売目的でゲームソフトを盗んだ男の言い訳。彼は福島第一原発の警戒区域に住んでいたため、家族とともに仮設住宅へ。毎日夜9時に寝るという祖父母の生活パターンに合わせているうちに、暇を持て余して携帯ゲームにハマり始めた。そして携帯パケット代がかさんだせいで、犯行に及んだというのです」

 また、津波で全壊した自宅のガレキから出てきた、他人の通帳と印鑑を勝手に使用し、60万円を下ろした男もいた。

「被告人は前科もなく今まで真面目にやってきた人でした。彼の妻子は行方不明で、名義人のおばあさんも行方不明。家族関係者がことごとく亡くなっていて、犯罪は犯罪ですが、同情できなくはないケースです」

放射能不安につけ込む詐欺も

 被災地を舞台に被災者でない人物が、犯罪を起こすというのはどういったケースがあるのか。

「例えば、『震災で太陽光発電が儲かる』と持ちかけてダマすような投資詐欺は自業自得だと思いますが、義援金詐欺のような善意につけ込むパターンは許せませんね」(長嶺氏)

 震災直後には、多くの義援金募集にかこつけた「インチキ義援金詐欺」も横行した。

• 仕事の休み時間中にインターネット上の東日本大震災特設掲示板に義援金を募った男

• 恋人の負担でシティホテルを泊まり歩きながら義援金を募っていた無職の男

 ‥‥など数知れず。

 さらにこの男は恋人とケンカをして客室の備品を破壊し、器物損壊でも逮捕されたというから、フザけるのもいいかげんにしろと言いたくなる。

 また、放射能への不安につけ込む詐欺が多いのも、被災地以外での犯罪の特徴でもある。

「震災前から、米国から輸入した液体飲み薬を通信販売していましたが、福島第一原発事故を機に『放射能を吸収する効果がある』とうたい、『内部被曝に効く』として売っていた会社がありました。罪状は薬事法違反です」

 見えない不安が覆い続ける日本において、放射能関連の犯罪は今後も横行するかもしれない。長嶺氏が言う。

「被災者同士が結束して水の配給をきちんと待ったりなど、世界的に評価されたと言われていますが、その一方で、こういった現実もあるんです。日本は地震国ですから、また大震災が起きる可能性は十分あります。その時、同じような犯罪が繰り返されないためにも、記録し続けていきたいと思っています」

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