スマホで肥大化する大容量データを外付けSSDに逃がすのが思いのほか便利だった件
ASCII.jp / 2021年6月18日 13時0分
スマートフォンで動画を撮影する機会が増えた反面、ストレージの容量不足に悩まされていないだろうか。そこで今回は、8K動画を撮影できるハイエンドスマートフォン、Galaxy S21 Ultra 5Gを例に、撮影した動画データを素早く外部に転送する方法について見ていくことにする。
動画撮影の一般化でスマートフォンの ストレージ不足問題が顕著に
近年、スマートフォンで動画を撮影する人が増えている。スマートフォンに搭載されるカメラ機能の進化もその理由のひとつだが、やはり、SNSやYouTubeなどで誰でも気軽に動画を発信できるようになったことが、最大の理由と言っていいだろう。
それに合わせてスマートフォンの動画撮影機能も年々進化を続けており、4K動画の撮影や、強力な手ブレ補正機能の搭載、暗い場所でも明るく撮影できるといった機能は、比較的安価なスマートフォンでも搭載されるようになっている。Galaxy S21シリーズのようなハイエンドモデルでは、超高精細な8K動画の撮影も可能となっており、もはやプロ向けのムービーカメラ顔負けの動画撮影機能を備えるようになっている。
実際に、若者世代を中心として、スマートフォンでは基本的に動画を撮影し、静止画もその動画から切り出す、といった人が増えている。また、撮影する側だけでなく撮影される側も動画に慣れているため、動画アレルギーもないようだ。もはやスマートフォンでの撮影は静止画から動画に切り替わったと言っても過言ではないかもしれない。
それに伴って問題となりつつあるのが、スマートフォンのストレージ不足だ。写真であれば、通常1枚あたりのデータサイズが数MBから10数MB程度に収まるため、かなりの枚数を撮影したとしてもなかなかストレージ不足とはならない。
一方、動画では、Galaxy S21 Ultra 5Gで8K24pの動画撮影を行なった場合、1秒あたり9MB以上のデータが生成されており、単純計算で1分で540MB、3分で1.6GB以上のファイルが作られることになる。内蔵ストレージが256GBあるとはいえ、OSやアプリなども保存されることを考えると心許ない。
スマートフォンのストレージ不足を補う手段として、ストレージ容量を拡張するmicroSDカードを利用するという方法がある。ただ、近年のスマートフォンでは、microSDカードを装着できない製品が増えており、手軽にストレージ容量を拡張するのが難しくなりつつあり、Galaxy S21シリーズも例外ではない。
そこで重要となるのが、撮影した動画データを外部に移動させて保存し、内蔵ストレージの空きを増やす、という作業だ。写真データのようにクラウドストレージへ転送してもいいのでは、と考える人もいるかもしれない。確かに近年は、無制限のデータプランを利用する人が増えているため、ギガ消費は無視できるかもしれない。
しかし、Googleフォトの容量無制限が5月末で終了し有料化されるなど、静止画においてもクラウドストレージサービスが万能とは言えない中、動画にいたってはそもそも無料で無制限に保存できるクラウドストレージは皆無な状態のため、動画を大量に保存するとなると有料プランで利用可能容量を増やさなければならない場合がほとんどだ。そうなると、やはり手元に用意した外付けのストレージデバイスに移動させるというのがベストな方法と考えていいだろう。
大容量の動画データを転送するなら 大容量かつ高速な外付けストレージがベスト
外付けストレージに保存する方法としては、いくつかの手段があるが、最も簡単な方法が、USB接続の外付けストレージを利用するというものだ。Androidスマートフォンの場合、USBマスストレージに対応している外付けストレージであれば、スマートフォンのUSB端子に接続するだけで利用できる。
そういった外付けストレージとしては、USB接続のHDDやSSD、USBメモリーなどがある。また、USB接続のカードリーダーを介することで、SDカードやmicroSDカードなども利用できる。
そこで今回は、NTTドコモ版Galaxy S21 Ultra 5G(SC-52B)で、USB Type-C接続のmicroSDカードリーダーや外付けSSDを使ったデータ転送速度の検証を行なってみた。
まず、最低条件となるのが、大容量の動画ファイルを問題なく保存できるだけの容量が必要となる。それも、今後のことを考えると、なるべく大容量のものを選択しておくのがいいだろう。特に4Kや8K動画を多く撮影しているというのであれば、最低でも1TB以上の容量を備えるものを選択すべきだ。
また、データ転送速度も重要な選択ポイントだ。USBメモリーや外付けHDDなどでは、書き込み速度がかなり遅い場合が多く、そういったものでは大容量の動画ファイルを転送する場合にかなりの時間を要することになる。そのため、データ転送速度、特に書き込み速度の高速な外付けストレージを利用することが重要だ。特にハイエンドスマートフォンでは、ほとんどの製品がUSB 3.0以上の高速なUSBインターフェースに対応しているため、速度優先なら外付けSSDの利用がベストとなる。
では、実際にGalaxy S21 Ultra 5Gを利用して、USB接続の外付けSSDへ動画ファイルを転送する場合にかかる時間をチェックしていこう。
スマートフォンでもSSDの速度は圧倒的に速く 大容量の動画データも短時間で転送可能
今回は、外付けSSDとしてサムスンの「T7 Touch」1TBモデルを用意した。T7 Touchは、接続インターフェースがUSB 3.2 Gen2に対応し、転送速度が最大1050MB/sと非常に高速な速度を発揮する。
また、パスワード設定によるAES 256bitのハードウェア暗号化や指紋認証によるアンロックにも対応するなど、安全性と利便性に優れる点も大きな特徴だ。Android端末でのセキュリティー設定方法に関しては、動画も公開されているので、必要に応じて参考にしてみてほしい。
Galaxy S21 Ultra 5Gの接続インターフェースはUSB 3.0(USB 3.2 Gen1)なので、オーバースペックと感じるかもしれないが、転送した動画データをPCで活用する場合などに高速アクセスが可能となるため、決してオーバースペックということはない。大容量データを扱う外付けSSDとして定番の存在と言える。
比較用のストレージとしては、サムスンのmicroSDカード「EVO Plus 512GB (MB-MC512H)」と「EVO 128GB (MB-MP128D)」を用意し、USB接続のSDカードリーダーで接続して利用することにした。これは、多くのスマートフォン利用者がmicroSDカードを持っていることを考慮し、あまりコストをかけることなく利用できる外付けストレージと考えて、microSDカードを比較用として用いることにした。
なお、用意した2種類のmicroSDカードのうち、EVO 128GBは数年前に販売されていた旧モデル品だが、低価格であまり速度の速くないmicroSDカードを利用する場面を想定して用意した。対するEVO Plus 512GBは、書き込み速度が最大90MB/sと高速で、非常にコストパフォーマンスの優れるmicroSDカードとして定評のモデルということから選択している。
転送速度の検証は、Galaxy S21 Ultra 5Gのカメラアプリを利用して撮影した約20分、容量約11.3GBの8K動画ファイルを、ファイル操作アプリ「マイファイル」を利用して内蔵ストレージから外付けストレージへ転送するのにかかる時間を計測した。計測はストップウォッチを利用し、3回計測している。
まず初めに、USB2.0接続のUSBカードリーダーを利用し、microSDカードへの転送時間だ。結果は以下のとおりで、EVO 128GBでは約10分31秒、EVO Plus 512GBでは約7分22秒だった。特にEVO Plusは書き込み速度が最大90MB/sのはずだが、テストでは約27MB/sほどと、本来の速度の1/3以下しか発揮できていない。
この原因は、USBカードリーダーにある。USB 2.0のデータ転送速度は理論値で最大480Mbps(60MB/s)で、実効速度はさらに遅い。そのため、microSDカード本来の速度が引き出せないのだ。
そこで、別途USB 3.0対応のカードリーダーを用意して試した。その結果は次のとおりで、EVO 128GBは約9分46秒、EVO Plus 512GBは約2分33秒となった。
EVO 128GBはもともと書き込み速度があまり高速ではないこともあって、USB 2.0対応のカードリーダーを利用した場合と比べても転送時間はさほど短くなっていない。しかしEVO Plus 512GBは転送時間がおよそ1/3ほどにまで速くなった。これは、速度としてはおよそ74MB/s程度に相当する。
EVO Plus 512GBの書き込み速度の最大値までは届いていないが、実測で74MB/sほどの速度が発揮されているということは、転送速度をほぼ最大限引き出せていると言っていいだろう。
ただ、速くなったとはいっても、1つの動画ファイルを転送するのに2分半以上もかかっている。今回は容量の大きな動画ファイルを転送しているということもあるが、動画ファイルをまとめて転送する場合など、より大容量のデータを転送する場面ではかなりの時間待たされることになり、体感ではまだまだ速いとは感じない。
外付けSSDならmicroSDカードより5倍高速
では、外付けSSDのT7 Touchを利用した場合の転送時間はどうか。その結果は下に示したとおりで、転送時間は約35秒と、比較的高速なmicroSDカードであるEVO Plus 512GBの1/5ほどの短時間で転送が完了している。
転送速度としてはおよそ320MB/sほど。T7 Touchが持つ最大限の速度が発揮されているわけではないが、接続インターフェースがUSB 3.0であることを考えると、申し分ない速度が引き出せている。これだけ短時間で大容量の動画データを転送できれば、転送待ちでイライラすることもないはずだ。
なお余談になるが、USB 2.0のケーブルで接続してしまうと30~40MB/s程度の速度しか出ないので、T7 Touch同梱のUSB 3.2 Gen2対応のケーブルを使おう。
スマートフォンの動画を転送するなら外付けSSDで決まり!
今回見てきたように、スマートフォンでも外付けSSDは高速な外部ストレージとして有効に活用できることが分かってもらえたと思う。特に、スマートフォンで動画を撮影する機会が多いという人にとっては、撮影した動画データを素早く転送できるという点が非常に大きな魅力となるはずだ。なにより、PCで転送したデータを活用する場合でも、SSDなら保存データに高速アクセスできることで、編集作業なども快適に行なえる。
確かに、外付けSSDはmicroSDカードやUSBメモリーに比べるとやや高価な場合が多い。とはいえ、速度は圧倒的で、そのコスト差を補ってあまりあるほどのメリットがある。そういった意味では、microSDカードが利用できるスマートフォンでも、外付けSSDの利用を視野に入れてもいいほどだ。そのため、スマートフォンで動画を撮影しつつ、ストレージ不足や、撮影動画の転送に時間がかかる点を気にしているなら、外付けSSDの活用を強くお勧めしたい。
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