観光客を最も呼べるSNSは、Instagramだった!
ASCII.jp / 2022年9月27日 11時0分
SNSでの活動と観光客数の関係は?
コロナ禍で大きなダメージを受けた観光・旅行業界。国内・国外とも、観光客が少しずつ戻りつつありますが、依然として厳しい状況にあることには変わりありません。
観光客の誘致には近年、TwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSが、積極的に活用されるようになってきています。地方自治体の観光協会でも、そういった傾向は明らかですが、そういった観光に関するSNSアカウントはいま、全国でどのくらいあるのでしょうか? そしてそれらの活動は、観光客の流入にどれくらい効果があるのでしょうか? ネット上の情報を分析して、まとめてみました。
全国の観光協会サイト数とSNSアカウント数を調査
まず、全国の観光協会のWebサイトを把握するため、国土交通省観光庁がまとめているWebページから、47都道府県の観光協会サイトのURLを確認しました。 記事調査時点ではこちらのページ(https://www.mlit.go.jp/kankocho/news04_000082.html)でご案内されている「観光庁・全国自治体・観光協会等リンク集」というページが存在していたのですが、現在はメンテナンス中のためかアクセスできなくなっております点、ご容赦ください。
上記ページを確認したところ全国の自治体や観光協会が運営する観光に関するWebサイト数は、2,403あることがわかりました。その中で、Webサイトが存在しなくなっている箇所を除いた観光協会数は、2,322となりました。
次に、それぞれのページにアクセスし、各観光サイトが開設している公式SNSのアカウント情報を収集しました。収集できたアカウント数(Twitter、Facebook等、複数のSNSアカウントの合計)は、全国で2,742アカウントありました。都道府県別の観光協会数、SNSアカウント数をまとめた表がこちらです。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/19/3407088/x/e00ffef15511622b.png)
各観光協会が開設しているアカウントで、SNSごとのアカウント数をみると、最も多く開設されているのはFacebookで、ほぼ3割の協会が開設。次にTwitter、Instagramと続き、どちらも約2割の協会で開設されています。それに続いてYouTube、LINE、TikTokの順となりました。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/19/3407089/x/383be67f52ce38b1.png)
都道府県別SNSフォロワー数の合計、最多は福岡
この開設数上位の5つのSNS(Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、LINE)について、各観光協会のアカウントのフォロワー数(チャンネル登録者数)をそれぞれ調査し、それを都道府県ごとに合算しました。また検証のために、各エリアの人口についても表にまとめました。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/19/3407090/x/41e3fba05eaa8d85.png)
その結果、最もSNSのフォロワー数の合計が多いのは福岡県で、108万アカウント(人口では9位)、次が北海道の59万(同8位)、3位が高知県で50万アカウント(同45位)となりました。各都道府県の観光協会のフォロワー数合算と人口には、比例関係は見られません。つまり、人口が多ければ必ずしもフォロワー数が多いというわけではなく、何か違う要因があると考えられます。
そして、ここからが本題です。これらのSNSのフォロワー数の多寡は、観光客の数と関係があるのでしょうか?
フォロワー数と観光客数の相関はInstagramが最も強い!
各都道府県の観光客に関するデータとして、観光庁が集計している「観光入込客統計(かんこういりこみきゃくとうけい)」を参照しました。このデータは、「本統計は、平成21年12月に策定した「観光入込客統計に関する共通基準」に基づき都道府県が調査を実施し、整理した「観光入込客統計調査データ共有様式」を観光庁でとりまとめ、全国集計したもの」であり、集計・公表する項目としては、 ・観光地点を訪れた観光入込客数(都道府県単位) ・観光地点を訪れた観光入込客1人あたりの平均消費額(都道府県単位) ・観光地点を訪れた観光入込客の総消費額(都道府県単位) とあります。
今回は、最新データである2020年分の調査結果の中の、「日本人の観光目的」に関する統計データを使います。その集計表が表4です。なお、大阪府は未導入のため全46都道府県で、また集計が完了しているのは29都県となります。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/19/3407091/x/c6509640c9edbf6b.png)
このデータには観光客の居住地の区別と、宿泊か日帰りかの区別がされているため、詳細な観光行動を把握することが可能です(数値の単位として「人回」とありますが、これは1人で2回観光した場合は2人回とカウントされるというものです)。
この表からは、2020年度は37万8,000人の青森県の観光客が県内で宿泊をともなう観光を行い、岩手県の観光客は168万1,000人が県外に日帰り観光をしたと読み取ることができます。
このデータの県内宿泊、県内日帰り、県外宿泊、県外日帰りの観光客数と、各都道府県別のフォロワー数の相関分析を行い、相関係数※の算出を行ったところ、図1のようになりました。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/19/3407092/x/946e9c22d38a6b21.png)
※相関係数とは2つのデータ群の関係性を表すもので、-1~+1までの値を取ります。プラスの場合は正の相関が、マイナスの場合は負の相関があるといい、数値の目安として0.0~0.3未満はほぼ無関係、0.3~0.5未満は弱い相関、0.5~0.7未満は相関があり、0.7~0.9未満は強い相関があると言われています。
この結果より、SNSアカウントのフォロワー数と、県内宿泊客数・県内日帰り客数との間の相関係数は0.6を超え、はっきりした相関が見られることがわかりました。県外観光との相関が低いのは、この観光データが2020年度の調査であるため、コロナ感染拡大防止を考慮して県境をまたぐ行動を控えたことも理由かもしれません。
観光客数と最も相関が強いのはInstagramのフォロワー数
ここまでの調査では各SNSのフォロワー数の合算でしたので、最も関係性の強いSNSがどれであるかを調べるため、SNSごとのフォロワー数で、同様の相関分析を行った結果が図2です。
![](https://ascii.jp/img/2022/08/19/3407093/x/f91b40e62c51cf5c.png)
この結果、最も相関が強いのはInstagramのフォロワー数と県内宿泊客数であることがわかりました。
今回の調査、分析により明らかとなったInstagramのフォロワー数と、観光客数の相関関係ですが、観光協会のInstagramをフォローしている方がその情報に触れて実際に旅行に行きたくなったのか(旅前行動:タビマエ)、旅行中にその地域の情報をもっと知りたくなってInstagramをフォローされたのか(旅中行動:タビナカ)、旅行された方がその地域の魅力を感じてフォローされたのか(旅後行動:タビアト)、どの段階でフォローされたのか今回の調査では明らかにはできていませんが、Instagramのフォロワーと観光される方に接点があることは間違いありません。
写真や動画が中心のInstagramは、言語に依存しにくいSNSと言われます。国内外の方々に観光地の魅力を発信するためにもぜひ、積極的にInstagramを活用いただければと思います。まだInstagramのアカウントを開設されていない約8割の観光協会さん、およびSNSで観光誘致を検討されているの皆さまには、魅力的な観光地の情報を発信するために、ぜひInstagramを効果的に運用されることをおすすめします!
エリアLOVEWalker総合研究所では、今後もこのような調査分析を行い発表してまいりますので、ぜひこちらのSNSアカウントのフォローをお願いします。また本調査結果、内容について詳しくお知りになりたい方はこちらまでお気軽にお問い合わせください。
玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長、一般社団法人メタ観光推進機構理事)からのコメント。
”エリアLOVE総研”始動!皆様、よろしくお願いいたします。今回の調査は各自治体の観光サイトのSNSの実態を比較するという、非常に興味深いリサーチなのですが、これと実際の入込客数の相関を見るという、卵が先か鶏が先か的な調査結果が面白い。入込客が多いという事は観光的な力が強いわけで、SNSのフォロワーなども当然多くなりそうなのですが、実際に見ていくと意外な人気観光地でフォロワー数が少なかったり、人口が全国で45位の高知県がフォロワー数が50万で、福岡県、北海道に続いて3位に入るなど興味深い結果が出ています。
特に、今回、各SNSごとの相関を調べて、Instagramが他のサービスに比べて、統計学上有意な数字をたたき出したのは注目すべきです。今後も、こういった新しい観光、観光DXと言えるような取り組みを続けていきます!
※上記各URL、調査数字は記事作成時点のものです。
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