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PLATEAUは高精度な都市素材となる。フォトリアルな3D都市モデル実現へ

ASCII.jp / 2022年9月23日 12時0分

この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 ビジュアライズ以外にも、VJやインタラクティブ広告などにもPLATEAUを使っていきたいと語るテクニカルディレクター集団BASSDRUMに所属する林 久純氏。これからPLATEAUをはじめる人に向け、習得の方法やデータ活用のコツについて聞いた。

LOD1とLOD2の違いを知る

――これからPLATEAUを使ってみたい人に向けて、どのような技術理解が必要で、どこから始めるとよいかなど、アドバイスをお願いします。

林:どのプログラムでも同じだと思いますが、実際に画面に出すというところを体験すると、楽しさにつながります。ですから、なるべく自分が慣れているツールや、ネット上に情報が多いツールを使って、まずは試してみるのがよいかと思います。

 そうした意味で言うと、今回僕は使っていませんが、Unityは、検索すればいろいろな情報が出てきます。逆にTouchDesignerは、英語の記事ばかりなので、情報という意味ではそこまでではありません。

 Three.jsは、新たに始めるというところで言うと、難易度が高い気がします。すでに仕事や趣味で、ある程度Three.jsを触った経験があればおすすめできますが、まったく新たにということであれば、UnityやTouchDesignerのほうが、簡単だと思います。

――基礎知識として事前に知っておいたほうがよいことはありますか。

林:一番大事なのは、LOD1とLOD2の違いです。最初は、よくわからずにLOD2を開くと、とても重くて、気持ちが萎えてしまう部分もあると思います。LOD1とLOD2とでは、データ量がまったく違います。そこをきちんと知ってから触るのがよいのではないかと思います。

――林さんは、どのようにPLATEAUについて理解したのでしょうか?

林:LODという概念は、「PLATEAU 読み込み方」「PLATEAU 使い方」などで検索して知りました。

 LOD1とLOD2の違いを知ったとき、それなら情報量が多いLOD2のほうがいいなと思って、LOD2のデータを開いたんです。それで数分待って、これは困ったなと思いました。それで、LOD1を開いたら、サクっと開けたんです。データ量の違いがそこでわかりました。

 用途にもよりますが、取りあえず、パッと街のデータが読み込まれて、何をするでもないけれども、見た人を感心させたいのであれば、別にLOD1でもいいかなと思います。テクスチャ付きで自分の知っている場所をレンダリングしたいのであれば、LOD2になると思いますけれども……。

Blenderで前処理・データ整理をする

画像提供:林 久純氏

――地理空間情報に詳しい業界以外の人がもっとPLATEAUに親しみやすくするには、データサイズや読み込みの問題を解決すればよいのでしょうか。

林:そうですね。PLATEAUは東京都内ほぼ全体、23区のデータが使えますよね。ですが、そこにたどり着くまでに、特定エリアの3D都市モデルが簡単に検索できると、使いやすさはだいぶ上がるのではないかなという気がします。

 そしてメッシュ番号。最初、メッシュの探し方がわかりませんでした。「○○町」のように町名まで調べたら、該当するメッシュがリストで出てきて、ダウンロードできるようになると、とてもいいですよね。車のダッシュボードにあるような紙の地図は、区画で分かれているじゃないですか。僕の中では、PLATEAUのメッシュが、そことシンクロしました。地図業界ではこういう概念なんだなということで理解しました。

 あとは、使うというか、ビジュアライズするまでのデータの整理で、ちょっとハードルが高いかもしれないと思いました。個人的には、今回僕がやったような、LOD1とLOD2の組み合わせというのは、演出系では結構いい手なのではないかという気がしています。全部LOD2でやると、どうしても処理負荷とかで思うようなことができなかったりしますし、メリハリもつきますね。

――PLATEAUの3D都市モデルが登場する前は、どのようにして都市を表現していたのでしょうか?

林:3Dデータを買っていましたが、そもそもハードルが高く、選択肢として、こういう表現が少なかった気がします。たとえば渋谷をモデリングしたデータなどは、一応あるのですが、地図屋さんから買うとしても、案件で使えないようなモデルの時もあります。またファイル形式についても、こういう表現で使うように作られていないということもあります。

 いまはPLATEAUがあって、すごくいいですね。OPEN HUBの案件でも、俯瞰のシーンは、「PLATEAUでいけるでしょ」というトーンで皆話していました。ただ、テクスチャは、影が入り込んでいたりするので、そこは調整が必要ですという話はしました。

 これまで、都市素材の背景はあまり選択肢がなく、3Dモデルは東京でも背景は「よく見たらニューヨーク」みたいなものを使っていたんですけれども、そうした部分にも、リアルな街並みを再現できると、より精度の高いものができそうだという気がします。

テクスチャマップがもっときれいになることを期待

――林さんが個人的に、こんなことにPLATEAUを使ってみたいというところはありますか。

林:まだあまり経験はないのですが、VJなどの映像やインタラクティブ広告ですかね。PLATEAUは東京の都市データが大量にあるので、コードがそのままでも場所が変わると表現も少し変わったりすると面白そうですね。

林氏によるTouchDesignerでのPLATEAUのモデルをワイヤーフレームで表示したサンプル。映像の後半に内部の紹介と、映像の概要欄にプロジェクトファイルへのリンクが掲載されている。 https://www.youtube.com/watch?v=yHqDjvgfjmQ

――PLATEAUはここが課題だという点と、将来的な期待について教えてください。

林:課題に関しては慣れてしまったので、そんなにありません。ただ、ファイルサイズやデータの読み込みは早い方がよいですよね。

 あとは、LOD2のテクスチャが、もっときれいになったらいいなと思うところはあります。引きであればよいのですが、寄ると少しぼやっとするので。よく見ると歪みもありますし、撮影した時間帯の問題なのか、しっかり影が入っているところもあります。解決は難しそうですけれども。

[補足] PLATEAUのテクスチャは航空写真を基に作られている。そのため、解像度が低かったり、撮影日時の関係で影が入っている箇所がある。

 この点、一緒にOPEN HUBの案件をやっていたWOWさんも、PLATEAUのモデルを使っていたのですが、とってもきれいに使っていたんです。僕のほうでもLOD2のデータをBlenderで検証を兼ねてレンダリングしてみたのですが、オルソ画像とライト周りをきちんと作ってあげれば、既存のテクスチャでも結構きれいに出せそうでした。

 あと最近は、ディープラーニングを使って、ぼやけた画像を精細化する技術があるので、元のテクスチャ素材を大きくして、トーンカーブや明暗をはっきりさせたうえで、地面のテクスチャを貼る。それらに対して、別にライティングで影とかを作る。ライティングも、全天球のライトのようなもので調整してもいいですね。やり方次第で、克服はできそうだなと思いました。

林氏が提供してくれたBlenderでの検証レンダリング

 今後のPLATEAUに期待している点ですが、デモとして拝見させていただいた沼津市のLOD3のデータでは、信号や町中の看板、窓枠までメッシュが存在していて驚きました。このクオリティーで利用できるエリアが広がっていったら、LOD2以上にフォトリアルなビジュアルが作れそうで楽しみです。

PLATEAUのLOD3データ(沼津市
林 久純(HISAYOSHI HAYASHI) HYS INC., BASSDRUM  Designer, Programmer, Tech director デザイナー・プログラマー・テクニカルディレクター。都内の制作会社でデザイナー兼プログラマーとして勤務した後、2008年からフリーに転向。2014年にHYS INC.を立ち上げる。2015年から3年間はPARTY TOKYOにも所属。JavaScriptやopenFrameworkなどを使った、インタラクティブで動きのあるプログラミングが得意。デザイナーとしての経験を活かし、技術とデザインを交えたテクニカルディレクターとしても活動中。

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