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世界向けであって日本向けでもある「Sonos Ray」にかける想い

ASCII.jp / 2022年9月17日 15時0分

新製品のRayとSub Mini

 高機能なワイヤレススピーカーで知られる米国ブランドSonosは最近、ホームシアター製品にも力を入れている。国内販売がようやく始まった、最新のサウンドバー「Ray」もその成果のひとつだ。

 9月14日には都内でイベントを開催。同日発表したサブウーファー「Sub Mini」も展示。既発売のサウンドバー「Arc」や「Beam(Gen 2)」にRayを加えた、活用提案やデモを披露した。

トークショーの様子

 また、この日に合わせて日本独自の4K/Dolby Atmosを使用した映像・音楽コンテンツが期間限定で公開されている。制作を手掛けたRhizomatiks代表の真鍋大度氏とSonos製品のプログラム責任者であるジェフ・ダーダリアン氏によるトークショーも開催された。このコンテンツは「Feel More with Sonos」をテーマに、音の動きと映像をリンクさせた独特な世界を表現。楽曲は歌手のUAと、LAの気鋭ミュージシャンNosaj Thingとのコラボで制作した。10月14日までの期間限定でNeSTREAMで無料配信している。

Rhizomatiks代表の真鍋大度氏とSonos製品のプログラム責任者であるジェフ・ダーダリアン氏

 編集部ではダーダリアン氏、真鍋氏に直接取材する機会も得たので、イベントの内容と合わせて紹介する。

ホームシアターに力を入れるSonos

 Sonosは現在、ホームシアター製品のラインアップ拡充に力を注いでいる。シネマ級の音を自宅に届けることがコンセプトで、パンデミックを背景とした動画ストリーミング需要の拡大を追い風としながら、ユーザーのエントリーポイントになる製品を戦略的に投入しているという。

Sonosのホームシアター製品群

 サウンドバーでは、クリアで実在感があり、クリエイターの意図を反映できる音を重視しているという。そのために適切なトーンバランス、セリフの情報が含まれるセンターチャンネルを生かした表現、空間性、ベースレスポンスなどを評価。その手段として、アコースティックの改善だけでなく、パワフルなDSPも積極的に活用している。また、設置環境に合わせて再生音を微調整するTrueplayの改善にも取り組み、無料のソフトウェアアップデートを通じて、継続的な進化ができる仕組みも用意している。

Rayはすべてのユニットを前方に向けて配置しているので、写真のような狭いスペースに入れることもできる。

細かな地域のリサーチをグローバルの製品に反映させる

 Rayのような小型のサウンドバーでは低域の再現など難しい要素が多いが、開発に際してはまず最初にサウンドエクスペリエンスのゴールを設定し、ハードウェアのアーキテクチャに落とし込んでいく。Rayでは専用のバスレフポートを開発し、ペアで設置している。空間性は左右のツィーターで表現し、中央にミッドレンジとバス用のユニットを2基搭載。それぞれにウェーブガイドを設置して広がりのある音を出している。前面に4つのユニットを並べた、スピーカーアレイにすることで、位相のコントロールが可能となり、2chのステレオ再生だけでなく、中央にセリフなどを集めた3ch再生も可能となっている。音楽、映画のそれぞれで適切な再現になる調整を加えている。ユーザーがトレベル・バスを調整できるが、制作者の意図を大きく変えるような音の加工は最小限に止める方針だという。

Sonos Miniでは対向配置のウーファーを使用して本体の振動を抑制。写真では低域はかなりズンズンと鳴らしているが、上に水を入れたコップを置いても水面がまったく動かない。

 Sonosは北米を中心としたグローバルのブランドだが、早い段階で世界中の地域を訪問し、自宅の視聴環境をリサーチするという。そこで各地域の特殊性がないかを学び、1つの製品でもグローバルで機能できる仕様に落とし込んでいる。また、複数のサイズや形状を用意することで、部屋があまり広くない日本の住環境にもマッチした選択肢を提供している。Truplayプロセスは最後のカギで、製品を設置しているユーザーの環境に合わせた自動調整をし、出荷時には盛り込めない細かな最適化をする。

競合は意識せず、自分たちが理想とするものを作る

 「競合は意識しない」という言葉はSonosの担当者がよく口にする言葉だ。重要なのは正しい価値を吟味して提供することである。多彩なフォーマットへの対応や適切なベースレスポンス、システムの拡張性などを通じ、プレミアムなサウンドとシンプルで簡単に使える操作性、美しいデザインというブランドの強みを最大化しようとしている。

 特に使いやすさの部分では、Beam(Gen 2)ではHDMIのみ、Rayでは光デジタル入力のみといった形で敢えて入力端子を絞り込む選択をしている。これは選択肢が増えることでユーザーが逆に混乱することを避けるためだという。

 一方で、光デジタル信号をHDMIに変換するアダプターをBeam(Gen 2)に同梱したり、光デジタル入力用のコネクタを独自形状にして、上下を意識せず、ケーブルのぬきっしができる仕組みをRayに取り入れたりと、細かいが配慮の行き届いた試みも取り入れている。

会場では写真のSonos ArcとSUBを2台使った構成で、真鍋氏が制作に携わったコンテンツの上映が行われた。

空間オーディオの制作環境は変化 「あとは面白いものを作るだけ」

 昨今では“空間オーディオ”という言葉がよく使われるようになり、音楽の分野でも立体的で実在感のある音の表現が注目されている。真鍋氏は以前からSonosの製品になじみがあり、スペックもよく知っていると話す。作品では、オーディオと映像の相互化に取り組み、Dolby Atmosのフォーマットに含まれるオブジェクトの位置情報と映像をリンクさせ、音の可視化や映像と音のインタラクションに取り組んでいる。音の空間情報を映像に同期するためにプログラミング作業も行ったという。

 この作業を通じて「改めて、いまの技術はどこまで進化しているのかを知る機会になった」と話す。イマーシブシアターなど再生できる環境も増え、360度映像と立体的な音響の組み合わせもしやすくなっているとする。制作には手ごたえもあったようで、インスタレーションなどへの展開にも意欲を見せていた。

「Feel More with Sonos」デジタルアートコンテンツの概要

作品名:Tokyo Mating Dance 著作権者:Rhizomatiks 作曲・編曲:ノサッジシング 歌詞:UA 作曲:イガキアキコ

 「マルチサラウンドエンジニアリングをやっていたから思うところもある」とする真鍋氏。より使いやすいソフトウェアやツールへの期待感を示すとともに、以前に比べクリエイターがコンテンツの制作に集中できる環境になっているともした。過去には64台ものスピーカーを配置したマルチサラウンドに取り組んだこともあるそうだが、その際はキャリブレーションをするだけでも大変だったという。しかし、今ではそれがすぐにできるようになっている。

 制作したコンテンツでは、本来はあり得ない場所から声が聞えるような演出も取り入れているが、この経験は「映像的に音の配置をして、ミックスした感じ」に近いという。音に空間方向のベクトルが加わることで、音楽表現の次元がひとつ高くなった実感があるとする。空間オーディオは劇場での歴史は長く、音楽での活用も始まっているが、音楽として試されていないことはまだまだ多く、そこに関心があるとした。「あとは面白いものを作るだけ」であり、「ここが20年前と違うところだ」というコメントもあった。

 また、スタジオの音をSonosでどのぐらい再現できるかは心配だったが、本当に音が定位して空間オーディオの音が再現できる。コンパクトなシステムで自宅でも楽しめる。誰もが入手できるのはすごいことだという感想も述べていた。

 今回の作品では、イントロ部で上述した音の空間情報の可視化、ダンスとしての音楽の表現に加えて、UAの歌詞に連携した映像を作るため、AIを使い歌詞に含まれるワードから連素される映像の自動生成などにも取り組んだ。最後に現れる渋谷の交差点の映像は、歌詞の情報をAIに渡して作られたものだという。

岩井俊二氏

映画における一番いい音は0点であり、0点満点の世界

 イベントでは映画監督・岩井俊二氏のインタビュー映像も流された。

 岩井氏は「映画において一番いい音は、気にならない。へんに目立たない」ことだと逆説的に説明。一方で、人間の耳は生き残っていく過程で身に着けたセンサーであり、「その感覚の良さは馬鹿にならない」とした。映画監督は、このデリケートな感覚に対して向き合い、こだわっていくことが重要であり、観客が気にならないナチュラルな音を作ることが必要であるとする。映画における一番いい音は0点の音であり、100点満点ではなく0点満点の世界であるという持論も披露した。

 インタビュー映像では、こうした岩井氏の考え方が反映された2020年公開の映画『ラストレター』のシーンを引用しながら、音響制作に対するこだわりや作品内での聴きどころなどを紹介した。岩井氏は「スピーカーの方向性が変わってくれば、作る音楽も変わってくる」としつつ、「正解がない世界なので、なるべく固まらないようにしたい」「次に生まれてくるものは初々しく、みずみずしいものであるに違いない。初めてで新鮮な体験がさせられる作品を作りたい」といいた意欲についても語っていた。

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