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悩みに悩んだレーザー加工機選び、筆者のベストは「LaserPecker2」

ASCII.jp / 2022年9月27日 16時0分

筆者が選んだのは、LaserPecker2

 マジックのシカケを作ったり、自分のロゴ入りグッズを製作したりするためのレーザー加工機選び。詳しくは前回の「個人でもできる!? 理想のレーザー加工機を探す旅」をご覧ください。今回は、その続編です。

 検討を重ねた結果、筆者は「LaserPecker2」を選択しました。

 LaserPecker2は、クラウドファンディング「Kickstarter」と「Indiegogo」で注目を集め、成功を集めたレーザー彫刻機。日本のクラウドファンディング「CAMPFIRE」では、目標金額が10万円のところ、なんと2億円以上(208598%)の支援が集まったことで有名になりました。

 レーザー出力が5Wと高出力なだけでなく、ヘッドを可動させるタイプではないために加工が速く、全体のサイズがコンパクトなのが特徴。それが、多くの資金を世界中から集めた理由でしょう。

レーザー出力が5W。低出力の加工機よりも、加工する材料の幅が広がる

筆者が感じた、LaserPecker2のアドバンテージ

 では、なぜLaserPecker2を選んだのか。筆者が感じたアドバンテージをご紹介しましょう。

○ブルーレーザー  LaserPecker2で使われるレーザーは、一般的な赤色のレーザーと違い、ブルーレーザー。銅系金属(真鍮を含む)で吸収率が高く、加工がしやすいといわれています。銅以外の金属でも、ニッケルでは1.5倍、炭素鋼では1.3倍吸収し、エネルギー効率が良いことも知られています。

 基本的に、レーザー加工機は、材料に光を照射することで加工をします。よって、光が反射する磨かれた金属の表面には不向きな加工法です。ただ、筆者の場合は、金属への刻印はほとんど想定していないで、あまり心配していません。

○彫刻解像度が1K、1.3K、2Kの3つのオプションから選択できる  この解像度の数値オプションは少し特殊です。レーザー直径の0.05mmを走査させながら加工(彫刻)することから、一般的な解像度とは異なります。原理的には、レーザーのエネルギーで材料表面を燃焼、加熱させるので、どれほど精密に彫刻できるかは、加工対象物の材質にも左右されます。

 ざっくり言えば、解像度が低いほど、レーザーの走査スピード(加工スピード)が上がるので、加工対象が紙や木材、レザーなら加工速度の速い1Kで、金属なら2Kの解像度で精密に加工するように選択するといいでしょう。 

○専用アプリはiOSなどモバイル端末から操作する  筆者は最初、加工機を操作するアプリは、PCで使えた方が便利だと考えていました。しかし、レーザー加工が煙やガスを発生させることを考えると、換気しやすく、窓が大きな部屋か、屋外で使用するほうがより安全に加工できます。iPadなどのモバイル端末から操作するほうが、移動に便利だと気がつきました。

 このあたりは、ユーザーの作業環境にもよるので、悩みどころかもしれません。

専用アプリの画面。材料にあわせ、加工の強さを詳細に選択できる

 アプリが扱える画像データは、JPEG、PNG、SVG、BMPなど画像ファイルのほか、.ai形式のファイル、G-code、CAD、CDR、DWGと多く、データ変換に困ることはないでしょう。

 なお。ハンディーでも使えるので、家具の側面や壁などにも刻印できたり、専用の回転作業台を接続することで、10cm×2mの大型サイズで彫刻できたりします。また、円筒形の材料の側面に彫刻できるなど、材料の形に制限がないことも特徴です。

専用の回転作業台。円筒形の材料を回しながら加工できたり、加工機を走行させて2mの彫刻もできたりする

組み立てからテスト彫刻まで

 組み立ては簡単、本体の接合部や部品などもしっかり造られています。ボディーやスタンドに十分な重量があり、全体的にカッチリとした加工がされています。ハンドルもしっかりして持ちやすく、電動のヘッドの昇降装置もガタツキもなく快適に使えます。

ヘッドとスタンドは指で回せるネジで接続する。全体的にしっかりと作られている印象

 その反面、ヘッドが重く、ハンディ(手持ち)で引き出しの前板や壁面など、垂直箇所に加工する場合には、固定するための台や補助具が必要かもしれません。

 キャリアケースもセンスよく、個人的にはピッタリのサイズ。外出先でも使用や出張先でもスタイリッシュに持ち運べます。

スタイリッシュなキャリングケースも持ち運びや収納に便利

 アプリも直感的でわかりやすく、Bluetoothの接続もスムーズでした。たまにiPadとLaserPecker2の接続が切れることがありますが、再接続をすることで対処できます。

 アプリには木、竹、紙、金属など、材料にあわせて推奨されるレーザー出力や深さ(走査速度)が設定されています。しかし、材料によって個体差があるため、失敗なく加工するにはテスト加工が必須です。例えば、ベニヤ板の種類、アルミでも成分によっても出来上がりに微妙な差が生まれます。

 一番の注意点は、イメージの天地が逆に出力されるので、データを反転させておくか、加工対象の天地を反対にしておく必要があるところ。

 アプリでプレビューモードを選ぶと、弱いレーザーによる四角い枠線を表示することができ、材料の正確な位置を教えてくれるのも便利です。黒い色の材料などの場合、プレビューのレーザー光が見えにくいことがあります。そんな場合、アプリ上でプレビューの明るさを調整することも可能です。

どのあたりに加工がされるかの範囲を示すプレビューモード

 レーザーから目を守るための防護メガネは、夏は曇りやすいため、付属の防護シールドはとても便利。難点を挙げれば、防護シールドに付属する小型のファンはそれほど強力ではありません。とくに、煙が多く発生する紙や木などに加工する場合は、発生した煙がレーザー光を弱めてしまい、仕上がりがムラになることがあります。

 そんなときは、シールドを外し、加工面にサーキュレーターの風などを直接あてたほうが均一に仕上がります。もちろん、防護メガネが必要です。

保護シールドは保護メガネなしでレーザーを使用できるのでとても便利
付属の排気ファンはあまり強くない

 当然ですが、レーザー加工(彫刻)は、加工時に音がほとんどしません。加工スピードもとても速いことに、あらためて驚かされました。非接触で、徐々にロゴが出現しているシーンは、まるでマジックみたいな不思議な光景です。

バッグのタグ(合皮)にロゴを入れてみた
升に自分のロゴを彫ると、少しおめでたい感じになる(笑)

 次回は最終回「トランプから石まで、いろんなものにレーザー彫刻をしてみた」をお送りします。お楽しみに!

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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