CPUの反りを抑えるLGA1700フレームを使うと温度に差が出るか試してみた
ASCII.jp / 2022年9月24日 12時0分
必要度は高くないが、ちょっと試してみたいな~と思っていたのがCPUヒートスプレッダーの“反り”を改善するLGA1700フレームだ。反りを抑えることで、CPUとCPUクーラーの密着度を高め、冷却性能アップに期待が持てるわけだが、マザーボード標準装備のCPUソケットILMを交換(改造)するため、マザーボードはもちろん、その状態で使ったCPUなどの保証もなくなる。
それなりにデメリットがあるためこれまで導入に踏み切れなかったのだが、次世代CPUとインテル700番台チップセットの発売が近いという噂があるうえ、所有マザーボードのメーカー保証期間が終了したため、遊ぶには良いタイミングだと思いLGA1700フレームを試してみることにした。
LGA1700フレームには、入手性の良いThermalrightの「LGA1700-BCF」をチョイス。標準ILMを取り外す工具が付属し、固定には標準ILMのバックプレートを活用するので導入ハードルは低いだろう。とはいえ、交換中と交換後の破損リスクは0%ではない。自己責任であることは忘れずにいよう。
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LGA1700-BCFへの交換はシンプル&簡単
さっそくILMへの交換作業に進んでいこう。交換したマザーボードは、Z690チップセット採用のASUS「TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4」だ。
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交換手順はシンプル。まずは交換にともない、製品の箱を使うなどしてマザーボードを平らなところに置く。標準ILMを固定する4ヵ所のネジを外すと、標準装備のバックプレートは外れてしまうので、PCケースに取り付けたまま作業するのは避けたい。もし、そのまま作業する場合は、マスキングテープなどを使って、バックプレートを固定しておこう。
作業環境が整ったら、いよいよILMの交換だ。CPUは交換中に誤ってピンに触れないように、ソケットに取り付けたままで問題ない。まず、標準ILMのロック機構となるレバーを外し、ILMカバー側ネジを緩める。なお、力を入れずともスルッとネジは回るはずだ。ネジを取り外したら、CPUに触れないように、慎重に標準ILMのカバー部分を取り除く。あとは、同じようにレバー部分のネジを緩めて、取り外す。最後にLGA1700-BCFをそっと置いて、ネジで固定すれば交換工程は終了だ。
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手持ちのCPUクーラー6製品で効果を確認してみた
ここからは、手持ちの空冷CPUクーラー、オールインワン水冷ユニット、本格水冷システムを使って、標準ILMとLGA1700-BCFの冷却パフォーマンスを比べてみた。Core i9-12900K(パワーリミット無制限)を使ったテスト環境を用意している。
ストレステストの「CINEBENCH R23」(30分間実行)を実行。「HWiNFO64 Pro」で、テスト中のCPU温度(CPU Package)を記録している。テスト中の温度推移に、最高温度、前後半5回実行した際の平均温度を抽出し、まとめている。
CPUクーラーのラインアップは以下の通りで、本格水冷システムのCPUウォーターブロックとなるEKWB「EK-Quantum Velocity2 D-RGB - 1700 Nickel + Plexi」を含め、6製品を用意している。
空冷CPUクーラー編
空冷CPUクーラーは、空冷最強クラスとなるDeepCool製ツインタワーサイドフロー型の「AK620」と、Noctua最高峰120mmファンの「NF-A12x25 PWM」を2基搭載する「NH-U12A」だ。
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CINEBENCH R23を実行して、AK620とNH-U12Aの冷却パフォーマンスに差が出るかチェックしていこう。
AK620の結果をみると、LGA1700-BCFに交換することで、CPU温度は明確にダウンしており、最高温度で8度、テスト開始から5回の平均温度が約7度、後半5回の平均温度に至っては、標準ILMと約10度も差が出ている。LGA1700-BCFを使うことでの冷却効果アップは確実と言えるレベルだ。
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続いてNH-U12Aを試すとAK620とは異なる結果で、残念ながらCPU温度に顕著な差は見られなかった。テスト中のCPU動作クロック「Core 0 Clock」と、CPU消費電力「CPU Package Power」は、標準ILMとLGA1700-BCFに違いは見られず、ともに動作クロック4900MHz、CPU消費電力210W台で推移していた。
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もともと、LGA1700フレームはCPUクーラーの取り付け方法で効果に違いがあるとは聞いていたので、テスト早々に実証されたようだ。また、違いが現れなかったことは、NH-U12Aの取り付けマウンターが優秀な証でもあるだろう。
オールインワン水冷ユニット編
次は、ハイエンドCPUの性能を最大限に引き出すには、マストと言って良いだろう360mmラジエーター採用のオールインワン水冷ユニットを見ていこう。
用意したのは、一般的な製品よりも冷却性に期待できる38mm厚のラジエーターを採用するほか、ウォーターブロックに電源回路周りに風を生むVRMファンを内蔵するARCTIC「Liquid Freezer II 360」。インフィニティーミラーを内蔵するウォーターブロックとRGB LEDファンを備え、実売価格が1万9000円前後とコスパ優秀なDeepCool「LS720」。そしてオールインワン水冷ユニットの鉄板となるNZXT「KRAKEN X73」の3製品だ。
いずれの製品も、取り付け方法は同じで、バックプレートを使って、LGA1700用スタンドオフを取り付け、ウォーターブロックを固定する形だ。
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結果を確認すると、LGA1700-BCFの効果が最も現れたのは、Liquid Freezer II 360で最高と前半平均が7度、後半平均で5.5度ダウンを確認。次点はLS720で、最高2度、前半平均が約4.4度だが、後半平均は標準IMLとほぼ同じだ。ロングセラーとなるNZXT KRAKENシリーズのKRAKEN X73は、Noctua NH-U12Aと同じく、明確な差は出なかった。とは言え、Asetek社のOEM品だけあって、3製品のなかでは最もCPUを冷やせているのは、さすがのひと言だ。
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カスタム水冷を試す
最後は本格的なカスタム水冷システムで試していこう。60mm厚360mmラジエーターのAlphacool「NexXxoS UT60 Full Copper 360mm radiator」や、Noctua「NF-F12 PWM」、Laing DDC互換ポンプなどを使って、水冷システムを構築し、ウォーターブロックには本格水冷パーツの定番となるEK WaterBlocksの「EK-Quantum Velocity2 D-RGB - 1700 Nickel + Plexi」を用意した。
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EK-Quantum Velocity2 D-RGB - 1700は、取り付け方法が独特になるため、参考例にはあまりならないが、標準ILMからLGA1700-BCFに交換した効果は、最大で約9度としっかりと現れている。このくらい冷却性能が向上すると、リスクを負いつつ、交換した価値あったと思えてくる。
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自己責任を忘れずに試してみるのもあり
標準ILMから交換することで、室温や、グリスの塗り方、CPUクーラーの取り付け方といったことで見られる差異以上の温度差が出たThermalright製LGA1700フレームのLGA1700-BCF。組み合わせるCPUクーラーで効果に違いがあり、マザーボードやCPUの保証を受けられなくなるデメリットを考えると、万人向けではないが、その結果に一喜一憂するのも楽しかったりする。
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インテルの次世代CPUとなる「Raptor Lake」こと第13世代インテルCoreプロセッサーは、チップセットが700番台に更新される予定だが、CPUソケットはそのままLGA1700が採用される。
当然、現行チップセットの600番台を採用したマザーボードもBIOS(UEFI)の更新で対応可能で、DDR4メモリーもサポートする。いま使っている600番台マザーボードを流用して組む際に、LGA1700フレームを導入するのもありかもしれない。もちろん、交換=改造になるため、 交換後に発生した故障、破損、動作不安定といったことは、 すべて自分の責任になることは忘れないでもらいたい。
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