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中国でテレビはPCとスマホに次ぐ第3のスマートデバイスに ゲームに健康とトレンドを取り込み続ける

ASCII.jp / 2022年9月24日 10時0分

 最近の中国のテレビは、中国ならではの社会背景下で生き残りをかけ、さまざまな機能を吸収し進化している。そこで中国の最近のスマートテレビを機能面から見ていく。

テレビなのに240Hzリフレッシュレートをうたう“ゲーミングテレビ”が登場。これには中国でのゲーム事情も背景にある

コロナ禍で中国での消費の熱が冷める一方で スマートテレビはまだ年間4000万台以上の市場規模がある

 まずは、あらためてこれまでの中国テレビ事情について紹介したい。ライフスタイルの変化により、今でこそ中国でもテレビはあってもなくてもいい存在になりつつあるが、まだまだ貧しかった10数年前には、薄型かブラウン管か、大きいか小さいかでその家の経済状況を知ることができるステータスグッズでもあった。

 中国の家では、玄関のドアを開くといきなり広い居間があり、そこで友人や親族をもてなすのだが、海賊版VCD・DVDの映画をテレビで見ながら「ああ、うまくやっているな」と察する。携帯電話とともに、テレビは他人の経済指標を知ることができるガジェットであって、そのためにちょっと背伸びをしてでもいい製品を買おうとしたわけだ。

 そうしたニーズを背景に、2009年には農村におけるテレビ購入政策「家電下郷」と都市でのテレビ買い替え政策「以旧換新」が登場。「ハイセンス(海信)」や「KONKA(康佳)」、「スカイワース(創維)」などの中国メーカーがこのタイミングで一気に成長した。その後、中国人の所得が増えるなか、シャオミなどの参入で安いセットトップボックスやスマートテレビが登場し、買い替えが進んだ。

 ちなみに、ここ2年ほどの中国市場は、コロナ禍で消費が冷めており、スマートフォンやパソコンなどは「別にこのまま使っても問題無い」という「買い控え」の風潮が強まっている。

 それでも日本市場と中国市場を比較すると、2021年の薄型テレビの日本での出荷台数は538万7000台、中国は4325万台と巨大な市場だ。中国のAVC社の調査データによると、今年の1~7月までのテレビ販売台数は前年同期比4.3%減の1910万台とちょっとよろしくないが、75型モデルが売れてて成長しているという。75型テレビは3000元台からあり、日本円では10万以内で購入できる。

新作ゲームが認可されない中国では 既存のゲームを大型テレビに対応させて、新しい体験を提供

 そんな中国のテレビ文化だが、スマートテレビ普及以前から海賊版DVDがライフスタイルに入り込んでいたことから、動画配信アプリは一番ニーズのある機能であり、放送波でのテレビ番組の視聴以上に使われている

 さらにここ1年は、別の機能をアピールするようになってきた。

 その1つがゲーム機能だ。ゲーミングテレビと呼ばれるジャンルの製品があり、リフレッシュレートが120Hzかそれ以上のスペックをうたっている。特に積極的なのがハイセンスで、2020年以降、3世代のゲーミングテレビをリリースし、現在は55型、65型、75型、85型で120Hz、144Hz、240Hzのリフレッシュレートが利用できるようになっている。

 中国ゲーム最大手のテンセント(騰訊)は、「騰訊START雲遊戯」というスマートテレビ向けを含むSteamのようなゲームプラットフォームを、またネットイース(網易)も「網易雲遊戯」をリリースしている。これによりスマートフォン向けにリリースされている「原神」「アークナイツ」「陰陽師」といった人気ゲームが大画面で遊べる。

テンセントのゲームプラットフォーム「START雲遊戯」は中国の主要テレビメーカーと提携している

 中国では長らく政府審査による新作ゲームタイトルのライセンス発行がされておらず、消費者はすでにあるものしか遊ぶことしかできず、飽きる人が出てきた。中国ゲーム企業は海外市場向けにタイトルを出していこうという動きもあったのだが、一方で中国市場では大画面という形で新しい経験を提供し、継続して遊んでもらおうとしているわけだ。

 ソニーも中国で、PlayStation 5に最適化したというゲーミングテレビ「X90K」シリーズをリリースした。また、シャオミはマイクロソフトと提携し、同社の「小米電視」「Redmi」ブランドの120Hz対応ディスプレーをXbox推奨モデルとしてアピールしている。ただ、中国で影響力のあるのは中国産ゲームであり、「騰訊START雲遊戯」や「網易雲遊戯」といったゲーミングプラットフォームが牽引している状態ではある。

こちらはOPPOのスマートテレビ。スマートフォンメーカーの多くはテレビもリリースしている

カメラ+フィットネスアプリが人気に 遠くに住む家族ともテレビでビデオチャットが一般的

 もう一つ最近のテレビトレンドはフィットネス機能の塔載だ。リングフィットアドベンチャーが中国で多数転売されたことは記憶している読者もいるだろう。コロナの影響で、自宅でのフィットネスニーズが高まり、リングフィットアドベンチャーが人気になったほか、鏡とディスプレーが一体化したフィットネス用スマートミラーが続々とメーカーから登場し、アプリでは中国産フィットネスアプリ「KEEP」が人気になった。

スマートテレビではフィットネスは必須の機能に

 この流れにテレビも乗ろうと、ファーウェイが2019年に、シャオミ、ハイセンス、スカイワース、KONKAなどのテレビメーカーも上位機種にカメラとAIフィットネス機能を搭載した。KEEPもスマートテレビ向けアプリをリリース。ソニーやLGなどが中国向けスマートテレビで搭載するカスタムROM「当貝OS(杭州当貝網絡科技)」の中にもフィットネスサービス「当貝健身」が入っていて利用可能だ。

 ファーウェイは負けじと3人まで同時に動作を認識するAIを搭載したフィットネスサービスをリリースしてセールスポイントに。TCLの回転可能なスマートテレビ「XESS」シリーズでは画面を縦にして、そうしたアプリを利用できる。

 スマートミラーと同じかそれ以上のことがスマートテレビでできるとなれば、スマートミラーではなくより多機能で汎用的に使えるスマートテレビを選んで買う人は当然主流になり、一時期ブームになったスマートミラーが1年足らずで中古市場に大量に流れている。

 カメラ搭載テレビではビデオチャットも可能で、離れた親族と会話するのにも向いている。「居間で大画面で親族と話をするのか?」と思うかもしれないが、身内を大切にする中国人には自然な行動だ。

 ゲームにフィットネス、ビデオチャットに加え、目をいたわる機能で買い替えを促す。スマートフォンをリモコンにでき、シャオミやファーウェイは同社ブランドのIoT製品との連携もできる(「ファーウェイもスマートディスプレーを中心にした囲い込みを自国で進める」)。日本のようにパネルの進化で「より綺麗に」とアピールするだけでなく、「より多機能に」という面でも消費者に買い替えを促し、スマートテレビはパソコンとスマートフォンに続く第3の情報端末になっている。

シャオミのテレビはさまざまな機器のハブにもなる
 

山谷剛史(やまやたけし)

著者近影
著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)

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