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6000億円以上の制裁金を命じた、EUによるAndroid独禁法違反裁判 グーグルの主張は認められず

ASCII.jp / 2022年10月1日 9時0分

 43億4286万ユーロ(約6150億円)という過去最大規模の制裁金が話題となったEU対グーグルの独占禁止法裁判。Google Play、検索などを抱き合わせるAndroidのライセンスが、競争を阻害しているというものだ。グーグルはこれを不服として控訴していたが、欧州司法裁判所はノーを突き付けた。

スマホメーカーがGoogle Playのライセンスを取得するにあたって、検索エンジンやChromeが抱き合わせになっているとEUから独占禁止法の違反と判断されたグーグルは、EU圏では検索エンジンやブラウザーの選択画面をAndroidに用意している

AndroidにGoogle PlayとGoogle検索とChromeを 抱き合わせにしていると主張するEU

 この訴訟は、元は欧州委員会(EC)が2018年に下した判断だ。2015年から、グーグルによるAndroidのライセンス慣行について調査していたECは、Androidを採用するモバイル端末メーカーに対する条件が競争法(EUの独占禁止法)に違反しているとした。

 そこでは、ライセンス契約に含まれている以下のような条項が違反と指摘されていた。

・アプリストアであるGoogle Playのライセンス取得にあたり、ChromeとGoogle検索もプリインストールする

・分断化対策として、Google検索とGoogle Playをプリインストールするデバイスメーカーは、グーグルが認めていないバージョン(Androidのフォークなど)のOSが動くデバイスを販売しない

 当時のECは、グーグルと競合する検索アプリのダウンロードは1%未満で、Chrome以外のブラウザーを入手するユーザーは10%程度として、Googleが競争を阻害しており、消費者の選択に影響を及ぼしていると判断した。

 そして、この手の罰金では過去最高額とされる43億4286万ユーロの支払いが言い渡された。

EU圏ではグーグルは検索エンジンの選択画面を用意 国ごとにいろいろな検索エンジンが選べるようにはなった

 グーグルはその後、ライセンス形態を変更し、Androidユーザーに検索サービスとブラウザーを選択できる画面を用意した。そしてこの画面に表示される領域を有料のオークションにした。しかし、体力のないベンダーや非営利の団体には不公平という声が出たため、一部のベンダーは無料で参加できるように修正。そして、表示されるオプション数も増やした。

 グーグルはEU加盟国ごとにトップ5の検索サービスオプションをレポートしているが、多くの国でグーグルに加え、「Bing」「DuckDuckGo」「Yahoo!」、ドイツの環境団体を支援する検索エンジン「Ecosia」が入っている。これらのほか、東欧では”ロシア版Google”の「Yandex」、チェコの「Seznam」が入っていたり、フランスではプライバシー配慮検索エンジン「Qwant」など、地域色も出ている。

 このような対策を取りつつ、グーグルは最初の決定に対して控訴していた。

 9月14日、第一審裁判所は最初の決定を支持すると発表。グーグルは覆すこと自体はできなかったものの、制裁金は41億2500ユーロ(約5800億円)へと若干減額されている。

 グーグルは再度控訴ができる。声明文では遺憾を示しながらも、「Androidはすべての人に選択肢を提供している。欧州および世界中で多数の企業の事業の成功を支援している」と語るに留めている。

 モバイルOSはAndroidとiOSの2強体制だが、この2強のシェアは地域で異なる。日本と米国はほぼ互角だが、欧州ではAndroidが強い。欧州5ヵ国(英、仏、独、スペイン、イタリア)ではAndroidは62~82%のシェアとiOSを上回っている(Kantar Group調べ)。

モバイル業界に対して規制ラッシュ(?)のEU

 モバイルに関連したEUの動きとして、モバイルデバイスのサポート期間や修理可能期間を設定することを求める法案が進行中だ。

 この法案は、EUが「Circular Economy Action Plan 2020」のもとで進める電子廃棄物削減の取り組みの一部となる。EUは新品で製品を購入したユーザーが修理できるよう、最低でも15の部品をサービスセンターで提供することを求める。期間は5年。ソフトウェアでも5年間、継続的にアップデートを受けられるように要求する(3年のメジャーアップデート、5年のセキュリティアップデート)。

 法案は現在、ドラフト公開に合わせたフィードバック期間にあり、年内にECによる規制案提出の運びとなる予定だ。

 以前本連載(「iPhoneをついにUSB-C化させる!? EUで可決された「RED」とは」)で紹介したスマートフォンなどのモバイル端末の充電端子を「USB-C」に統一する規制については、2024年秋に施行に入ることになっている。

 これだけではない。グーグルやアップル、メタ(旧Facebook)などがいずれも影響を受けると思われる、デジタルプラットフォームで支配的な力を持つ企業を規制する「Digital Market Act」(デジタル市場法)も進行中だ。

 

筆者紹介──末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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