紙のトランプ、ステンレス、大理石……レーザー加工機でいろんな素材に刻印してみた
ASCII.jp / 2022年10月11日 16時0分
レーザーでいろんな素材に刻印してみた
このレーザー加工機の話も、今回で最終回です。まだ前編と中編をご覧になっていないなら、ぜひお読みください。筆者がジャンプして喜びます(前編:「個人でもできる!? 理想のレーザー加工機を探す旅」、中編:「悩みに悩んだレーザー加工機選び、筆者のベストは『LaserPecker2』」)。
そもそも、レーザー加工とは
レーザー加工とは、高エネルギー、高密度のレーザーを素材に照射し、その熱で表面を溶かしたり、蒸発させたりすることで、表面に刻印、あるいは切断などをする技術です。
加工する素材は、金属や木材だけでなく、ゴム、紙、布などにも文字やロゴなどをすばやく焼き付けられるのが特徴。ただし、レーザーを反射しやすい鏡面加工した金属は、筆者が使っているような汎用機では難しいのが現状です。
マジシャンといえば……まずはトランプの刻印と切断
筆者はマジシャン。なので、まずは紙のトランプの刻印と切断から試してみました。
レーザー加工の特徴として、カッターナイフなどでは加工が難しい、小さく細かいデザインの切り抜きも得意なことが挙げられます。
レーザーの光が強いので、プレビュー中、照射中は防護メガネを必ずかけるようにします。
最初の加工として、トランプにロゴを刻印してみました。レーザーの強さの設定は、素材でテストしながら決めます。筆者にとってのベストは、刻印なら「レーザー彫刻の効率(レーザーの強さ):100%」、「レーザー深度(走査する速度、数値が低いほど速い):3%」。この設定だと、トランプの薄い紙の表面だけを削ることができます。
切り抜きは「レーザー彫刻の効率:100%」、「レーザー深度:7%」がベスト。レーザー加工のデメリットとして、切断面にススがつき茶色くなることがありますが、今回の加工では気になるほどススの汚れはありませんでした。加工に必要な時間は、それぞれ1分以下なのが嬉しいところ。
ただし、可燃性のある素材に加工する場合は、設定によっては加工対象が燃えることがあります。消火用の水や、簡易消化器も必ず準備しています。
こうした、小さく繊細な加工が簡単にできるのが、レーザー加工の強みだといえるでしょう。ただし、素材ごとに設定を何度も調整するなど、試行錯誤する必要はあります。
石への加工も期待できそう
次は彫刻が難しい「石」に挑戦してみました。テストに使ったのは黒い大理石のコースター。大理石は、石灰岩が地中でマグマの熱と圧力で再結晶化した鉱物。建築や彫刻材料など、さまざまな用途に使われています。
石への加工がレーザーでできれば、筆者としては嬉しいところ。なぜなら、もう何十年も、気に入ったデザインの自宅用の番地プレートを探していて、なかなか見つからず、ほぼ諦めていたからです。
結果としては、なかなかの出来栄え。レーザー加工は「繰り返し照射」が可能なので、好みの深さになるまで繰り返すことができ、期待できるテスト結果です。
オススメは、美しく仕上がるステンレスなどの粉体塗装
筆者がもっともオススメな加工対象は、粉体塗装されたステンレスです。保温マグカップで実験しました。
上でも説明したように、ステンレス面は光を反射する素材なのでレーザー加工にはあまり向きません。レーザー加工するための塗料などもありますが、レビューなどを見ると、なかなか簡単ではない様子。
それでは……と筆者が選んだのは「象印 ステンレス タンブラー(蓋つき 保温 保冷 0.45L)」。これはテストなしの一発勝負でしたが、とても満足できる仕上がりに。設定は大理石と同様に「レーザー彫刻の効率:100%」、「レーザー深度:100%」に設定しました。
意外だったのは、加工面が曲面にもかかわらず、レーザーのフォーカスが変わらずに仕上がったこと。あまり強い曲面でなければ、専用のロールテーブルを使わなくても、美しく加工できたのが驚きでした。
ステンレスなので、塗装面を剥がしても錆びないことも、レーザー加工に向いた素材だと思っています。
レーザー加工は、やっぱりオススメ
前編、中編、後編と、3回にわたってお届けした、筆者にとっては超大作の記事はいかがだったでしょうか。
レーザー加工のメリットは、加工対象をほぼ選ばないこと、加工速度が速いこと、ほぼ無音なこと、量産せずに1点モノを気軽にできることなど。切り屑などもでず、メンテナンスもレーザー照射面を加工前に拭くくらいです。
デメリットは、素材ごとに何度かテストが必要なこと、加工中はガスや煙が発生するので効率よく換気できる場所が必要なことくらい。
トランプにどんな加工をするのかは、職業上の秘密なので詳しく記事には書けませんでしたが、DIYが趣味の方や工房をお持ちのフリーランスの方にはとてもオススメです。ただし、保護メガネの装着をすることはもちろん、小さな子供やペットがいる環境では、注意して扱ってくださいね。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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