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脳トレはレースのタイムアップに繋がるのかをKDDIが筑波サーキットで実証実験!

ASCII.jp / 2022年10月16日 12時0分

脳トレ参加者がトヨタ 86でジムカーナ

 KDDIは2021年度から「eモータースポーツ×ブレインテック」という脳の認知機能に着目した、新しいドライビングスキルのトレーニング方法の開発・研究に取り組んでいる。昨年は脳トレとシミュレーターで効果を測定していたが、2022年度は規模を拡大し、実車走行を加えた実証に取り組んでいる。

 先日、筑波サーキットのジムカーナ場でその大規模実験が行なわれたので、その様子をレポートしよう。なお、脳トレの様子は以前取材しているので、こちらをご覧いただきたい(eスポーツプレイヤーがリアルレースで活躍するためのプロジェクトをアイドルが体験!)。

脳トレの結果、最大で3秒速くなった選手も!

 2021年度は、レーシングドライバーの平良 響選手、eモータースポーツ出身のレーシングドライバー冨林勇佑選手、山中真生選手、eモータースポーツから山中智瑛選手といった若手を中心に、基準となる認知能力を分析。その分析結果に基づいてトレーニング対象の選手に対して認知能力のトレーニングを実施。その結果、ラップタイム向上などの効果が得られた。

実写でのタイムアタック
タイムアタック用の86の車内
運転の様子を捉えるカメラ
後部窓にもカメラを設置
各種センサーも搭載。車の挙動もしっかりチェックされる
auらしくオレンジ色の86が使われていた。今回のテスト用として大きな変更はされていないとのこと
タイヤはグッドイヤーが使われていた
参加者は脳波計測装置を取り付けてからヘルメットを着用する
運転中の視点の動きもチェックできるよう、専用の眼鏡を装着する
運転前に視点計測用の眼鏡のキャリブレーションを行なう参加者
別会場ではシミュレーターによるタイム計測も行なわれた
脳の状態を計測される参加者
脳トレをする参加者

 今回は、脳トレを実施した10名と非実施の10名が参加。実車(トヨタ 86)でのタイムアタックのほか、別の場所でドライビングシミュレーターでのタイム測定と脳スキルの測定などが行なわれていた。脳トレ前に測定したタイムとの比較で、脳トレを週1回、4週間実施した10名については、10名中9名のタイムが向上したという。中には3秒を超える向上を果たした方もいた。

今回、ジムカーナ場にパイロンで作られたテストコース

脳トレでレースのポジションが上がったひとりに話を聞いた 猫のことを考えるのが感情コントロールの秘訣

参加者の1人で、ロードスターレースに参戦する助川さん

 参加者の1人、助川ちひろさんに話をうかがった。助川さんはロードスターレースに参加されている方で、この日も愛車のNB型ロードスターに乗ってやってきた。実はシミュレーターのたぐいはこのプロジェクトに参加するまで未経験だったということに驚かされた。「脳トレ前までは大体13位とか14位とかのポジションだったのが、9月のレースでは、決勝はクルマが壊れて完走できなかったものの、予選で5位という過去最高位までポジションを上げることができました」というように、効果を実感している様子。

助川さんの愛車・ロードスター。カスタマイズして乗っており、非常に愛着があるとのこと

 ちなみに脳トレは、電流イライラ棒風のミニゲームと感情制御のトレーニングの2種類を実施したそうで、なかでも感情制御のトレーニングに効果を感じているようだ。「ネガティブなこととポジティブなことを考えるようにするのですが、私の場合は猫を思い出すと気持ちが落ち着くようなのです。ですからレース中は筑波の裏ストレートで猫のことを思い出すようにしています(笑)」。

頭に様々なセンサーをつけて脳トレを受ける様子

 その一方で「自分でも脳トレの仕組みを理解しきれていないところがあります。あと人と比べてどうなのかとか。もっと色々と知りたいですし、それをきっかけとしてもっと速くなりたいです! スマホのアプリとかで、日常的にトレーニングできるようになったらいいなと思います」と、今後への期待(要望)を語った。

ぜひeスポーツの世界にも挑戦してほしい

eスポーツからレースとドリフトへ 先輩ドライバー2人が奨励に訪れた

冨林勇佑選手(左)と山中真生選手

 会場には最初の実験の参加者で、スポーツから実車へのステップアップを果たし、国内最高峰のレース「SUPER GT」GT300クラスの5号車「マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号」のドライバーで、ASCII.jpでも応援中の冨林勇佑選手、FORMULA DRIFT JAPANに参戦するTEAM GOODRIDE MOTORSPORTSのドライバー山中真生選手もかけつけた。

 eスポーツ出身者と、そうでないドライバーの違いは何かを訪ねたところ、冨林選手は「僕たちは普段シミュレーターでトレーニングをしているわけですが、Gを感じられないかわりに、目だけですべてを判断するんです。だから目から入る情報量は普通のドライバーより多いと思います」。シミュレーターを単なるゲームの延長線と笑う時代は過去の話なのだ。

横Gや縦Gが体験できない部分を、視覚での情報量でカバー

 脳トレに関して冨林選手は「たとえば、F1ドライバーがレース直前に集中するために何かをやっているように、自分が集中できることをなんでもいいのでやることは大事かもしれないですね。自分に効果がありそうなものを脳トレを活かして見つけて、それをレース前に実践するっていうのはすごい有意義だと思います」と語った。

 山中選手も「自分も本番で実力を発揮できないところが今の課題なので、脳波をいろいろ調べていただき、どうしたら本番のとき、練習のときと同じ気持ちで本番を走れるかというのを明らかにしてもらいたいですね」とコメント。いずれも脳トレに高い期待感を抱かせるものだった。

感情のコントロールがタイム向上に繋がる

この実験を担当する伊藤 悟 KDDI 事業創造本部 XR推進部 サービス・プロダクト企画2グループリーダー
参加者から話を伺う伊藤氏

 この実験を担当する、KDDI 事業創造本部 XR推進部 サービス・プロダクト企画2グループリーダー 伊藤 悟氏も、脳波を活用したカジュアルなサービスの実現を目指している様子。今回の実証が将来的にどのようなサービスとして提供されるかは未定だが、伊藤氏は「自分の感情を上げたり下げたりできるようになって、自分がどの状態になったときに一番高いパフォーマンスを発揮できるのかが分かれば、自分でそこに持っていけるようになります。自分の脳波を可視化できれば、何を考えたら感情が上がるのか、自分で試行錯誤できますからね」。

 また、今回はラップタイム計測であるが、高齢者への認知トレーニングに、この脳トレが役立つのでは? とも考えられている様子。高齢者の交通事故が社会問題化している中で、今回の実証実験が事故防止に役立つ日が来るかもしれない。

スバルも脳トレの効果に着目 モータースポーツ全体に取り入れられる未来もありそう

スバルドライビングアカデミーの車両
スバルドライビングアカデミーの車両
スバルドライビングアカデミーの車内。こちらにもカメラが取り付けられていた

 脳トレには自動車メーカーSUBARUも興味を示しているようで、同日、スバルドライビングアカデミーメンバーも実車(スバル BRZ)とドライビングシミュレーターでのタイム測定、脳スキル測定を実施していたことをご報告したい。

参加者同士でコースのライン取りを確認

 KDDIと脳トレは、普通の人ならまったく結び付かないかもしれない。それについては前回の記事をご覧いただくとして、auのブランドスローガンである「おもしろいほうの未来へ」を、肌身をもって感じた次第。近い将来、運転スキル向上を目指したいからauの端末・サービスを選ぶ、という時代が来るかもしれない。

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