40年の時間を超えて高音質化、SACD化した『ルパン三世 カリオストロの城』を聴く
ASCII.jp / 2022年10月15日 9時0分
劇場アニメの名作として人気が高い『ルパン三世 カリオストロの城』。そのサウンドトラックが発売から約40年経ち、SACD/CDハイブリッド盤となった。
10月13日発売の『ルパン三世 カリオストロの城 オリジナルサウンドトラックBGM集~for Audiophile~』は、1983年に発売されたLP版のマスターテープを元に、オーディオファイル(オーディオ愛好者)向けに制作されたもの。ステレオサウンドの企画で、制作・企画には日本コロムビアが全面協力。Stereo Souond STOREなどで購入できる。
付属のブックレットによると、1979年に劇場公開されたルパン三世 カリオストロの城の劇伴曲は、テレビシリーズと共用したものが多かったという。主題歌「炎のたからもの」も、公開と同年の12月に発売したTVオリジナルサウンドトラック『ルパン三世・3』(YP-7073)の中に収録されていたそうだ。
劇場作品としてのサウンドトラック(CX-7090)は、上述の通り、ルパン三世 カリオストロの城の人気が高まった1982年にLP盤のアルバムとしてリリース。SACD/CDハイブリッド盤も同じマスターを使っている。ただし、まったく同じ内容ではなく、『ルパン三世 PART2』TVシリーズサウンドトラックから、ボーナストラックを4曲追加している。オーディオマニア向けの企画ということで、ブックレットには制作過程や使用機材について紹介されている。
Studerのオープンリールテープデッキで再生したマスターテープの音を調整卓でマスタリングして、DSDおよびハイレゾのPCMデータに変換している。CD層はA/D変換した24bit/96kHzのデータをさらに16bit/44.1kHzにしたものだ。
SACDプレーヤーでもCDプレーヤーでも聴ける
このサンプル盤が編集部に送られてきた。映像作品としても楽曲としても有名なので、その魅力については敢えて触れないが、自宅で聴いてみたので、音についての感想を少し書いてみよう。 SACD層の再生には対応するプレーヤーが必要だが、ハイブリッド盤ということで、CDプレーヤーでも再生が可能だ。また、意外と知られていないが、SACDはソニーの「BDP-S6700」のような、3万円以下のBlu-ray Discプレーヤーでも再生できるので、そこまでハードルが高いわけではない(ただし、DSDのデータはPCMなどに一度変換して再生される場合が多い)。コンテンツとしてはオーディオファイル向けなので、それなりの機器を揃えていたほうがいいのかもしれないが、参考まで。
サンプル盤を試聴、ボリュームを少し上げたくなる音
マスタリング(調整)はエンジニアの山下由美子氏が担当。SACD層、CD層のデータは調整卓までは同じ経路だが、その先は異なるので、音質の違いも楽しめそうだ。ただ、ここはこだわって聞けばという形で、大筋の傾向としては共通している。ルパン三世 カリオストロの城の曲を、マスターテープから現代の水準でトランスファーして聴いたらどんな雰囲気になるかを知りたい人にもいいのではないだろうか。
試聴時のシステムとしては、マランツの「SA-7S1」、Constellation Audioの「PREAMP 1.0」、Jeff Rowlandの「Model 102」、Magicoの「A3」がつながっていたので、これを利用した。 SACD層の音から。最近はレコードの再生も人気があるが、録音レベルが高く、ソリッドな最近のサントラに慣れた耳には、アナログ的な伸びやかさ、ふくよかさ、滑らかさなどが感じられて新鮮だ。音調は落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした気分で聴ける。ストリングスは伸びやかで、空間性を感じる表現になっている。様々な楽器で構成されているアンサンブルの個々の音がはっきりと聞こえつつ、全体としてのまとまり感がいい。一方で、ノイズ成分はまったく感じず、とてもクリアな表現にもなっている。有名なトラック18のルパン三世のテーマは、とても伸びやかで、調和感やまとまり感がいい。心地よい音なので少しボリュームを上げたくなる。 CD層の音も基本的には同じ傾向だが、比べるともう少し輪郭がはっきりして、直接音に寄った表現になる。金属系の音やビブラフォンなどの響きが硬くハッキリと聞こえる。トラック6の「炎のたからもの バリエーションIII」は、ビブラホンの序奏の後、管楽器が主旋律を奏でる。SACD層は中域がリッチで空間成分も豊富。広がりのある伴奏の中に主旋律が浮き上がるような立体感がある。CD層はもう少し生硬で中心にぎゅっと音がまとまる。中域が若干引っ込み、広がりという面では少し窮屈な感じもある。ただしこれは比べればの話で、単独で聴けば十分に高いクオリティだと思う。
時間を超えたから感じられることもある
最後に全体を通した聴いた感想。アナログ時代の音源であり、現代的な意味での解像感やワイドレンジ感を重視したものではないのかもしれないが、聴きやすく個々の音がとてもナチュラルだし、空間性や立体感も上々だ。こうした情報は、大切に保管されていたマスターテープにしっかりと記録されていたわけだ。一方で、発売当時にその音を引き出せた人は少ないだろう。40年という時間を経た現代のシステムで、楽曲が含んでいた豊かなニュアンスを再確認できるというのは、マニア的ではあるが、なかなか楽しい体験だと思う。
●作品情報 ルパン三世 カリオストロの城 オリジナルサウンドトラックBGM集~for Audiophile~ 価格:4950円 品番:SSMS-061
<収録曲> 01.非常線突破 バリエーション TOWARD THE PATROL LINEVARIATION 02.炎のたからもの バリエーションⅠ FIRE TREASUREVARIATION I 03.忍び足 SNEAKIN' 04.炎のたからもの バリエーションⅡ FIRE TREASURE VARIATION II 05.地下水道の謎 A RIDDLE OF UNDERGROUNDWATERWORKS 06.炎のたからもの バリエーションⅢ FIRE TREASUREVARIATION III 07.摩可不思議 STRANGESENSATION 08.炎のたからもの FIRE TREASURE 歌/ボビー 09.そよ風の誘惑 バリエーション YOU ARE LIKEBREEZE VARIATION 10.ウェディング(18世紀ドイツ音楽) WEDDING 11.ルンルン気分で IN THE LUN-LUN FEELING 12.トロピカル・ウェイヴ バリエーション TROPICAL WAVE VARIATION 13.伯爵の陰謀 THE PLOT OF THE EARL 14.ミステリー・ゾーン MYSTERY ZONE 15.哀愁の一匹狼 LONE WOLF 16.恐怖の一夜 UNCANNY NIGHT 17.ミステリアス・ジャーニー バリエーション MYSTERIOUS JOURNEY VARIATION
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