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X670チップセット搭載マザーボード、MSI「MPG X670E CARBON WIFI」レビュー

ASCII.jp / 2022年10月24日 11時0分

 すでに発売され、公開済みのベンチマークでも高いパフォーマンスを示したRyzen 7000シリーズ。これを使って高性能ゲーミングPCを自作したいという方も多いことだろう。今回紹介するマザーボードはゲーミングにおける耐久性をとくに重視し、機能も満載、デザインもシブ目のMSI「MPG X670E CARBON WIFI」だ。

MSI MPG X670E CARBON WIFI 実売価格は8万円前後

これはレザー!? ヒートシンクのマテリアルにも注目だ

 MPG X670E CARBON WIFIはAMD X670チップセットを搭載したATXマザーボードで、X670Eとあるとおりビデオカード用スロットはPCI Express 5.0 x16に対応している。つまりRyzen 7000シリーズの機能をフルに使える製品だ。

マザーボード裏から見るとチップセットヒートシンク裏にチップセットを実装するパターンが2つ確認できる

 MSIのマザーボードラインナップを整理しておくと、最上位にOCを含め豪華機能を加えた「MEG」グレード、そしてその下にひとつ上位のゲーミング性能を備えた「MPG」グレードがある。本製品はMPGグレード、ゲーミングの本命と言える。そして「CARBON」はとくにデザインにもこだわったモデルだ。まずはデザインを見ていただきたい。

整然としたデザインと色合いで落ち着いたデザイン

 基本的なデザインコンセプトは従来のCARBONモデルを踏襲しているが、今回注目したいのは表面の素材感だ。写真で見てしまうとほとんどブラック、一部にチェッカーやドットのパターンを加えているだけに見えるが、実はVRMヒートシンクのドラゴンエンブレム部分、1番目のM.2ヒートシンク、そしてチップセットヒートシンクのマーキング部分には、レザー調の素材を用いている。「調」と書いたのは確証がないためだが、その部分に触れてみるとたしかに通常のアルミヒートシンクとは異なる優しい感触がある。そしてレザーなのでその部分は少し光沢が落ち着いており、ブラックがベースのデザインながらアレンジが効いた見映えになっている。

よく見るとヒートシンク表面にさまざまなパターンが施されている
M.2ヒートシンクも同様に特殊な表面加工
チップセットヒートシンクの一部は質感を変えてある

 拡張スロットはx16形状のものが3本。最上段はPCI Express 5.0 x16に対応、2段目は最上段と合わせてx16/−またはx8/x8としてレーン分割にも対応する。そして3段目はPCI Express 4.0 x4だ。最新世代の分厚いハイエンドビデオカードを搭載する場合、3スロットまでのカードなら2段目のスロットも空くが、実質的にはビデオカード+3段目のPCI Express 4.0 x4スロットを利用することになるだろう。

 M,2スロットは4基。上2つはCPU接続でPCI Express 5.0 x4対応、表面だけでなくSSD裏面用のヒートシンクも備えている。下2つはチップセット接続でPCI Express 4.0 x4対応だ。以前から採用されていたツールレスでM.2 SSDを固定できるラッチ「EZ M.2 CLIP」は全スロットに拡大され、さらに最上段スロットはヒートシンクの着脱もツールレス化した「スクリューレスM.2」を採用している。SSDを何度も着脱する機会なんてないと思うかもしれないが、初回の組み立てがラクになるだけでも恩恵はあると言えるだろう。この手のツールで心配されがちなグラつきも、SSDを挟んでしまえばまったくない。

M.2の着脱がしやすいツールレス仕様

 M.2に関してはSerial ATAに対応しているという記載が見つからなかった。このクラスになると転送速度を求めるニーズのほうが高いということもあるのだろう。Serial ATAストレージを接続したい場合は、6基あるSerial ATA 3.0ポートを利用しよう。

Serial ATA 3.0ポートは6基ある

 デザインとRyzen 7000シリーズで利用可能な機能性についてはここまでのとおり。PCI Express 5.0世代の登場に期待している方はフルに利用でき、スロット数も十分である点に注目いただきたい。

高効率なVRM設計に、効果的に冷えるヒートシンク

 次はCPU電源回路を中心に見ていこう。まずはEPS12V。本製品ではEPS12V×2を採用している。このあたりはハイエンドモデルでは当然なので、次に進もう。

CPU電源はEPS12V×2

 VRMは18+2+1フェーズ構成だ。PWMコントローラはInfineon「XDPE192C3B」。MOSFETはメインCPUフェーズ用にInfineon「TDA21490」(90A)、MISC用1フェーズはMaxLinear「MxL7630P」(30A)を組み合わせていた。とくにCPU側、18フェーズで各90Aという構成はRyzen 9の定格運用なら負荷率10%弱という計算になる。実際のところブーストが効くとさらに大電力が要求されるとしても、MOSFETの発熱はかなり小さく抑えられるだろう。

18+2+1フェーズのVRMとヒートシンク
PWMコントローラのInfineon「XDPE192C3B」
メインに用いられているInfineon「TDA21490」MOSFET
MSIC用に用いられているMaxLinear「MxL7630P」

 VRMヒートシンクはI/Oシールドカバー付近までが一体となった「拡張ヒートシンク」。CPUソケットの左側、上側の2ピース構造で、今回ダイレクトタッチヒートパイプを用いて接続されている。表面はフラットに近いが側面は5本の溝が掘られ、放熱面積を拡大した構造だ。

VRMヒートシンクは2ピース構造
拡張ヒートシンクにダイレクトタッチヒートパイプを採用

 ではVRM回路およびヒートシンクの性能をベンチマークで負荷をかけ確認してみよう。今回用いた機材は、CPUがRyzen 9 7950X、CPUクーラーがMSI「MEG CORELIQUID S360」、メモリがKingston「Fury Beast RGB KF560C36BBEAK2-32」(DDR5-6000、16GB×2)、ビデオカードがMSI「Radeon RX 6950 XT GAMING X TRIO 16G」、SSDはPCI Express 4.0 x4対応1TB、電源がMSI「MPG A850GF」などを用いている。

検証に用いたパーツ一覧
メモリにはAMD EXPOに対応したKingston「Fury Beast RGB KF560C36BBEAK2-32」をお借りした。せっかくなのでEXPOを適用しDDR5-6000で利用している

 まずCINEBENCH R23のCPU(Multi Core)を10分間実行した際の各部温度がグラフ1&グラフ2だ。グラフ1はケースファンなし、グラフ2はケースファン1基をメモリスロット横に配置して計測したものだ。

グラフ1 ファンなしの温度推移
グラフ2 ファンを1基設置した温度推移

 さすがにRyzen 7000シリーズ最上位のRyzen 9 7950Xは発熱量が大きく、つまり消費電力も大きいのでMOSFETの温度も上昇するのが早かった。ファンなしのグラフ1で、MOSFET温度は最大61.5℃を記録している。ただしベンチマーク終了後から速やかに温度が下がっているところはVRMヒートシンクの放熱性能が高いことを意味している。また、どちらかと言えば気になるのがチップセット(PCH)温度やSSD温度だろう。ファンなしのグラフ1ではベンチマーク終了後も温度上昇が続いていた。ファンありのグラフ2では興味深いことにPCHもSSDもかなり温度を抑えられている。メモリスロット横にファンを置き、バックパネルに向けてのエアフローを作ったが、チップセットヒートシンクが大きいためSSDだけでなくPCHも効果的に冷却できているようだ。もちろんMOSFET温度もファンなしと比べて最大値で7℃抑えられていたので、やはり前面にファンを搭載し、エアフローを作って運用したい。

今回の構成におけるCINEBENCH R23のスコアは、Multi Coreが37195、Singleが1896

 グラフ3、グラフ4はCPU特化ではなく一般ユーザー的な使用時を想定し、3DMarkとPCMark(ともにファンあり)を実行中の温度になる。こちらはMOSFET温度がおよそ40℃台前半で推移している。ゲーミングや一般的なアプリケーション使用時ならVRM温度はほとんど気にしなくてよいほど発熱が小さいと言える。

グラフ3 ファンを1基設置した、3DMark Time Spy実行時の温度推移
グラフ4 ファンを1基設置した、PCMark実行時の温度推移
3DMark Time Spyのスコアは21183
3DMark Time Spy Extremeのスコアは11151
3DMark Speed Wayのスコアは3972
PCMark 10(Standard)のスコアは10544

高速インターフェースが充実。利便性を向上するSmart Buttonにも注目

 最後にインターフェースや機能を見ていこう。バックパネルには、DisplayPortやHDMIといった映像出力端子、USB 3.2 Gen2 Type-C(DisplayPort Alt-Mode対応:統合GPU)×1、USB 3.2 Gen2x2 Type-C×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×6、USB 2.0×2、オーディオ出力(S/PDIF搭載)などに加え、Wi-Fi 6E、そして3つのボタンが搭載されている。3つのボタンのうち2つはよく見るClear CMOSとFlash BIOS。新規に追加されたのがSmart Buttonで、これはBIOS設定による4つの機能の中からよく利用するものをユーザー自身で割り当て可能というボタンだ。4つの機能というのはリセット(デフォルト)、Mythtic Light(LED)のON/OFF、セーフブート、ターボファン(ファンを全開で回す)というもの。それぞれ魅力的な機能なのでどれを割り当てるか悩ましいが、PCの使い勝手を向上させてくれるだろう。

バックパネル。写真左側に3つのボタンを配置
新ボタンSmart Button(写真下側)に注目だ

 有線LANはRealtek「RTL8125BG」による2.5GbE。オーディオはRealtek「ALC4080」を採用しており、オーディオコンデンサには日本ケミコン製のものを採用している。フロントUSBはUSB 3.2 Gen2 Type-Cに対応。

2.5GbEチップのRealtek「RTL8125BG」
Realtek「ALC4080」オーディオチップ
日本ケミコン製オーディオコンデンサ
フロントUSB 3.2 Gen2 Type-Cヘッダー

 また、組み立て時に便利なのが、POSTコード表示LCDとデバッグ用LED(CPU/DRAM/VGA/BOOTの各段階でLEDが点灯する)の両方を備えている点だ。デバッグ用LEDを見れば、仮に問題が生じた際、どの段階で止まっているのかが分かり、POSTコードを調べれば問題の詳細が分かる。片方というのはよくあるが、両方備えていればより分かりやすい。

左下にデバッグ用LED、右上にPOSTコード表示LCD

新CPUのPCをカッコよくキメたい方へ

 MPG X670E CARBON WIFIは、デザイン、性能ともに求める方向けの製品だ。デザインは、落ち着きのあるブラックを基調としつつ、単調になりがちなところをテクスチャで工夫をしている。性能面ではRyzen 9 7950Xを組み合わせてもVRMの発熱はゆるやかで、もちろんケースファンなしで運用しようなどという方はいないと思われるが、エアフローを与えてやれば効果的に冷える。VRMヒートシンクだけでなく、そのほかM.2ヒートシンクやチップセットヒートシンクも高い冷却性能が見込める数値が得られている。

一見するとシンプルだが、ヒートシンクの凝ったパターンが映える

 機能面では2.5GbEやWi-Fi 6E、USB 3.2 Gen2x2など高速インターフェースをカバーし、Smart Buttonのように新機能も加えている。高性能CPUに合わせ、機能面でもひとつ上の快適さを求めるユーザーに最適と言えるだろう。上位にMEGシリーズがあるとはいえ、MPG X670E CARBON WIFIもハイエンドと言ってよいだろう。

PCI Express 5.0やDDR5ではSMT(表面実装)が導入されている

 ハイエンドだけにやはり値が張るところはある。このところの円安傾向、そしてチップセットを2基積むというAMD X670チップセット自体の高コスト体質、PCI Express 5.0やDDR5など、従来の設計では対応できず新技術、新規設計を盛り込んでいるのも価格を押し上げている要因だ。とくに今回は全部が一気に変わった状況なので、高価であるのは仕方がないだろう。要は、ここで紹介してきた性能や機能で納得できるか、自身がそれを必要と考えるかだ。

MSI MPG X670E CARBON WIFI詳細ページ 販売店を調べる MSIサイト

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