【レビュー】M2チップ搭載「iPad Pro」便利さ、ついにMacBookを越え? ビジネス活用術
ASCII.jp / 2022年10月24日 22時0分
アップルは独自設計のApple M2チップを載せたiPad Proを、10月26日に発売します。今回は12.9インチのモデルを試す機会を得ました。新しいiPad ProのフラグシップはMacBookに代わるモバイルワークステーションになれるのか? いま購入を検討している方に筆者のファーストインプレッションが参考になれば幸いです。
ビジネス・クリエイティブ・エンターテインメントに万能なiPad Pro
優れたパフォーマンスと多彩な機能を搭載するiPad Proは、ビジネス的な使い方からクリエイティブワークまで幅広いタスクを軽々とこなすタブレット界のモンスターマシンです。
特に12.9インチの大きい方のiPad Proは唯一、高画質なHDR動画をそのままのクオリティで再現できるLiquid Retina XDRディスプレイと4つのスピーカーにより構成されるパワフルなオーディオシステムを内蔵しています。エンターテインメント系コンテンツもまたベストな環境で楽しめます。
「何でもできるiPad Pro」だからこそ、使い道や楽しみ方が明快に定まっている方にとっては、Apple M2チップが載ってまた色んなことができるようになるiPad Proは「迷わず買いたいデバイス」かもしれません。
でも一方では安価なほうのWi-Fi専用モデルでさえ、11インチが12万4800円から、12.9インチは17万2800円からと値が張るため、iPadにあまりなじみのない方が勢いで手を出しづらいところもあります。
iPadによるマルチタスク作業を劇的に変える「ステージマネージャ」
筆者はまだオールスクリーンデザインになる前から12.9インチのiPad Proを使ってきました。筆者にとってiPad Proは「Apple Pencilによる手書き入力にも対応するMacBook」のようなデバイスです。Apple Pencilは人気アプリのGoodNotesで、原稿の草稿を手で書きながらアイデアを起こしたり、製品レポートに必要な写真を撮影する前段階でラフを描く用途に活用しています。そのままiPad Proで原稿を書き始めることも多いので、キーボードも必須アイテムです。
iPad ProをよりMacBookっぽく使いたい筆者は、今回iPadOS 16に搭載される新機能の「ステージマネージャ」に注目しました。iPad OSでは従来から、ひとつのアプリをアクティブにして全画面表示にするか、またはSlide OverにSplit Viewといった機能を使って、ひとつの画面を分割表示にしてマルチタスクをこなすことができます。
ステージマネージャは、同時に複数のアプリをiPadの画面に表示して素速く切り替えながらマルチタスクをこなすための新機能です。ステージマネージャはiPad Air(第5世代)、12.9インチiPad Pro(第3世代以降)、11インチiPad Pro(第1世代以降)で利用可能です。iPadOSの設定から「ホーム画面とマルチタスク」に入って機能をオンにするか、またはコントロールセンターにアイコンを配置して常時切り替えながら使います。
ステージマネージャではアクティブウィンドウのサイズを自由に変えたり、Split Viewのようにアクティブウィンドウにふたつのアプリを並べて配置することができます。アクティブウィンドウの下には常時Dockが表示され、アプリの切り替えもスムーズに行えます。iPadOSがかなり「Macっぽく使える」手応えがあります。
Apple M1チップを搭載する第5世代のiPad Airでもステージマネージャを試しました。ブラウザで情報を検索しながらテキストを作成したり、Pixelmator Photoアプリによる写真の加工・編集、音楽や動画コンテンツの再生など比較的ライトなマルチタスキングは危なげなく軽快にこなしてくれました。
新しい第10世代のiPadは搭載するチップがA14 Bionicです。ステージマネージャが使えないので、いまiPadの購入を検討している方は要注意です。
訂正とお詫び:初出時、一部表記に誤りがございましたので、訂正いたしました。(2022年10月26日)
Apple M2チップを搭載するiPad Proの新機能。Apple Pencilを1.2cmの距離まで近づけて描画位置をプレビューできます
Apple Pencilによる手書き入力を支援する「ポイントしてプレビュー」と
Apple M2チップを搭載するiPad Proには、Apple Pencilによる「ポイントしてプレビュー」という新機能が加わります。
iPad ProにペアリングしたApple Pencilのペン先を、ディスプレイから最大1.2cmまで離れた位置で浮かせると画面上に描画のプレビューが表示されます。Apple Pencilが常時発信し続けている微弱な電磁信号をiPad Proが読み取り、ペン先の正確な描画位置や傾きを把握しながらディスプレイにプレビューします。
「ポイントしてプレビュー」の機能はデベロッパによる対応が必要です。取り急ぎiPadOSにプリインストールされているアップル純正の「メモ」アプリが対応しているので、これを試してみました。文字を書く場面ではあまりプレビューの出番はなさそうですが、例えばイラストの色を決める前にプレビューしてイメージをつかむ用途に最適だと思いました。Apple Pencilの設定メニューから「PENCILのポイント」をオフにするとプレビューが不要な場合には表示が消せます。
アップルでは外部のiPadOSに対応するアプリやサービスを開発するデベロッパのため、Apple Pencilによる「ポイントしてプレビュー」機能のAPIを公開しています。筆者が取材したところによると、iPadOSに対応する写真の加工・編集用アプリのPixelmator Photoも、今後アップデートによりこの機能をサポートするようです。Apple Pencilをポイントしながら「カラー調整」のプレビューができるようになるそうなので、これは作業の効率アップにもつながりそうです。
12.9インチのiPad Proはディスプレイの「画質」にも注目
新しい12.9インチのiPad Proは、Liquid Retina XDRディスプレイによる圧倒的にリッチな映像が体験できるタブレットです。カスタム設計された1万個以上のミニLEDにより構成されるバックライトシステムは、2500以上のゾーンに細かく分割され明滅を緻密にコントーロルしながら映像の明暗を描き分けます。
明暗比の大きい映像の場合、バックライトの光がにじんで「ブルーミング効果」や「ハロー現象」などと呼ばれる光もれに起因する「輪郭ボケ」が発生することもあります。12.9インチiPad ProのLiquid Retina XDRディスプレイはパネルの特性にバックライト制御のアルゴリズムを丁寧に合わせ込むことによって、輪郭のにじみをよく押さえ込んでいます。iMovieアプリで、黒い背景に白い文字テロップを配置した動画を作って、iPad Proのディスプレイに表示してみました。参考までに第5世代のiPad Airを隣に並べて映像を見比べてみると、iPad Proの方が映像の暗部が一段と引き締まって見えます。
内蔵スピーカーによるサウンドもまた、第5世代のiPad Airと比べながら聴くと奥行方向への見通しがとてもクリアで、生々しい立体感に引き込まれます。Apple TV+で配信されている空間オーディオに対応するコンテンツを再生してみると、ものすごく鮮やかな没入感が楽しめました。
5Gやアプリとスムーズに連携できるiPadならではの魅力
MacBookシリーズと比較すると、iPad ProのWi-Fi+Cellularモデルは5G対応の常時ネットワーク接続機能を搭載していることがとても魅力的に感じられます。屋外にiPad Proを持ち出して使うことが多くある方は、思い切ってWi-Fi+Cellularモデルを手に入れた方がiPadの便利さをより強く実感できるでしょう。
iPadOSに対応するアプリを活用すれば、例えばインタビューの最中に音声メモと自動文字起こしのデータを同時に記録したり、発表会のプレゼンテーション画面をiPad Proのカメラでメモ代わりに残すような使い方が広がります。この辺りはモバイルPCよりもiPad Proの方が機動力を発揮できるポイントと言えるかもしれません。
iPad Proは最小ストレージサイズとなる128GBのモデルを選べば比較的安く買えますが、カメラやレコーダーなどデータを記録するアプリがフル稼働し始めると、あっという間にストレージの残量が不足してきます。モバイルPCに代わる、または補完してくれるモバイルワークステーションを探しているのであれば、iPad Proのストレージサイズは頑張って大盛りにすることをおすすめします。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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