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【先行レビュー】M2搭載iPad Pro、ノートパソコンを凌駕する圧倒的性能を体感!

ASCII.jp / 2022年10月24日 22時0分

ノートパソコンのようにも使え、絵を描くためのタブレットとしても最上級の性能を持つ

 iPad Proの11インチと12.9インチに、最新のMac用チップセット「M2」が搭載された。パソコン用としても超高性能なチップセットであるM2を搭載することで、iPad Proはどこまで進化したのか? Apple Pencilのホバー状態でのレスポンスなど、新機能も含めて、10月26日の発売に先んじて、先行レビューをお届けする。

iPad Pro 12.9インチは絵を描く人に必要不可欠

 薄く、軽く、圧倒的な性能を持つiPad Proシリーズ。現在は、円安の影響もあってかなり高価な端末だが、iPad Pro 11インチはビジネスエキスパートやエンジニア向け、iPad Pro 12.9インチは、絵画、イラストレーション、マンガの制作や写真の確認・補正、動画編集などのグラフィック用途において、欠かすことのできない存在である。

 もちろん、人によってさまざまなニーズがあるとは思うが、iPad Proの性能がもっとも生きる上記用途での利用を前提に、この2台の端末をご紹介したい。

iPad Proが現在の形状になったのは2018年から。カメラ部や、厚みはわずかに変化している

 2台が現在のホームボタンを持たない形状になったのは、2018年。ニューヨークにおいて、世界中から数多くのイラストレーターや、アーティストを招いて発表会が開催されたことからも、クリエイターにフォーカスして開発された端末であることがうかがえる。

 あまり、細かく説明されることはないが、iPad Proがクリエイターに好まれるのは「描き味」という感覚性能に優れているからだ。

 iPad Air以上の機種は、タッチパネルにフルラミネーションディスプレイという特殊加工が施されている。これは、カバーガラスからタッチパネルセンサーを挟んで、液晶ディスプレイの表示面までを圧着して一体化する技術。これにより、Apple Pencilの先端とディスプレイ表面に描かれている線が、より近く見えて、描画時の感覚のズレがほとんどないように思えるのだ。

 さらに、iPad Proのカバーガラスはほかのモデルよりも薄い。

カバーガラスが薄く、たわむのが、iPad Proならではの描き味を実現している

 ペン先と描画面がより近づく効果もあるし、Apple Pencilで強く描いた時にガラス面が凹んで抵抗が増し、紙に描いた時の感覚に近づくという効果もある。

細かいハッチングを素早く描いても、120Hzで画面描画するiPad Proならペン先に描画が追従してくれる

 さらにProMotionテクノロジーという、必要に応じてディスプレイのリフレッシュレートを120Hzまで可変させる機能もある。ハッチングのようにApple Pencilを使って細かい描画をした時に、描画がベン先に追従してくるという感覚は、この技術のおかげだ。

ディスプレイにペン先を12mmまで近づけると、ホバー状態でも描画をプレビューする

新機能「Apple Pencilによるポイント」が絵を描く人に非常に魅力

 ここまでは、前モデルのiPad Proでもカバーしていた機能だが、新たに「Apple Pencilによるポイント」という機能が追加された。

 これは、ディスプレイにペン先を近づけただけで、これからペン先が着地する位置に、ポイントが表示されるという機能だ。これにより、より迷いなく正確に描画する位置を見極めることができる。アプリの対応が必要だが、対応次第によっては、これから描画されるペン先や太さ、色が表示されるので、これまでのように描画される色を確認するためにアンドゥをする必要がない。

 実際に使ってみると非常に便利で、イラストやマンガ、絵画を描く人にとっては、この機能を一度試してしまうと新型iPad Proを手放せなくなる必携の機能だと思われる。

 Apple Pencilの先端は電磁信号を出しているのだが、新型iPad Proのディスプレイはペン先が12mmまで近づくと感知し、ホバー状態としてレスポンスすることができるようになっている。

 ホバー状態とは、プログラム的にはマウスオーバーのような感じでレスポンスするといえば、分かりやすいだろうか? ホバー状態での操作すると、マウスオーバーで選択しようとしているメニューが反転して表示されたりするのと同じような感じでふるまう。

 ちなみにこの機能、Apple Pencilにもディスプレイにも新しい仕掛けはなく、M2に組み込まれた新しいコプロセッサーが実現している。それゆえ、ソフトウエア的アップデートでほかのモデルに組み込まれる可能性はない。

11インチのディスプレイはLiquid Retinaだが、12.9インチのディスプレイはローカルディミング対応のミニLEDを使っており、コントラスト比が高く、描画が美しい

XDRの美しい映像は、12.9インチのみで楽しめる

 さらに、12.9インチのディスプレイは前モデルからマイクロディミング(局所的な消灯)が可能なミニLEDバックライトを搭載しており、Liquid Retina XDRディスプレイとして、ピーク輝度で1600二ト(HDRコンテンツのみ)、100万:1のコントラスト比を実現しており、白は抜けるように白く、黒は真の漆黒だ。

 だから、写真や動画のディテールが実に克明に見える。たとえば、トカゲの表皮や、動物の毛皮などのディテールを見ても、凸部が高く盛り上がり、凹部が大きく凹んでいるように見えるので、ザラザラした質感などが強く伝わってくる。

 これだけでもグラフィックプロフェッショナルは12.9インチを選ぶべきだと言える。映像は大きな画面で見た方がディテールの違いを判別しやすいし、そうでなくてもグラフィック系アプリやビデオ編集アプリは、メニュー項目が多く画面が小さいと操作しにくいので、絵画、イラスト、マンガ、映像編集などに関わる人には圧倒的に12.9インチがお勧めだ。

ステージマネージャは使えるが、外部ディスプレイのサポートは「年内」。今のところミラリーングされるのみ

ステージマネージャの外部ディスプレイサポートが楽しみ

 M2の性能は欲しいが、ディスプレイの性能はそこまで必要ではない……というビジネスユーザーは11インチモデルを選ぶべきだろう。

 スタンダードiPadのモデルチェンジによって、iPad Pro 11インチ、iPad Air、iPad(第10世代)の3モデルはほぼ同じぐらいのサイズ感になったが、ディスプレイのグレードや、スピーカーなど各部の性能には価格に応じた差が設けられているし、何といってもM2チップセットの処理能力は圧倒的だ。

 M2の性能はビジネス用途はもちろん、アプリケーションのビルド、3Dモデリング、動画視聴、ゲームなどでおおいに役に立つ。性能不足を感じることはまったくないはずだ。

 また、iPadOS 16で導入されるステージマネージャで複数のアプリケーションを動作させた時の負荷の増加にも平然と耐えてくれる。なにしろ、多数のアプリを同時動作させるのが前提となっているMacで使っているチップセットなのだから。

 さらに、iPadOS 16によって、ステージマネージャと外部ディスプレイがサポートされるようになるので、iPad Pro 11インチでも(もちろん、12.9インチでも)、外部ディスプレイを接続して2画面で利用することができるようになる。ただし、当初の予定とは異なり、外部ディスプレイのサポートは「年内」となっている。

 外部ディスプレイは6Kまでサポートするので、大画面でPhotoshopを使ったり、スプレッドシートを展開したり、8つまでのアプリを動作させたりと、これまでのiPadとはまったく違う次元の使い勝手が実現されることになる。

性能には問題は一切ない、問題は……

 外寸、搭載されるカメラのハードウェア、センサー類、ワイヤレスの通信システムなどに関しては、前モデルから変化はない。ケースなども同じものが使えるはずだ。

ただし、チップセットの処理能力の向上により、最大4K、30fpsのProResビデオ撮影が可能となっている(128GBモデルを除く)。また、写真撮影でもスマートHDR4がサポートされている。

 おそらく一番の問題は、昨今の円安を反映した最廉価モデルでも11インチで12万4800円、12.9インチで17万2800円からという価格だろう。こればかりは時代の反映なので仕方がない。

 iPad Proに関してはプロモデルゆえ、仕事に必要なら、価格に関係なく買うしかないというところだろう。

 

筆者紹介――村上タクタ  趣味の雑誌を30年間に600冊ほど作ってきた編集者・ライター。バイク雑誌「ライダースクラブ」で仕事を始め、ラジコン飛行機雑誌「RCエアワールド」、海水魚とサンゴ飼育の雑誌「コーラルフィッシュ」、デジタルガジェットの本「flick!」の編集長を約10年務めた後退職。現在フリーランスの編集者・ライターであり、ウェブメディアThunderVoltの編集長。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー、mmhmmヒーロー。iPhone、iPadなどのデジタルガジェットや、バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。

 

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