1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

KDDIが全区間をエリア化した黒部峡谷鉄道で電波がバリ4なのを確認!

ASCII.jp / 2022年10月29日 12時0分

トロッコ電車の路線を電波バリ4にするため KDDIが苦難を乗り越えアンテナを設置

 富山県の黒部川沿いを走る観光向けの「トロッコ電車」で知られる黒部峡谷鉄道。KDDIは、この黒部峡谷鉄道の全区間20.1km(宇奈月駅~欅平駅)を8月にエリア化したと発表しており、今回そのためのアンテナ設備などをプレス向けに公開した。

トロッコ列車で知られる黒部峡谷鉄道全区間をKDDIがエリア化

 黒部峡谷鉄道は、もともと黒部川流域での電源開発のために敷設された鉄道。作業員の移動や資材運搬に用いられており、軌間も762mmと一般的な狭軌よりも狭い規格となっている。この発電所の管理に使われている鉄道というのは現在でも変わらないが、一般旅客向けの「トロッコ列車」を運航し、風光明媚な峡谷を走る観光鉄道として人気の路線なのだ。

窓なしで開放感のある普通客車(オープン型)

 ちなみに黒部峡谷鉄道の歴史は1923年(大正12年)からスタートしており、旅客鉄道の営業も1953年(昭和28年)から始まっている。黒部峡谷鉄道 営業部 営業企画・広報グループ チーフマネジャー 谷本 悟氏によると「黒部峡谷の自然を楽しみたいという声があり、一般旅客も乗車するようになったが、初期の頃は『便乗』という形式で、乗車の際には安全は保証しないという条件が『便乘證』に書かれていた」とのこと。

黒部峡谷鉄道の歴史を解説する黒部峡谷鉄道 営業部 営業企画・広報グループ チーフマネジャー 谷本 悟氏
当時発行された「便乘證」

 現在はそのような条件はないものの、魅力的な観光路線であるのと同時に、日本でも有数の深く大きな峡谷という厳しい環境に敷設された鉄道というわけだ。谷本氏も「もし今ここに鉄道を敷設しようとなっても、投資が大きすぎて誰も手を挙げないと思う」と説明するほど。このあたりの説明は、始発駅の宇奈月駅に併設されている歴史紹介コーナーでも展示されているので、もし黒部峡谷鉄道を乗車する際はチェックしてみてほしい。

宇奈月駅
宇奈月駅を発車してすぐに見える旧山彦橋
宇奈月ダム

エリア化のネックだったトンネル内でも しっかり通信ができた

 今回この黒部峡谷鉄道全区間がエリア化されたわけだが、屋外については数年前からほぼ対応済みで、新たにエリアに加わったのはトンネル区間となる。黒部峡谷鉄道は、深い峡谷を走ることからトンネル区間も41と多いのだが、このトンネルがエリア化を阻む大きなハードルになっていた。

 というのも前述のように、762mmの特殊狭軌により、当然ながらトンネルも小さい。走行する列車ギリギリといってもいいくらいだ。現地で説明を行なったKDDIエンジニアリング 建設事業本部 モバイルプロセス本部 屋内センター 屋内設計G 嶋田直樹氏によると「一般的なトンネルよりも狭く湾曲しているため、電波が内部まで届かない。さらに列車のサイズもギリギリなので、列車がトンネル内に入ると電波を塞いでしまう」そうだ。

トンネル内走行中の様子。目の前が壁というくらい狭いトンネル
トンネル内に入ってく列車と比較すると、トンネルの狭さがよくわかる

 そのためトンネル内に基地局の設備はもちろん、ケーブルを延長してアンテナだけの設置も厳しいトンネルが多いとのこと。そこでトンネルの両端から指向性の高いアンテナを使って、トンネル内に電波を吹き込むイメージでエリア化を進めた。

黒薙駅に設置されたアンテナと基地局。装置は景観を考慮して茶色に塗装されているが、アンテナは塗装すると性能に影響がでるため免除されている
黒薙駅のアンテナは100mほど先にあるトンネルを狙っている

積雪対策はしているが 今年初めての越冬なので不安も

 基地局の設置場所と作業も今回の難工事ポイント。黒部峡谷一帯は中部山岳国立公園に指定されており、基地局の設置には関係各省の許可が必要で、さらに鉄橋なども多く、その部分に設置するのも難しいほか、冬期は積雪も多いので雪崩の影響を受けない場所を選ぶ必要もある。

 また道路も沿線にないため、機材の運搬や作業員の移動に苦労する。列車を使っての搬送も行なわれたが、嶋田氏は「全部のトンネルは踏破した」と言うくらい、人力での作業が多かったそうだ。

宇奈月ダムの近くにあるトンネルとアンテナ
このトンネルはこれでも広いほう
トンネル内までケーブルを延長してアンテナを設置

 こういった厳しい条件と作業をクリアし、黒部峡谷鉄道の全区間エリア化を達成。実際に宇奈月駅から黒薙駅の区間を乗車してみたところ、トンネルに入るまではKDDIも他社の通信キャリアもアンテナピクトはMAX表示だったが、入ってしばらくすると、他社はアンテナピクトが1~2になってしまい、圏外表示になることも。一方、KDDIはほぼMAX表示を維持したままだった。

実際に乗車してエリアチェックをした
長いトンネルの最深部では、他社通信キャリアは圏外も、KDDI(povo)はバリ4

 ちなみに黒部峡谷鉄道は、雪崩被害を防ぐため冬期(12月~翌年4月中旬)は運休となる。KDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 品質管理部 エリア企画G グループリーダー 金月昭太氏は「積雪対策は十分しており、設置してしまえば基本的にはメンテナンスは不要。ただ、設置してからの越冬は初めてなので『冬を越えていたら壊れていた』という可能性もある」と話しており、エリア化だけでなく、エリアを維持する管理・運営も今後の課題となっている。

左からオプテージ ソリューション事業推進本部 パートナー営業部 モバイルキャリア営業チームの柴草芳美氏、KDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 品質管理部 エリア企画G グループリーダー 金月昭太氏、黒部峡谷鉄道 営業部 営業企画・広報グループ チーフマネジャー 谷本 悟氏、KDDIエンジニアリング 建設事業本部 モバイルプロセス本部 工程管理センター 執行管理4G グループリーダー 船本一弥氏、KDDIエンジニアリング 建設事業本部 モバイルプロセス本部 屋内センター 屋内設計G 嶋田直樹氏

 冬期は運休ということで2022年の営業は11月30日までなので、黒部峡谷鉄道の景観と通信エリアを体験するなら営業期間と運航ダイヤをチェックして、公式サイトなどから予約がオススメだ。

 記事掲載の写真は特別に許可を得て撮影しているポイントもあるので、現地で撮影する際は注意していただきたい。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください