四面楚歌続くファーウェイ、今度はイギリスがネットワークから排除を指示
ASCII.jp / 2022年10月29日 12時0分
英政府がかねてより決定していたファーウェイ排除に向けて、本格的な動きを開始した。10月、英国の通信事業者に対し、新たに構築する5Gネットワークでのファーウェイ製機器の利用を禁じる指示を送った。既存のものについては2027年末までに取り替えを求める。
5Gネットワークからファーウェイ排除 期限を設定した英政府
10月12日、英デジタル・文化・メディア・スポーツ省は国内で展開する35の通信事業者に対し、「Designated Vendor Direction」という公示を送った(https://www.gov.uk/government/publications/targeted-consultations-on-proposed-designated-vendor-direction-and-designation-notice/proposals-to-issue-a-designation-notice-and-designated-vendor-direction-for-huawei-government-response-to-consultation)。ベンダーに関する指示書のようなもので、モバイル、固定(ファイバーなど)の両方の通信ネットワークにおけるファーウェイの機器について指示を並べている。
たとえば、「ファーウェイ機器を5Gネットワークでインストールしてはならない」「2023年7月31日以降は、ファーウェイの機器は特定の5Gアクセスネットワーク上の5G基地局サイトの各クラス最大35%以下、任意の5Gアクセスネットワークでファーウェイ機器を使用するネットワークトラフィックボリュームは全体の35%以下」などとなっている。最終的には、2027年12月31日以降はファーウェイ機器を5Gネットワークで使ってはならないとしている。つまり、5G設備でファーウェイ機器を使っている場合は、それまでにリプレースが求められるということになるようだ。
固定網についても、「2023年10月31日以降、FTTHおよびそのほかのギガビット以上のアクセスネットワークでファーウェイ製の機器の使用を制限する」とし、比率を35%以下にすることなどを指示している。
これらは2020年、英政府が下したファーウェイ機器排除の方針に基づくものだ。
5G展開は韓、日、米がリードしており、欧州は遅れている
ネットワークでファーウェイ機器が使用されなくなることで、5G展開が遅れるという懸念があった。
MWCの開催などで知られる業界団体のGSMAによると、欧州(英国も含まれる)における5G展開は、韓国、日本、米国などに比べて遅れていると指摘している。
欧州における5Gは現在、34市場108事業者が商用サービスを開始している状態だ。5Gを利用する顧客は全体の6%。最も比率が高いのはノルウェーで16%、英国は11%と報告している。
5G利用者は2025年には44%(欧州全体)と予想、その中でも英国(61%)、ドイツ(59%)がリードするという。しかし、これは韓国(2025年の予想は73%)、日本と米国(ともに68%)よりも低い。
もっとも欧州は4Gの普及でも決して早くはなかったので、ファーウェイと直接結びつける必要はないかもしれない。
ファーウェイのスマートフォンの5G対応はどうなる?
端末側でも、米国の制裁によりチップ供給がままならないファーウェイは壊滅的な状態にある。こちらの側面ではFinancial Times(FT)が、米国の制裁を回避する策をファーウェイが練っているという情報が出ている(https://www.ft.com/content/0fd818a8-0858-46d4-8e77-81394935ab55)。
ファーウェイの計画に近い2人の情報として、ファーウェイが中国製の機能の劣るチップを用いて5G対応にする方向性を模索していると報じている。この場合、速度などのユーザー体験に影響が出る可能性がある。それでも、全世界で5Gの展開が進みつつある中で5G非対応では難しいという焦りがファーウェイ内部にあるという。
もう1つの策が、5GモデムがついたeSIMモジュールのケースを別途装着することで5G対応にするというもの。すでに中国のSoyea Technologyは「HUAWEI P50 Pro」などに対応するものを提供している。それでも、Googleアプリが使えないという難点は残る。
2020年までは世界スマートフォン市場でトップ5にランクインしていたファーウェイだが、現在は姿を消している。
ファーウェイの冬は続く。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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