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Ryzen Threadripper PRO 5975WXの性能を引き出す100万円超えPC

ASCII.jp / 2022年10月30日 11時0分

 どんなCPUとビデオカードを選ぶべきかは、PCの用途によって大きく異なる。ゲームなら使用スレッド数が少ない時の性能が高いCPUと、ミドルクラス以上のビデオカード。クリエイティブ系のソフトであれば、フルスレッド稼働時の性能が優秀なCPUと、様々なハードウェア支援機能を有するビデオカードを選んだほうがいい。

 ここがちぐはぐだと、自分が求める性能にはならない。それだけに、どんなソフトをメインに使うのか、快適に運用するためにはどのぐらいの性能が必要なのかは、購入前に必ず把握しておきたいポイントだ。

 このあたりのバランスは各BTOパソコンメーカーが得意とするところで、概ね「ゲーミングPC」や「クリエイティブPC」といったジャンルで分かれている。そして、それぞれ標準構成でもある程度満足いく性能が出るようになっており、カスタムしてもメモリーやストレージを増やす程度で済むことが多い。

 しかし、特殊な用途で使うウルトラハイエンドPCであれば、話は別だ。特に大学や企業の研究・開発用途で使うようなものだと、一般的なPCではオーバースペックな容量のメモリーを搭載してもまだ足りないといったことも珍しくない。また、ビデオカードは表示さえできればよく、とにかくCPU性能が重要だとなれば、ゲーミングPCをベースにしたカスタマイズでは満足いくスペックにはできないだろう。

 そうした尖った構成の特殊なハイエンドPCが欲しいという人にオススメしたいモデルが、今回紹介するサイコムのワークステーション・専用サーバー向けPC「Lepton WS3900WRX80A」だ。

サイコムのワークステーション・専用サーバー向けPC「Lepton WS3900WRX80A」。標準構成の直販価格は94万8830円~(配送料込み)

CPUは8月に単体販売が解禁した Ryzen Threadripper PRO 5975WX

Ryzen Threadripper PRO 5000 WXシリーズは2022年3月に発表したが、当初はメーカー製ワークステーションに向けたOEM出荷のみのだった。しかし、2022年8月に単体販売が解禁され、自作PC市場でも話題になった

 Lepton WS3900WRX80AはCPU性能に全振りしたといっても過言ではないPCで、標準で32コア/64スレッドの「Ryzen Threadripper PRO 5975WX」を搭載する。同CPUは8月に単体販売が解禁した、Ryzen Threadripper PRO 5000 WXシリーズの上位モデルだ。また、メモリースロットは8本もあり、BTOでは最大256GB(32GB×8)まで選べるという点も強みだ。

 そのかわり……というわけではないが、ビデオカードはGeForce GT 730搭載モデルと必要最低限。もちろん、BTOに対応しているので、最新のコーデックに対応したハードウェア支援機能も使いたいというのであれば、別のビデオカードを選んでもいいだろう。

試用機のビデオカードはファンレス仕様のGeForce GT 730搭載モデルだった

 そして、ウルトラハイエンド構成だけに、お値段は驚異の94万8830円~。今回編集部にやってきた試用機は100万円を超える構成で、担当編集者は撮影時に手が震えたという……。なかなかこれだけ高価なPCをレビューする機会は珍しいので、購入を検討している人はもちろん、そうでない人にもじっくりとご覧いただきたい。

高速CPUの性能をフルに引き出すレイアウト

 Ryzen Threadripper用のマザーボードは大型のものが多い。Lepton WS3900WRX80Aの「WRX80 Creator」も例外ではない。E-ATXというATXをさらに大きくした規格を採用しており、8本のメモリースロットに加え、7本のPCI Expressスロットを装備。ワークステーションやサーバー用途で活躍できる製品だ。

 このマザーボードを内蔵するため、PCケースはFractal Designの大型モデル「Torrent Black Solid」を使用している。フロント部は全面メッシュ、背面は多くのパンチ穴があり、エアフローを重視したデザインが特徴だ。

 内部もエアフローをジャマする部品が可能な限り排除されており、非常にシンプル。写真だけを見ると、マザーボードのフィット具合から小型PCなのかと一瞬錯覚してしまうが、奥行き544mm、高さ530mmというかなり巨大なPCケースだ。

内部は驚くほどすっきりしている

 ケーブルはきれいに裏配線しているため、内部は驚くほどすっきりしている。最も目立つケーブルは簡易水冷クーラーのチューブだが、それも可能な限りマザーボードを隠さないように最短コースでレイアウトしている。

 こうなると、筆者は「余分なケーブルは裏面に無理やり押し込められているのかな」と意地悪な考えをしてしまう。しかし、裏面を見てみると、徹底した効率的なレイアウトで舌を巻くほど整頓されていた。

ケーブル類は要所要所で固定され、きれいに束ねられていた

 上記写真の中央、CPUの背面あたりにぶら下がっているケーブルがやや気になったが、これはビデオカード用の補助電源端子だった。将来、ビデオカードをより高性能なものに換装する場合でも、配線しやすいようここに配置されているようだ。この将来の拡張まで考えられた配線は、長年BTOパソコンを手掛けている同社らしい心配りと言えるだろう。

360mmラジエーターの簡易水冷クーラーで安定冷却

 32コア/64スレッドCPUの性能を引き出す最重要パーツはCPUクーラーだ。本機は360mmラジエーターの簡易水冷モデル「Celsius S36」を採用。こちらもFractal Designの製品で、サイコムの看板モデルとなるデュアル水冷PC「G-Master Hydro」のExtremeシリーズでも使われているもの。つまり、実績のあるハイエンドクーラーを使用しているわけだ。

Celsius S36はポンプ一体型の水冷ヘッドを採用。AUTOとPWMの2つの動作モードを搭載している
ラジエーターのファンは、PCケースの吸気を兼ねるようフロントに装備

 大型ラジエーターを備える簡易水冷クーラーは、動画エンコードやCGレンダリングなど、長時間高負荷が続くケースではかなり心強い存在だ。ワークステーションは計算に何日もかかるシミュレーションをすることもある。そんな時は安定性が命になるが、本機のクーラーならばっちりだろう。

 なお、PCケースの吸気はこのラジエーターのファンだけではなく、底面の140mmファン×3でも行っている。

底面の吸気ファンは140mmの3連。ゆっくりと冷たい外気を取り入れられる

 今回の構成はGeForce GT 730搭載ビデオカードなので、そこまで内部のエアフローを気にする必要はない。しかし、GeForce RTXシリーズの上位モデルを選ぶ人にとっては、この底面吸気ファン×3はありがたい存在になるはずだ。

電源ユニットは効率的な上部配置で標準1000W

 ところで、PCケース内を見て「おや?電源ユニットはどこに?」と思った人もいるだろう。確かに、フルタワーのPCケースは背が高いので、電源ユニットを下部に配置して重心を低くするものが多い。

 しかし、Torrent Black SolidはPCケースそのものが10.4kgと重く、幅242mmと広めなので安定性は問題なし。というわけで、電源ユニットは天面パネル直下の上部に搭載している。

 電源ユニットを上部に配置するメリットは、電源内部にホコリが入りにくいこと。また、PCケース内の熱を電源ユニットのファンで後方に排出できる点だろう。

1000Wの電源ユニット「Corsair RM1000x 2021」を上部に搭載

 電源ユニットの容量は標準構成で1000W。BTOではさらに大容量の1200Wへ変更できる。電力変換効率の高い80 PLUS PLATINUMのモデルもあるので、消費電力が気になる人は吟味してほしい。

 サーバー用途も想定したモデルということで、インターフェースも充実している。有線LANは2基の10GbEポートのほか、IPMI(PCの状況を管理・監視する機能)専用の1GbEポートも装備している。

 そのほか、Thunderbolt 4(Type-C)が2基、USB 3.2 Gen 2(Type-A)が4基、USB 3.2 Gen 1(Type-A)が2基あり、周辺機器の増設で足りなくなることはなさそうだ。なお、無線機能もあり、最新のIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)やBluetoothが使える点もうれしい。

背面インターフェースはUSB系も有線LAN系もかなり充実している。2基のUSB Type-CはどちらもThunderbolt 4だ

 前面上部のインターフェースは、USB 3.0(Type-A)が2基、USB 3.1 Gen 2(Type-C)が1基、ヘッドフォン出力、マイク入力と必要十分。背面インタフェースと併用すればまず困ることはないだろう。

前面上部のインターフェース

研究・開発やプロクリエイターの現場にとっては理想の1台

 一般的用途であれば、32コア/64スレッドのCPUが必要となるようなシーンはそう多くない。しかし、超高負荷な計算を行う特殊用途で使うPCなら、Ryzen Threadripper PRO 5975WXを搭載したLepton WS3900WRX80Aは、理想の1台であることは間違いない。

 研究・開発におけるシミュレーションに、4Kや8Kといった動画編集や超高解像度の画像合成などのプロクリエイターの現場では、CPUパワーはあればあるほどうれしいもの。また、最大搭載メモリー量が多いため、仮想PCを複数動かし、1台のPCで複数のサーバーを構築するといった用途でも活躍してくれるはずだ。

 今回は主に内部や外観を中心にチェックしたが、次回はいよいよそのモンスター性能に迫る。

Torrent Black Solidは4pin PWMファンをまとめられるハブも搭載。最大で9基のファンを取り付けられ、マザーボードのコネクターを無駄に消費することなく増設できる

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