次世代イヤホンの変革を期待できるMEMSスピーカー、担当者を取材
ASCII.jp / 2022年1月31日 13時0分
この連載では、たびたび最新技術のひとつとしてMEMSスピーカーを取り上げてきた。MEMSスピーカーはイヤホン向けのドライバーで、最新の半導体技術を応用した「シリコンドライバー」あるいは「半導体ドライバー」ともいうべきものだ。私も海外情報の見聞で聞くだけだったのだが、MEMSスピーカーの開発元の一つ、xMEMS社の日本担当者と直接会ってインタピューする機会を得た。そこで、いままでの情報を確かめるとともに、実際にMEMSスピーカーを搭載したデモ機を試聴することができた。
設立から5年未満、新進企業のxMEMS
xMEMSは、2018年にアメリカシリコンバレーサンタクララで設立した会社である。台湾に技術センターがある。今回は日本の営業担当者から話を聞いた。
MEMSスピーカーは、8インチのシリコンウエハーから切り出す一種のチップだ。原理的には圧電方式で、電圧をかけることでシリコンの一部が振動することで音を出す。この時に電圧をかける必要があるので、昇圧回路(アンプ)が必要になる。ただし、とても小型なので、完全ワイヤレスイヤフォンであっても昇圧回路を内蔵することに問題はない。
音響特性としては、高域でロールオフしないというのはもちろんだが、再生帯域はかなり広いということがわかった。過去にBA型ドライバーに取って代わるツィーターとしての用途が期待できると書いてきたが、実のところはダイナミック型ドライバーに代わるフルレンジドライバーとしても向いているように思う。
書き足しておきたいのは、インパルス応答(入力と出力の誤差)に優れていて、リンギング(振動の乱れ)が少ないということだ。このことからアーティファクト(信号処理など)による着色感がつきにくいという側面もあるだろう。
また、入力してからの遅延が少ないメリットもある。実際には少ないというよりもほぼゼロに近いということで、レイテンシーが重要とされる用途にも向いているだろう。もちろんシリコンチップなので製造誤差が極めて少なく、位相特性も良い。このことから空間オーディオにも向いていると考えられる。
xMEMSのMEMSスピーカーは、ダイから切り出して組み立てる手作業の必要がなくSMT(表面実装)が可能だということも実際のイヤフォン製作には有利に働くだろう。
数万円程度の完全ワイヤレスに搭載可能、解像感が高くクリアなサウンド
xMEMSのMEMSスピーカーのドライバーユニットにはいくつか種類がある。M1と呼ばれる第一世代の「Montra」およびM2と呼ばれる「Montra Plus」がフルレンジドライバー。最も小さな「Cowell」が2Way向きとなっている。
連載にも書いたが、ほかにも「ダイナミックベント」と呼ばれる、ベント穴をMEMSで開閉するユニットがMEMS技術の応用例として開発中だ。以前書いた時には、MEMSスピーカーと一体のように書いたが、別ユニットになるそうだ。そのため、これだけで既存のダイナミックドライバーと組み合わせることも可能となるだろう。また、実際の製品は今年の3月には出るらしいと書いたが、これは新型コロナなどの影響で遅れている。年末から来年初めまでには出てくるということだ。
取材では、開発中のユニットを用いたデモ機の試聴ができた。これはHeadFiの「CanJam」に出したものと同じとのことだ。
システムはイヤフォンの中にMEMSスピーカー(最新のM2モデル)を搭載し、基板は昇圧回路だ。PC側はUSB端子に小型のDACが挿入されていて、基板にアナログ入力している(黒いのは電池)。PC内部でイコライザーを設定しているということだが、これも完全ワイヤレスならSoCで完結できるだろう。
音は予想していたよりもかなりレベルが高く驚かされた。解像力が高くクリアなサウンドだ。さらに滑らかで、シリコンチップという点で予想していたようなドライで無機的な感じがしない。
このまま製品化しても十分に通用しそうだ。もし製品化するとしても数万円程度の完全ワイヤレスで実現できそうだともいう。それならばかなりコスパが高いと言っても良いようなサウンドだった。
日本でも来年のポタ研をはじめとして一般の人が聴いてみる機会も増えていくと思う。もしかすると来年が日本にとっては「シリコンドライバー」元年となるのかもしれない。
この記事に関連するニュース
-
“スタジオ音質”が売り!ドイツ老舗オーディオブランドの新作完全ワイヤレスイヤホン
&GP / 2024年11月19日 18時0分
-
Grandiosoシリーズ初のフォノアンプ「Grandioso E1」を新発売
PR TIMES / 2024年11月7日 17時45分
-
実質的に110周年モデルのリミテッド仕様、デノン「DCD-3000NE」発表、SACD新ハイエンド
ASCII.jp / 2024年11月5日 16時0分
-
目の前で生演奏を聴くようにリアルな音を奏でる、finalの新作有線イヤホン「A6000」
IGNITE / 2024年10月27日 20時0分
-
[サウンドユニット・選択のキモ]スピーカー編…スペック表から分かること、分からないこと
レスポンス / 2024年10月27日 14時0分
ランキング
-
1自分のスマホが犯罪インフラに? 知らぬ間にSMS大量送信、日本サイバー犯罪センターが警鐘
おたくま経済新聞 / 2024年11月22日 15時0分
-
2こんにゃく「こうやってひねります?」 普通だと思っていた“ひねり方”についての疑問が999万表示 「やるやる!」「我が家もこれです!」
ねとらぼ / 2024年11月22日 12時20分
-
3明石家さんま、VTuberになっていた―デビュー配信からホロライブ、にじさんじとコラボした謎の新人「八都宿ねね」の正体に宝鐘マリンらも驚愕
インサイド / 2024年11月22日 10時20分
-
4大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
ねとらぼ / 2024年11月22日 13時19分
-
5イオシス、“あのスマホ”大量入荷 「待ってたぜェ、この瞬間をよォ!!」
ASCII.jp / 2024年11月22日 15時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください