スマホ登場よりはるか昔、ソニーのカーナビは高価で高性能な憧れのアイテムだった!
ASCII.jp / 2022年11月7日 12時0分
自動車の進化はナビの進化でもある
最近の車の進化はめざましいものがあって、車は人が運転するものだったのにアシストどころか自動運転の未来がみえてくる今日この頃。
たしかに新しい車に試乗すると、もうハイテクの塊というか、目の前にあるのはアナログなスピードメーターとタコメータがあって……なんてのは過去の話と言わんばかりに、エンターテイメント or インフォメーションシステムが凝縮されていて、度肝を抜かれるというか心が踊るというか、もはや近未来に追いついたんじゃ!? と、おじさんは大興奮です。
その一方で、昔は自動車メーカーではない、いろいろなメーカーのナビゲーションがあって、どれを組み込もうかな? というのも楽しみだったような気がします。最近はすっかり純正ナビが当たり前で、純正ナビに合わせてデザインされているので、そもそも外部ナビをインストールできない車種もあります。また、スマホの大躍進によってAndroid AUTOやApple CarPlayでお手軽にすませちゃうことも多いでしょう。
なんだか、すっかり時代の流れに取り残された感がありますが、そういえばソニーってカーナビゲーションめちゃくちゃ売ってた時期がある事を思い出しました。ということで、今回のテーマは「カーナビ」です。
ソニー製カーナビは 手の届かない憧れのアイテムだった
ソニーが最初に発売したカーナビは1992年のこと。車載用情報システム(モービルデジタルマップナビシステム)として本体部分となる「NVX-1」が28万5000円で、6型液晶モニターが「XVM-61」が18万円。取付工賃を含めるとトータルで50万円前後かかったのではないかと思われます。
地図データの媒体はCD-ROMで、位置情報を取得するGPSはかなりの巨大さ。しかも、地図データに自車位置を表示するだけで、テレビを見るにはさらに10万円近くするTVチューナーを取り付ける必要があり、まさに高級路線カーナビでした。この当時、筆者の周りでは車内でテレビが見られたり、カーナビをつけている車なんて存在していないに等しかったので、その特別感たるや圧倒的でした。
そんな手の届かない憧れのアイテムを一般に普及させたのが、1993年に登場したワンパッケージナビゲーション「NVX-F10」です。価格は21万円。4型液晶カラーモニターと、本体となるカーナビシステムと、日本全国の地図を収めたCD-ROMが揃っていました。買って取り付けたらすぐに使えるという手軽さと、当時のカーナビでは考えられない価格設定もあいまって、爆発的に世の中で売れまくりました。
とはいえ、できることは今では考えられないくらい微々たるもの。
日本全国の地図情報が1枚のディスクに収まった「ゼンリンナビソフト全国版」を読み込んで地図を4型の画面に表示します。何しろ容量が限られたCD-ROM1枚に全国の地図データが収められているわけですから、その情報量は限られていて、国道や県道などの主要道路が描かれているだけで、拡大しても大ざっぱな情報しか出てきません。
GPSアンテナで取得した位置情報にあわせて自車位置を表示するのですが、そもそも走行ルートを案内する機能なんてものもなく、まず出かける前に自分で曲がり角や行き先を設定しておいて、そのポイントに近づくとそのポイントが表示されるだけです。当然、音声ガイドなんてあるはずもなく。
もはや何を言っているのか理解できないと思いますが、ただシンプルに、車を走らせると進行方向にむかって地図がスクロールしていくことが画期的だったのです。
さらに言えば、車速センサーをとりこむ事もなく、方向を変えたときに検知するジャイロセンサーもなく、ダッシュボードにくっつけたGPSアンテナだけが頼り。トンネルに入ったりビルの合間や木々が生い茂るところなど、あらゆるところで自車位置が動かなくなります。当時のカーナビは今と比べると精度も低く、あさっての方向に自車位置が表示されることも日常茶飯事。ツッコミどころ満載なアバウトさで実用にはまだ程遠いところもたくさんありました。
それでも! 地図の本を開いて「今ここはいったいどこなの?」という自分の位置がわからない迷子状態で、路駐したまま身動きできない心細さに比べたら、ディスプレイにうつる地図に自車位置がここだよと示してくれる、それだけでどれだけ心強かったことか。後年、CD-ROMの限界を考慮して、ゼンリンからより詳しい道路情報が収録されている地方バージョンが発売されたのでした。
このNVX-F10の大躍進に気を良くしたのか、毎年のようにソニーはカーナビの新モデルをリリースします。画面が5型と大きくなった「NVX-F15」、ワンパッケージタイプで低価格タイプの「NVX-F1」、自律航法を備えた「NVX-4」、チェンジャー式の「NVX-B50」、簡単に取り付けできることを訴求した「NVX-F11」などなど、まぁいろいろ出てきました。
ですが、だいたい2匹目のドジョウ狙いで、正直パッとしていなかったというか、ほとんど印象に残っていません。
その後、「カーナビの進化はソニーから始まる」と称したマルチ情報ナビ「NVX-S1」と「NVX-F30」が登場しました。バージョンアップディスクを利用することで新機能がそなわっていく、フラッシュメモリーを本体に採用。拡張ユニットを追加することで全国規模の道路交通情報サービスとして期待されていた「VICS」に対応したり、音声認識ユニットを利用して声で操作できたり(夢のナビとの対話です!)、期待感にあふれていました。
しかし、悪夢のように覚えているのですが、発売以降にアップデートされた内容がお粗末すぎてガッカリしたり、音声認識の精度の低さに愕然としたり、自動ルート探索機能についても、今のカーナビのように賢くなかったので実際にそのとおりに走って、獣道に迷い込んだこともありました。当時、車に乗り始めたばかりの筆者にとっては非常に苦い経験でした。
そんな中でもユニークともいえるカーナビが、コロンブス「GPX-5」でした。本体とモニター、GPSが一体化して車の外に持ち運べるというポータブルナビゲーションの始祖と言えます。
ぶっちゃけ、巨大すぎて車に取り付けるにはかなりの無理があったのですが、車の外に持ち出せるということもあって、車に乗る前に走行ルートの計画を立てたり、はたまた歩きながらでも自分の位置を確認できるなど、スマホでGoogleマップを見ながら歩くことと同じ体験を、1995年の時点で実現していたのです(巨大で重くてバッテリーも全然持ちませんが)。
地図とにらめっこしていた事に比べれば、自車位置がわかるだけで画期的! から始まったカーナビですが、1990年代は技術の進化もインフラの整備もまだまだ時間を必要とする過渡期であり、ソニーの苦労も垣間見えた時期でもありました。
その後、ただの道案内だけではなくて実際の風景を再現した地図情報や、ドライブするときに役立つ情報を収められるように大容量データを収録したDVDカーナビも登場。パソコンでつくったドライブプランやデジタルスチルカメラの静止画、お気に入りの音楽をメモリースティックに取り込んで車内で楽しむといった、ソニーの得意とするエンターテインメント方向に舵を切るようになったのは2000年に入った頃でした。
筆者紹介───君国泰将
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