CINEBENCHで5万pts超!Threadripper搭載100万円超PCの神性能
ASCII.jp / 2022年11月5日 11時0分
ワークステーションやサーバーなど、CPUの性能とメモリーの容量が重要になる用途で活躍してくれるサイコムのBTOパソコン「Lepton WS3900WRX80A」。前回は高性能CPUを冷却するクーラーやPCの内部を中心にチェックしたが、今回はその性能について見ていこう。
スペックを見てもらえるとわかるが、CPUは32コア/64スレッドの「Ryzen Threadripper PRO 5975WX」とかなりハイスペックなものを採用している。一方で、ビデオカードはGeForce GT 730搭載モデルで、画面が表示できればいいというもの。そのため、ゲーミング性能はまったく期待できない。
また、Tensorコアを搭載していないため、GPU向けのAI処理で使いたい人はビデオカードのカスタマイズが必須になるだろう。BTOメニューは豊富で、非搭載(なし)からGeForce RTX 30シリーズのハイエンドまで、30種類以上の選択肢から選べる点がうれしい。
最新のCore i9-13900KやRyzen 9 7950Xを圧倒! マルチスレッド性能で格の違いを実感
では、Lepton WS3900WRX80Aの性能を見ていこう。まずは定番の「CINEBENCH R23」から。このベンチマークソフトは、CGレンダリング速度からCPUの性能を測ってくれるもの。結果は独自の「pts」という単位のスコアーで表示され、これが高ければ高いほど性能が高いCPUとなる。
なお、テストは全コアをもれなく使用する「Multi Core」と、1スレッドだけ使う「Single Core」の2種類。前者はそのCPUの最大性能、後者は1コアあたりの性能を確認する際に都合が良い。設定は標準のままで、10分間以上の繰り返し実行とした。
Multi Coreテストの結果は驚異の50904pts。筆者が持っているデータだと、Core i9-12900Kの25462ptsという結果が最大だったが、その2倍近い速さに驚いた。さすがワークステーションやサーバー向けというだけあって、圧倒的な性能だ。
最新CPUと比べるとどうなるのかが気になったので、KTUこと加藤勝明氏による最新CPUレビュー記事「CINEBENCH番長は秒で奪還!Core i9-13900K/Core i7-13700K/Core i5-13600K速攻レビュー【前編】」のデータと見比べてみた。この記事によると、Core i9-13900Kが38632pts、Ryzen 9 7950Xが37317pts。これらと比べてもまだ1.3倍以上高い。
もちろん、この両者はいずれも論理コアは32基と、Ryzen Threadripper PRO 5975WXの半分なので、そもそも比較対象としてはふさわしくない。とはいえ、メインストリーム向けの最高峰CPUでも、これだけの圧倒的大差になるのだとおわかりいただけるかと思う。
なお、Single Coreテストの結果は1502ptsだった。Core i9-13900KもRyzen 9 7950Xも2000ptsを超えているため、シングルスレッド性能はそれほど優秀ではない。Ryzen Threadripper PRO 5975WXはフルスレッド動作で、力を発揮する用途に絞って活用すべきだろう。
Blenderでもレンダリングしてみた
実際のソフトを使ったCGレンダリングテストの結果もご覧いただこう。ASCII.jp記事「アドビ製ソフトなどのプロジェクトファイルと検証方法を無償公開!クリエイター向けPC、Lepton Motion Pro Z690の本気度がスゴイ」でも使用した、Blenderのレンダリング時間だ。
詳しい使い方は上記の記事やサイコムが公開しているPDFを参照していただきたい。ざっくり言えば、ダウンロードしたファイルを開き、レンダーデバイスを選んでから、レンダリングを開始するだけと、ソフトさえ持っていれば誰でも試せるようになっている。
なお、今回の構成ではGPUがGeForce GT 730なので、OptiXなどは使えない。そのため、「CPUのみ」(Cyclesレンダーデバイス:なし)、「CUDA」(GPU+CPU)の2パターンで試してみた。ちなみに、CUDAはGPUのみのパターンでも試してみたのだが、予想レンダリング終了時間が10時間以上になったため、途中で中止した。
「CPUのみ」設定のレンダリング時間は約1分32秒。「CUDA」(GPU+CPU)設定のレンダリング時間は約2分37秒という結果になった。遅いGPUを搭載している場合、下手にGPUを使わないほうが圧倒的に速いということだろう。
Core i7-12700K+GeForce RTX 3060という組み合わせでCUDAを使った場合、レンダリング時間は約1分44秒だったので、Ryzen Threadripper PRO 5975WXでは、この組み合わせよりも速いということに驚いた。
といっても、GeForce RTX 3060だとOptiXが使えるし、これを使うと約36秒と爆速になるため、単純比較はできないのだが……。いずれにせよ、Ryzen Threadripper PRO 5975WXのCPUパワーが高いということはわかってもらえるだろう。
CINEBENCH R23実行中のCPU温度をチェック
Lepton WS3900WRX80AはFractal Designの「Celsius S36 FD-WCU-CELSIUS-S36-BK」という簡易水冷クーラーを採用している。360mmラジエーターを搭載し、メインストリーム向けのCPUなら十分冷やせるだけの能力がある。しかし、相手は64スレッドのメニーコアCPUなので、どの程度冷やせるかはかなり気になるところだ。
そこで、CINEBENCH R23のMulti Coreテスト中(約10分間)の温度と動作クロックがどう変化しているのか、モニタリングツール「HWiNFO64 Pro」を使って調べてみた。
CPU(Tcl/Tdie)の最大温度は75.3度。CPUの仕様では最大温度が95度なので、まだまだ余裕があるように思える。見事64スレッドCPUを安定稼働できていると言える。一応、温度と動作クロックの変化もグラフにまとめてみた。
70度を超えたあたりからの上昇はかなり緩やかなので、さらに数時間続けても最大温度(95度)まで届くことは考えづらい。また、動作クロックも4.1GHz前後で安定していた。360㎜ラジエーターの簡易水冷クーラーもさることながら、PCケース内の効率的なエアフローも寄与しているのだろう。
Ryzen Threadripper PROを安定運用できる Lepton WS3900WRX80Aはプロユースの強い味方
ゲーム用途であれば、CPU性能よりもビデオカードの性能を重視したほうが良い。しかし、シミュレーションやソフト開発、サーバー用途なら、CPU性能は高ければ高いほどいい。それだけに、32コア/64スレッドのRyzen Threadripper PRO 5975WXを安定運用できるLepton WS3900WRX80Aは、企業や大学の研究室にとってはかなり魅力的なモデルに映るだろう。
また、CGレンダリングや動画編集など、CPUのコア数がモノを言うクリティブ作業においても頼もしい存在になるはずだ。一般用途ではオーバースペックでも、プロユースではそのパワーをいかんなく発揮できる。ワークステーションやサーバー用途で使える高性能PCを探しているのであれば、真っ先にチェックしてほしい1台だ。
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