マイクロソフトのオープンソースソフトウェアを整理する
ASCII.jp / 2022年11月6日 10時0分
21世紀に入ってから、マイクロソフトはオープンソースソフトウェア(以下、OSS)に関わりを始めている。以前は距離を置いていたが、最近ではWindowsに標準搭載されるアプリケーションにもオープンソースで開発されたものが含まれるようになった。たとえば、Windows 11なら、「電卓」や「ターミナル」がオープンソースのプロジェクトで開発されたものだ。
マイクロソフトのOSSは現在ではかなりの数になる。すべてではないが、主要なものはマイクロソフトのサイト(https://opensource.microsoft.com/)に記事があるほか、多くのOSSがGitHub(https://github.com/)にある。GitHubは2018年にマイクロソフトに買収された。
GitHubの各プロジェクトのページにRelasesページがある場合、実行可能なパッケージファイルを直接ダウンロードできる。確認などで古いバージョンが必要な場合、ここから入手できる場合がある。一部のものに関しては、GitHubでドキュメントが作られたあと、正式ドキュメントがマイクロソフトの開発者向けページに置かれることもある。
一般ユーザーが利用する可能性が高いアプリケーションのうち、活発な動きが見られるのは、「ターミナル」「VS Code」「PowerToys」「PowerShell」などだ。
そのほかにも「.NET」や言語(C#、F#、TypeScriptなど)もあるが、こちらはユーザーが限られるので今回は割愛した。
電卓やPowerToysなどアプリケーション関連
Windows 10/11付属の「電卓」はOSSだが、やや活発とは言いがたい状態。ソースコードは以下のURLにある(https://github.com/microsoft/calculator)。まあ、Windows付属アプリなので、機能もほどほどといったところだろうか。
そのほかにエディタの「Visual Studio Code」(VS Code)がある。こちらは開発が継続しており、定期的にアップデートされている。基本的には開発者向けだが、JSONファイル編集などにも利用可能。Windows付属のメモ帳では機能不足というのであれば、入れてもいいかもしれない。code.exeでコマンドラインから起動が可能なので、ちょっとしたテキストファイルの表示や編集に重宝する。
本連載でも何度か扱った「PowerToys」もOSSだ(https://github.com/microsoft/PowerToys)。記事執筆時点のバージョンはv0.64.0。
このところ、毎月のように新しいバージョンが公開されている。最新版では、ファイルをオープンしているプロセスを表示する「File Locksmith」とHostsファイルの編集アプリ「Hosts File Editor」が追加された。また、「ビデオ会議のミュート」は、v0.67でサポートが終了する予定となった。ただ、GitHubのページを見ると、議論沸騰状態で実際に廃止されるかどうかはわらない。
WSLやPowerShellなどシステム系ソフトウェア
システムよりのソフトウェアとしては、「ターミナル」「winget」「WSL」「PowerShell」がある。ただしWSLは完全なオープンソースではなく、Linuxカーネルなど部分的な公開で、WSLの基本となる仮想マシン支援機能などはオープンソースになっていない。
「ターミナル」(旧Windows Terminal)は、この連載でも何回かとりあげた(https://github.com/microsoft/terminal)。
最新版は、プレビュー版がv1.16.264(2022年9月24日公開)、安定版がv1.15.2874(Windows10)、v1.15.2875(Windows11)で、2022年10月19日に公開されている。
「Winget」は、コマンドラインベースのパッケージマネージャー。ソフトウェアのインストールやアンインストールなどをコマンドラインから可能にするもの(https://github.com/microsoft/winget-cli)だ。現在のプレビュー版はv1.4.2161(2022年8月6日)、安定版はv1.3.2691(2022年10月5日)。
最新版では、サブコマンドのshowやinstallでパッケージに関するURLを表示するようになった。「ターミナル」なら、コントロールキーを押しながらURLをクリックして標準設定されたブラウザを開くことができる。また、インストーラーを持たない実行ファイルのみのパッケージ(portableパッケージ)のインストール、アンインストールにも対応した。
WSLに関しては、前回の記事(「Microsoftストア版でプレビューが進められているWSL」)で解説したように、プレビューの配布はMicrosoftストア経由となった。公開されているソースコードなどはGitHubにある。
●microsoft/WSL2-Linux-Kernel(カーネル) https://github.com/microsoft/WSL2-Linux-Kernel ●microsoft/WSL(Microsoftストア版WSLプレビューのバグ報告とリリースノート) https://github.com/microsoft/WSL ●microsoft/wslg(Windows 11のLinux GUIアプリ用) https://github.com/microsoft/wslg ●microsoft/WSL-DistroLauncher(WSLディストリビューション開発用) https://github.com/microsoft/WSL-DistroLauncher ●microsoft/CBL-Mariner(Windows 11のWSLgのためのシステムディストリビューションで利用) https://github.com/microsoft/CBL-Mariner
「PowerShell」は、Windowsに標準添付されているWindows PowerShellの後継プログラム。以前は、PowerShell Coreと呼ばれていた。Windows PowerShellはメンテナンス状態となり、今後の開発はPowerShellのみとなる。現在の安定版はv7.2.7(2022年10月21日公開)で、プレビュー版はv7.3.0-rc.1(2022年10月26日公開)だ(https://github.com/PowerShell/PowerShell)。
初期のMS-DOSもソースコードが公開されている
そのほかに、すでに開発が停止しているが、ソースコードが公開されたアプリケーションがいくつかある。
●microsoft/MS-DOS(Ver.1.25およびVer.2.0) https://github.com/microsoft/MS-DOS
●microsoft/Microsoft-3D-Movie-Maker(Windows 10で一度標準アプリとなった3Dムービーメーカー。廃止に伴いオープンソース化した) https://github.com/microsoft/Microsoft-3D-Movie-Maker
●microsoft/winfile(Windows NT 4.0のファイルマネージャーをWindow 10以降で動作可能にしたもの) https://github.com/microsoft/winfile
●microsoft/GW-BASIC(MS-DOS用のBASICインタプリタ) https://github.com/microsoft/GW-BASIC
これらはもはや歴史的な資料といったところだろう
マイクロソフトのドキュメントは、時として理解しがたいことがある。また、ソフトウェアによっては、詳細なドキュメントが存在しないこともある。こうしたときOSSならば、ソースコードを見るという手がある。たとえば、本連載でもWindows TerminalやPowerToysを扱っているが、多く場合、実際に動かした上で、ソースコードを見ないと、挙動などについて正確に記述できないことがある。
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