AMD B650チップセットを採用したAM5プラットフォーム向けマザーボード、MSI「MPG B650 CARBON WIFI」
ASCII.jp / 2022年11月9日 11時0分
今回紹介するのはMSIの「MPG B650 CARBON WIFI」。AMD B650チップセットを採用したAM5プラットフォーム向けマザーボードだ。CARBONはMSIゲーミングマザーボードの中でもデザイン、機能ともにこだわったモデル。AMD B650マザーボードとしての機能をベースに、ゲーミングにおける安定性でも一段上を求めるユーザーに最適なモデルと言えるだろう。
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MPG B650 CARBON WIFIはx16がGen4、M.2がGen5対応というスペック
MPG B650 CARBON WIFIのデザインは、先に投入されたMPG X670E CARBON WIFIと同じコンセプトになる。ヒートシンクには触れた際の質感もしっとりレザー風のプリントを部分的に採用し、VRM部分はMSIの定番である大型のブロックヒートシンクを採用している。製品名のカーボンについては、チェッカーフラッグ風パターンが綾織カーボンっぽさを出している。
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MPG B650 CARBON WIFIを紹介するにあたり、最初に説明すべきはチップセットがAMD B650である点だろう。AMD X670では2チップ構成によってPCI Express 5.0 x16(ビデオカード)やPCI Express 5.0 x4(M.2)、豊富なUSBをサポートしていたが、やはり2チップというところで従来モデルと比べてひとつ上の価格帯になってしまった。
一方、AMD B650はこれまでどおり1チップ構成だ。DDR5やPCI Express 5.0といった次世代インターフェースを取り込んだことで価格の上昇が見られるものの、AMD X670と比べればマイルドだ。もちろん1チップである分X670と比べると高速インターフェースの数は減るが、ここはご自分が求めるところと照らし合わせて検討いただきたい。まずはPCI Express関連の拡張スロット、M.2スロットの仕様を紹介する。
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MPG B650 CARBON WIFIの拡張スロットはx16形状×2本、x1スロット×1本の計3本。ビデオカード用はPCI Express 4.0 x16、2つ目のx16スロットはPCI Express 4.0 x4となっている。PCI Express 5.0 x16には対応していない。また、チップセット側に接続されているx1スロットはPCI Express 3.0だ。
一方、M.2スロットは計4基で、うち1番目のスロットはPCI Express 5.0 x4対応となっている。PCI Express 5.0対応SSDコントローラチップはすでに発表されており、M.2 SSDのほうが先に発売される可能性が高い。PCI Express 5.0対応M.2 SSDと言えば、その発熱が大きいと前段階から噂されているが、最上段スロットのヒートシンクはSSDの裏面用にもヒートシンク&サーマルパッドを設け、さらに表面ヒートシンク自体もほかより高さを出して放熱面積を大きくしている。固定方法にラッチを用いているのも特徴で、このスロットについてはツールフリーでSSDを装着できる。実際にM.2 SSDを装着すると厚みも出るので押し込みに少し力を入れる必要があるが、その分グラつきもなくカチッと固定される。
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M.2の残り3スロットは、2つがCPU直結のPCI Express 4.0 x4対応スロット、最下段ひとつはチップセットに接続しているスロットで、PCI Express 4.0 x4/Serial ATA 3.0対応だ。今回、これら3つのM.2スロットにもEZ M.2 CLIPが採用されている。M.2 SSDの端、小ネジで留める部分に付いているクルっと回転して固定するプラパーツだ。
このように、M.2ストレージに関してはPCI Express 5.0対応かつ、トータルではスロット本数も豊富だ。ここがAMD B650マザーボードの中でもハイエンド寄りのMPG B650 CARBON WIFIを選ぶ理由になるだろう。
なお、Serial ATA 3.0はマザーボード正面から見て、右下に4ポート、下辺に2ポートの計6ポート搭載している。こちらのポート数も比較的豊富なところもよいだろう。
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VRMは16+2+1フェーズ。アッパーミドル的選択のPWMコントローラ&MOSFET
VRM周りを見ていこう。まず電源端子は8ピンのEPS12V×2で余裕を持たせている。VRM回路としては16+2+1フェーズ。MPG X670E CARBON WIFIが18+2+1フェーズ構成なので、MPG B650 CARBON WIFIはCPU用を2フェーズ減らした格好だ。とはいえ、MPG B650 CARBON WIFIはAMD B650チップセット搭載マザーボードとしてはハイエンド寄りのポジションで、周りを見渡しても16フェーズというのは豪華な設計だ。しかも、PWMコントローラやMOSFETもAMD B650マザーボード用としてはよいものを選んでいる。
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PWMコントローラはMonolithic Power Systems「MP2857」。MOSFETは、メモリ用と思われる1フェーズのみMaxLinear「MxL7630S」を用いているが、そのほかCPU、iGPU用はMonolithic Power Systems「MP87670」を採用している。MP87670は80A対応のSPS(Smart Power Stage)だ。すでにMPG X670E CARBON WIFIを見ているだけに、それと比べるとフェーズ数を減らし、90A→80A対応へと抑えられている。ただし、より安価なモデルならCPU 14フェーズ、60A程度の出力に抑えられるため、MPG B650 CARBON WIFIはアッパーミドル的選択と言えるだろう。
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組み合わせるVRMヒートシンクは、CPUソケット上辺、左辺に分かれたブロックタイプのもので、それをヒートパイプで結んだ構造だ。MOSFET部分からバックパネルにかけてオーバーハングする部分まで、放熱面積が大きくとられている設計は同社が「拡張ヒートシンク」と呼ぶものだ。また、MOSFETやチョークと接触し熱を伝える部分には7W/mKのサーマルパッドを用いている。
MPG B650 CARBON WIFIのVRMはこのように強力で、たとえCPUベンチマークを長時間稼働させても、MOSFETの能力的にかなり負荷率は低いところで使用することになるのではないだろうか。また、組み合わせられる超巨大VRMヒートシンクの冷却性能も期待できる。そこをベンチマークで確かめてみよう。
今回は、CPUにRyzen 7 7700X(8コア16スレッド、TDP105W)を用い、36cmクラス簡易水冷のMSI「MEG CORELIQUID S360」、ビデオカードにMSI「Radeon RX 6950 XT GAMING X TRIO 16G」を組み合わせた。そのほかメモリはAMD EXPOに対応したOCメモリで、Kingstonの「Fury Beast RGB KF560C36BBEAK2-32」(DDR5-6000、16GB×2)、PCI Express 4.0 x4世代のM.2 SSDを組み合わせている。バラック状態で検証しているが、ケースファンを想定した12cm角ファン1基をメモリの手前に置き、こちらはMPG B650 CARBON WIFIのファン回転数制御に任せた。計測時の室温は27℃。使用したベンチマークは、MAXON「CINEBENCH R23」、UL「3DMark」。それではグラフを見てみよう。
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グラフ1は、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)を10分間駆動させた際の各部温度推移だ。VRMはMOSFET内の温度センサーを用いており、グラフでは濃い青のラインの「MOS」に注目いただきたい。ベンチマーク開始前は34.5℃で、スタートとともに上昇しはじめ、ベンチマーク終了時点では45.5℃だった。1基とはいえケースファンありの想定なので、ベンチマーク終了直後からすみやか温度を下げていく。540カウント以降の温度下降が緩やかなのは、CPU温度が十分に冷えたと判断したマザーボード側ファンの回転数制御が、ケースファンの回転を最小まで絞るためだ。それでも緩やかに温度を下げていく部分こそ、超大型ヒートシンクの効果と言える。
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グラフ2は3DMarkのCPU Profileベンチマークで温度変化を見てみた。3DMarkのCPU Profileベンチマークは、最大スレッドから16/8/4/2/1スレッドとCPUのスレッド数の違いで計測される。グラフのCPU温度、冒頭2つの鋭いピークはまだロード段階で、3つ目のピークがMAXスレッド、そして16スレッド、8スレッド……と続く。Ryzen 7 7700Xは最大16スレッドなので、MAXスレッドと16スレッドテストは実質同じだ。VRM温度はベンチマーク開始から徐々に上昇しはじめ、16スレッドテスト時に38.5℃、その後8スレッドテスト中に最大温度の39℃に達した。4スレッドテスト中はまだ39℃になるシーンもあったが、2スレッド、1スレッドテストではむしろ冷却が勝っているようで下降線になっている。
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グラフ3は3DMarkのTime Spy Extreme(普段のTime Spyよりも負荷を上げた)実行中の温度推移だ。序盤、GT1、GT2のシーンではCPU負荷はあってもVRMはそこまで温度上昇を見せなかった。一方、CPUテストに入るとCPU負荷がグンと上がり、VRM温度も上昇を見せた。ただし、ここでも意外と上昇幅は大きくなく、最大45.5℃で収まっていた。
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ここで計測した3つのテストだが、VRM温度の変動は非常に緩やかだ。ケースファンありの想定、組み合わせたCPUクーラーのMEG CORELIQUID S360がヘッド部に小径ファンを搭載しているため、最大温度という点では抑えられているかもしれない。まあ、実際のところ現在のPCでは、適度なエアフローが必要だ。適度なエアフローがあれば、このVRMは発熱も小さく、大型ヒートシンクが十分に冷やしてくれる。
参考までに、今回計測した各ベンチマークのスコアを提示しておこう。
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ゲーミング向けに高速ネットワークと豊富なUSB
インターフェースを見ていこう。まず、ゲーミングという点では製品名にもあるWi-Fi 6E、2.5GbEネットワークが挙げられる。Wi-Fi 6EはAMD Wi-Fi 6Eを採用。2.5GbEはRealtek「RTL8125BG」を利用している。
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バックパネルでは、映像出力にDisplayPort、HDMIを備えるほか、7基もあるUSB 3.2 Gen2、20Gbpsの高速USB 3.2 Gen2x2 Type-Cがある。端子数としては十分に豊富だ。加えてCMOSクリアとFlash BIOSボタンも備えている。フロント端子はUSB 3.2 Gen2 Type-Cが1基、USB 3.2 Gen1 Type-A×2基がある。
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MPG X670E CARBON WIFIとは異なり基板上の追加機能は少なめだが、やはり便利なのがEZ Debug LED。ATX24ピンそばにあるこのLEDは、電源投入時、POSTプロセスに合わせて点灯する。CPU/DRAM/VGA/BOOTと分かれており、各段階に応じて次々にLEDが点灯するため、仮に問題が生じて停まってしまえばその点灯している部分を再確認すればよい。POSTコードの場合、もう少し詳細に問題特定ができるが、そのためにはマニュアルを読まなければならず、一方EZ Debug LEDのような仕組みなら大雑把だがどのパーツがという点では分かりやすい。たとえばVGAで点灯が停まっていたなら補助電源を確認したり、しっかり挿入されているか接触不良を疑ったりすればよいといった具合だ。
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M.2スロットの部分でも触れたが、MPG B650 CARBON WIFIはAMD B650マザーボードとしてはハイエンド寄りだけあって、自作PCの組み立てをよりスムーズに進められる仕組みが豊富だ。少し値の張るマザーボードのほうがユーザーフレンドリーということもあるので、自作PC初心者にマザーボードをオススメする際はこうしたところもチェックしているとよいだろう。
今は堪え時……AMD B650でひとつ上を狙うMPG B650 CARBON WIFIこそ最適解!?
MPG B650 CARBON WIFIは、AMD B650マザーボードの中でも上位のモデルだ。ひとつ上のマージンを持たせたVRM、よく冷えるヒートシンク、ビデオカードはPCI Express 4.0世代だがM.2 SSDではPCI Express 5.0 Readyだ。CARBONシリーズのデザインが好きという方も多いだろう。
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たしかにPCI Express 5.0 x16非対応という点に引っかかる方もいるかもしれないが、現実的にはまだ当面PCI Express 4.0ビデオカードが主流、PCI Express 5.0世代が登場したとして「9」グレード未満は本当にPCI Express 4.0で帯域不足になるところまではいかないだろう。PCI Express 5.0ビデオカードに移行するのは本当に必要になった時でよいという考えも、それはそれでアリである。ただ、それまでAM4で引っ張るよりは、Ryzen 7000シリーズの性能の魅力が勝るのではないだろうか。そんな方にMPG B650 CARBON WIFIを推したい。
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