初心に帰ってスマートペンのエントリーモデル「dimo」を衝動買い
ASCII.jp / 2022年11月10日 12時0分
ペンとメモ(ノート)の人との関わりの歴史を探ってみれば、その歴史は間違いなく紀元前にまでさかのぼるのは確実だ。当然ながら、歴史のまだまだ浅いICT系との相性が、良いとは思えない。一方タブレットPCで描いたデジタルデータなら、極めて歴史の浅いパソコンやクラウドサービス系のシステムとの相性は良さそうだ。
人と筆記具との極めて長い貴重な関わりの歴史を眺めて見れば、まだまだ歴史の浅いタブレット液晶と書き心地のイマイチ良くないデジタルペンで描いた即席の成果物が、数千年の歴史ある世界とすぐに融合できるとはとても想像できない。
そんな相いれない混沌とした時代を背景に多少デジタル的な小細工を施した普通に見える紙と、同様に多少小細工はされているが、パッと見普通のボールペンのコンビで筆記するデジタイズ(パソコンなどで扱えるデジタル化)ステーショナリーデバイスが人気だ。
今回衝動買いしたアナデジ商品は、「Neo smartpen dimo」(以降、dimo)と呼ばれるコスパに優れたエントリークラスの「スマートペン」だ。販売元はNeoLAB。同社はdimoに先駆けてM1やM1+、N2と呼ばれるペンの先輩モデルがある。また筆記具の老舗である独ラミーとの協業モデルであるLAMY safariデジタルペン、手書きのスケジュールをテキスト化してクラウド上のスケジュールアプリと同期する便利な商品なども開発、販売している。
dimoの同梱物はdimo本体のほかにdimo紹介の小冊子、クイックガイド、お知らせ、dimo用単4アルカリ乾電池だ。デジタルペンの多くは充電式モデルが多く、バッテリーが長持ちすることもあって充電を忘れてしまうことが意外と多い。dimoはその点どこでも入手可能な単4アルカリ乾電池なので、極めて安心便利だ。
まずは、単4アルカリ乾電池をクイックガイドに従ってセットしよう。dimoスマートペンもここ四半世紀ほど、世界中のいろいろなICT系企業や文具メーカーから発売されている、アナログ筆記→デジタイズ→スマホ・パソコンでの活用&共有を実現するペン&ノートのコンビネーション商品だ。
今回、筆者はdimoスマートペンと同時にB5版のDIGITAL NOTEBOOKという製品を3冊同時に購入した。dimoスマートペンはこの専用ノートとの組み合わせで使う限り、歴史に逆らうことなくさまざまなアナログ+デジタルの恩恵を受けることが可能だ。
このコラムでもデジタルペンに関しては「2年遅れで中国・ロヨルの電子ノート「RoWrite」を半額で衝動買い」や「これまでで一番スリムでスタイリッシュな「ネオスマートペン」を衝動買い!」など、ほかにもいろいろご紹介しているので合わせてお読みいただきたい。
前述したように、四半世紀前から手書きタブレットとは全く別の世界で、できる限りアナログの良さと従来のペンと紙のユーザーインターフェースを優先させようとしている商品は多い。自分のまとめのためにも、現在市場にある多くのアナデジ系手書きデバイスを、多少乱暴だが表形式にまとめてみた。
筆者の知る限り最古参の商品は、最上段にある筆者も製品創成期に多少関わったIBMとボールペンのクロスが共同開発した「CrossPad」だ。そして最下段には、アナログの元祖である「普通のメモ+手帳」を並べてみた。歴史と人類の慣れに重点を置くと、アナデジ環境を実現するために技術や特殊な製品に依存度の高くない製品(緑部分が多い)ほど、ナチュラルな商品だと言える。
筆者個人としては、この区分けの上から下までに分類される世界中のアナデジ商品の90%以上は、実際に使っていたか今現在活用中だ。この10年ほど技術が進化し、Dropbox ScanやOneNoteなどのように、スマホカメラで手書きのメモをただスキャン(撮影)するだけで、パソコンやクラウドサービスと親和性の高いデジタイズを実現してくれる無償の商品が登場してきている。
有償でデジタイズ系のサービスをしようとするプロバイダやメーカーは、競争に打ち勝つためにユーザーが便利で喜ぶ新たな付加価値を見つけて、新しい必要かつ多機能な手書きデバイスを提供することを前提に考えなければ、生き残れない時代となった。
そんな中でNeoLABは、筆者が初めて同社を知ってから既に7年ほど経つが、その間もさまざまな工夫を凝らしながら、スマートペンとその周辺のビジネスを長く継続、拡大してきており今ではスマートペン業界の老舗と言える企業だ。
デジタルカメラを取り付けたペンが 専用紙に記された座標を読み取る仕組み
今回ご紹介するdimoスマートペンは、この表に当てはめるなら上から2番目にあるデジタルペンの元祖である、Anotoのデジタルペンとイメージ的には近い。専用スタイラスと専用の用紙の両方が、必要なスマートペンだ。そして連携するデバイスは、主としてスマートフォン。スマホ内のデータとクラウド間で同期を取ることで、無料クラウドストレージ上の同期ファイルは、パソコンでもで活用できる。
Anotoは、同社独自の超微細な非反復(繰り返しのない)ドットパターンを全面に書き込んだ専用紙を使ったノートやメモ用紙を使用することが、前提条件だ。そして、その非反復ドットパターン用紙をボールペンとすぐその脇に、デジタルカメラを取り付けたペンが座標を読み取る仕組みだ。
それはペン先がたった今、どのページを書き込んでいるか、そしてペン先が今ページのどこにあるかを正確に自ら判別し、ペン内部のストレージに座標を書き込むか、Bluetoothなどの無線経由でスマホやパソコンなどに転送することで、筆記文字やイラストなどのデジタイズをリアルタイムに近いスピードで、実現している。
繰り返すがdimoスマートペンは、その先端にボールペンとデジタルカメラの付いた一見普通のペンと、Ncode(エヌコード)という仕組みの非反復用紙を使って、すべてのページを埋めたDIGITAL NOTEBOOKの両者でAnotoペンとほぼ同様のことを実現している。
共有やウェブ検索は マークをペンで囲むだけで簡単!
繰り返しのないドットパターンのDIGITAL NOTEBOOK上にスマートペンで書き込んでいるとき、ペン先は今何ページのどの場所に書いているか、正確な座標を知っていると前述した。DIGITAL NOTEBOOKはこれを利用して、ユーザーに便利なショートカットを提供している。DIGITAL NOTEBOOKの一部に印刷されている「共有」アイコンと「ウェブサーチ」アイコンの2つがそうだ。
前者をdimoスマートペンでタップ、あるいはチェックマークを付けることで、連携しているスマホ上に現在筆記中のメモをすぐさま共有するために、必要な画面が表示される。スマホ上のアプリは、dimoスマートペンで筆記中の軌跡をリアルタイムで画面表示するとともに、スマホ側でできる共有サービス画面の起動も同時にできる仕組みだ。
そしてもう一方のウェブサーチアイコンは、同様にdimoスマートペンでタップかチェックをすると、スマホ上にグーグルのウェブ検索画面が表示される。しかし今のところ筆者には、それで何が便利になるのかあまり、よく分かっていない。おそらく筆者が何か勘違いをしているのかもしれない。
dimoスマートペンは見掛けは多少チープだが、筆者的には適度に太く普通のアナログボールペンのルック&フィールが、なかなかうれしいサイズ感だ。昨今のスマートペン系の多くの商品は、創成期の頃にはファットなイメージだったので、その反動か昨今はスマートすぎて、逆に使いにくい形状のペンが多い気がしていた。
実際に筆記して見ると、スマホ上での表示の追随性もほぼリアルタイム。紙の上ではボールペンの太さも色も無縁の単調なモノクロ世界だが、リアルタイムのデジタイズ中にアプリのパレットでペン先の太さの変更やインクカラーの交換も可能だ。必要性は人によってまちまちだとは思うが、アプリ上ではカラフルな仕上げにすることも、たやすい。
専用アプリ「Neo Studio」があれば サムネイルを一覧できる
DIGITAL NOTEBOOKに、dimoスマートペンで描いた結果をスマホに表示させたり、記録したり、共有したりするには、専用アプリの「Neo Studio」をインストールする。アプリを使えば実際に筆記する紙のDIGITAL NOTEBOOKと紐づけして、表紙や題名をカスタマイズもできる。筆記した各ページは、サムネイルで一覧でき、アプリ内蔵のレタッチアプリで追加筆記や色付け、訂正、消込も可能だ。
この手のアプリの最大のウリ機能は、デジタイズされたデータの関係者との共有だ。アプリ上で「ページ共有」をタップして選択、データフォーマットを指定してSNSやメールなどを介して、目的の相手とデータの共有ができる。
dimoスマートペンの場合は、スマホ上のアプリメニューではなく、DIGITAL NOTEBOOKの右上にある前述した「共有」アイコンをペン先でタップすることでも、自動的に同様のメニューが起動する。作業中にdimoスマートペンを一旦置いて、スマホメニューを探索するより簡便な手段だ。
そしてdimoスマートペンの筆記データをパソコンと共有利用したい場合は、「自動同期設定」をすることで可能だ。いつでも「今すぐ同期」ボタンを押すこともできるが、「自動同期間隔設定」で同期間隔を15〜480分の15分刻みで指定する方が簡単だ。
同期は、同社の無料クラウドサイトに対して実施されているようだ。サイトにパソコン上のブラウザーでアクセスして、スマホとほぼ同じような画面イメージで、見て活用できる。自動同期操作はノートブックだけではなく、ページで指定したタグや録音ファイルなども対象となる。
タグ検索、テキスト変換に対応
各ページごとにキーワードとして忘れずに登録したタグワードは、まとまった検索対象ファイルとなり的確に目的のワードを検索して見つけ出し、元ファイルであるアナログ筆記したページにたどり着き、画面上表示してくれる。筆者は従来から検索はタグワード派で、実際にページ内に書かれた文字をテキスト認識して活用する全文認識のテキスト派ではない。
もちろんdimoスマートペンは、手書き筆記のページを文字認識してテキストに置き換える機能も有している。出荷時設定では英語が認識対象だが、日本語の変換データをダウンロードし変換言語対象に設定すれば、それなりに変換はしてくれるが、今のところ筆者は使用していない。
dimoスマートペンの良さは、無料のDropboxやOneNoteの単なるスキャン&デジタイズとは異なり、手書きメモのより高度な運用管理と活用ができることだ。同社が販売するDIGITAL NOTEBOOKに、非反復のNcodeを採用したおかげで、いつどのページのどの場所に思いついたことを後日に書き加えても、書き込むページや位置を間違えることは皆無だ。
この究極の仕組みを採用したdimoスマートペンとDIGITAL NOTEBOOKを使うか、機能は極めて限定されてはいるが、無料のDropbox ScanやOneNote Scanを使うか、各自の目的や必要性そしてこだわり、趣味で選ぶか、あるいは両方を使うか少し悩んでみるとおもしろい。
悩みの後には、きっとアナログとデジタルの新しい世界とそのぼんやりとした境界線あたりが、見えてくるかもしれない。いずれにせよ、アナログとデジタルの共存するアナデジ世界は、最初のスマートペンの登場から四半世紀経った今も、なかなか楽しい世界だ。
今回の衝動買い
・アイテム:NeoLAB「dimoネオスマートペン」 ・購入:Amazon.co.jp ・価格:8800円
T教授
日本IBM社でThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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