EUによるスマホのUSB-C義務付けが正式に採択 アップルは「従う」
ASCII.jp / 2022年11月10日 12時0分
EUがかねてより進めてきたモバイル端末のUSB Type-Cへの統一を正式に採択した。これによりスマートフォン、タブレット、カメラなどの機器は2024年末までにUSB-Cを採用しなければならない。アップルはすでにこれに従う方針を明らかにしている。
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来年末までにスマホを始めとする電子機器にUSB-C搭載を義務化
コロナ禍前のことだが、米国のホテルに泊まると、たまにベッド横にある目覚まし時計兼ラジオに、iPhoneの30ピンのDockコネクタをドッキングできるものがあった。その頃すでに周囲にDockコネクタが必要なiPhoneを持っている人はいなかった。初期のiPhoneを思い出してノスタルジーを感じたものだ。
規格が変わるというのはこういうことだろう。時計やラジオとして機能しているのならいいが、Lightning端子のiPhoneを購入したユーザーは30ピンのケーブルは不要になったはずだ。
アップルがLightningを導入したのは、2012年の「iPhone 5」のこと。もう10年前の話。そろそろLightningも終わりを迎えるのかもしれない。
以前にも本連載で紹介したように(「iPhoneをついにUSB-C化させる!? EUで可決された「RED」とは」)、欧州連合(EU)は「Radio Equipment Directive」の修正として、スマートフォンをはじめとした電子機器の充電をUSB-Cで統一する方向で動いていた。そして10月4日、欧州議会はこの法案を可決した。これにより2024年末までにEU圏で販売されるすべての携帯電話、タブレット、カメラはUSB Type-Cを搭載しなければならない。もちろん、iPhone、iPadも例外ではない(というより、EUの最大のターゲットだ)。
そして、アップルのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデント、Greg Joswiak氏はWall Street Journalのイベントで、「従うしかない。それ以外の選択肢はない」と話したことが報じられている(https://www.wsj.com/livecoverage/wsj-tech-live-2022/card/apple-says-iphones-will-comply-with-eu-law-requiring-usb-c-charging-ljK6qqmQkOkF2RdnWvrc)。
10年前に導入したLightningにいよいよのお別れか
この法律はあくまでEU圏で適用される法であり、USB-Cを義務化するのは欧州で新たに販売されるデバイスだ。つまり、日本・米国を含む欧州以外の地域は影響を受けない。それでも、アップルが欧州向けにUSB-C搭載の(たとえば)iPhone 15を、それ以外の市場には従来通りLightningのiPhone 15を用意するとは考えにくい。Joswiak氏が「従う」としているのは、おそらくは欧州向けにというより、世界で販売するiPhoneがUSB-Cになることを意味している、と考えて良さそうだ。
実際に、アップルに詳しいアナリストMing Chi Kuo氏は5月(法案成立前)の段階で、「2023年にLlightningではなくUSB-Cを搭載した新しいiPhoneが登場する」という予想をツイートしていた。2023年となると「iPhone 15」の可能性が高い。実現すれば、EUが定める「2024年末」の1年前倒しになる。
そもそもiPhone 14に付属しているケーブルのもう片方の先はUSB-Cなのだ。しかもそれによって、(Macユーザーなら特に)恩恵はあったし、充電速度も早くなった。そしてiPadは大半がUSB-Cを用いているのだ。10月に発表された「Apple TV Remote」もまたそうだ。
USB Type-C以外のiPhone 15のもう1つの話題 クアルコムとの関係は続く!?
iPhone 15に関する憶測は、USB-C以外にもある。以前から複雑な関係にあるクアルコムの5Gモデムを、アップルが2023年も使うというものだ。
アップルとクアルコムは法廷で激しく火花を散らしたのち、2019年に和解。2社はすべての訴訟を取り下げ、ライセンス料を不満としていたはずのクアルコムから5Gモデムを調達している。自社での開発も進めているはずなのだが、2023年でも間に合わなかったようだ。クアルコムが決算で今後も現在のレベルを維持するといった見通しを出したことから、アップルが引き続き同社から多くを調達するという見方がなされている。
このように、年末商戦が始まる前からiPhone 15の予想が出ている。このまま行くと、アップルにとっては巻き返しを図る端末になりそうだ。9月に発表したiPhone 14/iPhone 14 Plusは、ここまで販売動向が振るわないというレポートもある。USB-Cに切り替えることは需要の換気につながるかもしれない。新しさ、話題性は十分ある。
それにしても、Lightningを不便に感じていた人は多かったはず。結局はEUしかアップルにUSB-Cを採用させられなかったことになる。そして買い替えが進んでEU市民がメリットを享受でき、EUが主張するところの電子廃棄物が減るのは、さらに数年先になるだろう。その頃には充電用の端子を持たない完全無線(ワイヤレスチャージ)の端末も登場しているのかもしれないが。
筆者紹介──末岡洋子
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フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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