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ゲーム、まちおこし、教育に活用が広がる3D都市モデル。第3回PLATEAUライトニングトーク開催

ASCII.jp / 2022年11月29日 12時0分

この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。

 国土交通省は10月21日、ライトニングトークイベント「3D都市モデル PLATEAU LT 03」を開催。PLATEAU(プラトー)は、2020年度にスタートした国土交通省のプロジェクト。スマートシティをはじめとしたまちづくりのDX化を進めるため、その基盤となる3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進している。3回目となる本イベントでは、「PLATEAU使ってみた」をテーマに15名が登壇し、3D都市モデル活用のアイデアや体験談を披露した。

現実世界と仮想空間がリンクするゲームでまちおこし!

 株式会社CHAOSRUの内藤薫氏は、現実社会とリンクしたデジタルツイン・オープンワールドアクションRPG「TOKYO昭和97年」の企画を紹介した。

 PLATEAUを使ったデジタル都市空間を動き回り、クエストをこなしていくゲームで、現実社会の課題に沿ったシナリオになっているのが特徴。制作中のデモでは、移動、マップ表示など基本システムの組み込みと5つのクエストを実装。現実社会とのリンクがコンセプトなので、自治体や企業、クリエーターとコラボして地域課題やPRに使えるシナリオを追加パッケージにして拡充していきたい、とアイデアを語った。近日、ダウンロードして試せるPC版のデモアプリを公開する予定だ。

現実社会とリンクしたデジタルツイン・オープンワールドアクションRPG「TOKYO昭和97年」
渋谷の街を動き回り、クエストをこなしていく

 一般社団法人Finovatorsの藤井達人氏は、実在する世界を仮想空間化したメタバースレーシングによるまちおこしを提案。藤井氏は自宅の8畳間にレーシングゲームの機器を設置しているほどの愛好家だ。最近のレースゲームは実在するさまざまなサーキットがリアルに再現され、現実の道路走行とのギャップや没入感が楽しめる。PLATEAUやOpenStreetMapを組み合わせれば、全国各地の街並みを市街地サーキットとして再現できそうだ。例として、丸の内を中心としたエリアの市街地サーキットを提案した。

 仮想空間だからこそ、現実では走行できない場所で非日常的なレースが開催できる。全国の観光名所の周りをサーキット化してレースを開催することで、街の魅力を世界に伝えられるという。またレースの上位入賞者にはNFTを贈呈し、実際に街を訪れた時に特典として活用するなどの案が考えられるとのこと。

実在するドイツのニュルブルクリンクや首都高のシミュレーション(左)。Fujii氏の自宅のレーシングゲーム部屋(右)
皇居の周りの道路を超高速でレースをする非日常体験ができる

AR×VR×PLATEAU-札幌の街の巨大ロボをVRで操縦する

 きっポジ氏は、PLATEAUとGoogle ARCore Geospatial APIを使ったAR×VR作品を紹介。きっポジ氏は、札幌駅に怪獣を出現させたり、大丸札幌店の壁面に巨大猫を投影したり、札幌の街を雪景色に変えたりといった札幌を彩るPLATEAUを使ったAR作品を制作している。

札幌の街に3Dオブジェクトを出現させるPLATEAU×ARの作品

 これらは一見、普通のARのように見えるが、Google ARCore Geospatial APIを使うことで現実のビルとPLATEAUの建物をぴったりと重ね合わせてAR表示している。PLATEAUの3D都市モデルを透明マスクシェーダーで隠すことで、CGのボールが建物に当たると跳ね返ったり、オブジェクトがビルの向こうに移動すると陰に隠れる、といった現実と融合した表現が可能になる。

 さらに、フレームワークとしてPhotonを使用しているためマルチプレイも可能。VR空間でプレイヤーは巨大ロボット同士の対戦を楽しみ、観客はARを通じて現実空間から観戦できる。ARとVRの連動する動画はきっポジ氏のTwitter(@kitposition)で公開されている。

現地のARロボをVRで操縦できる
VRではPLATEAUデータを可視化し、現地のAR画像と同期

PLATEAUを都市計画や防災に活用

 Eita Horishita氏は、「千葉県柏市でPLATEAUを使ってみた」というテーマで、都市計画マップにPLATEAUの3D都市モデルを活用した事例を紹介。3D建物を都市計画マップに重ね合わせると、用途地域のゾーニングに沿って建物が建築されていることがひと目でわかる。

用途地域と3D建物を表示した例

 また、柏市ではハザードマップの「洪水浸水想定区域」と「過去30年間の水害履歴」はまったく違うエリアで起きているという。これは河川からの洪水よりも、豪雨による内水氾濫が多く起きているためだ。さらにこのマップ上に3D都市モデルや土地の陰影起伏図を重ね合わせると、戸建が多い低層住居専用地域の窪地で被害が発生していることがわかる。このように、PLATEAUが提供するデータに地域のさまざまなデータを重ね合わせて可視化することで今後の対策などに役立てられそうだ。

ハザードマップと3D建物を重ねて表示し、被害リスクを可視化

 株式会社ドコモ・インサイトマーケティングでモバイル空間統計の事業を推進している加藤美奈氏は、人流データ「モバイル空間統計」×3D都市モデルの活用を提案。モバイル空間統計は、ドコモの端末情報を使って人流を計測したデータだ。1時間ごとの人口増減を性別や年代、居住エリア別にリアルタイムで把握できる人口マップを無償公開している。

 2021年にNTTドコモを中心とした6社の連携で実施した「バーチャル銀座」の実証実験では、モバイル空間統計の人流データを使ってアバターの群衆として再現したという。人流データをPLATEAUの3D都市モデルと掛け合わせることで、防災計画やまちづくりのシミュレーションに活用できそうだ。

「バーチャル銀座」の実験では「モバイル空間統計」を使って街のにぎわいを再現

 廣澤邦彦氏は、PLATEAUを使った環境シミュレーションを紹介。PLATEAUのCityGMLデータからXYZ座標を取得すれば予測用モデルを簡単に作成できる。さらに、PLATEAU VIEWで予測結果のデータを取り込み可視化した。

 PLATEAU VIEWで表示した風況シミュレーションの例では、3Dの建物と合わせて風の流れを見ることができ、平面だけではわからない階高による風の強さなどが確認できる。風以外にも騒音や日照など、さまざまな環境情報を可視化すれば、都市開発や避難経路の計画などに活用できそうだ。

PLATEAU VIEWは任意のデータを3D都市モデルに重ね合ねて表示できる。風況予測結果をPLATEAW VIEWに取り込めば、風の流れや強さを容易に可視化可能だ

東京タワーと月面クレーターの大きさを比較する

 東京大学で空間情報学を研究している平澤彰悟氏は、JAXAでインターンをした成果物として、月面データと地図データを重ねて月のクレーター(ケプラー)をわかりやすく可視化し、PLATEAUを大きさの比較に使うアイデアを発表。

 JAXAのデータアーカイブ「DARTS」にある月周回衛星「かぐや」の月面データ(DEMデータ)からケプラー(月のクレーター)を出力し、PLATEAUからは東京タワーのデータをインポートしてクレーターに配置することで、クレーターの大きさが直感的にわかるように表現。同様に、台東区の街や東京都全体をクレーターに配置した例を紹介した。将来的にはVR化し、月面を身近に体験できるようなアプリを作ってみたいそうだ。

月のクレーターと東京タワーで大きさを比較
月面に建物や人を配置

中学校の授業で3D都市モデルを活用

 摂津市立第一中学校の2年生の5名は、「3D都市モデルを使った授業をやってみた」をテーマに内容と感想を発表。摂津市内の中学校2年生を対象にした職業体験プログラムとして、4カ月間・計12回の授業を実施した。「サスティナブルな摂津のまちを考えよう」「3D都市モデルの活用を考えよう」の2つの課題が与えられ、フィールドワーク・グループワークを通した調査を実施し、その結果を3D都市モデルと重ね合わせマッピングを行った。

 プログラムに参加した5グループからは、障害者や高齢者が歩きやすい道を案内するアプリ、通学・通勤帰りに明るく安全な道がわかるアプリの開発などが提案された。良いアイデアは、WebGISツールの「Re:Earth」で授業のサポートを行った株式会社Eukaryaによって実現される可能性があるという。

街を歩いて危険な場所を調査し、3Dモデルにマッピングして表示 <01-8> WebGIS「Re:Earth」を使ってアイデアのデモを制作

PLATEAUをより使いやすくするテクニック

 青山学院大学の古橋大地氏は、「PLATEAUデータをより使いやすくするためのスケールアップの方法」と題し、PLATEAUからOpenStreetMapへインポートする活動に取り組んでいる。

 PLATEAUの3D都市モデルは、データのダウンロードや手持ちのツールで使うための変換作業に手間がかかる。CityGMLデータをOpenStreetMapへ変換すれば、OpenStreetMapデータを利用しているさまざまな地図APIからPLATEAUの建物情報にアクセスできるようになる。具体的にはポケモンGOなどの位置情報ゲームを支えているNianticのLightshipやFacebook Mapといったサービスで使えるようになると期待する。

 現在、古橋氏のチームではLOD1のインポート作業を進めており、CityGMLからOpenStreetMapへインポートする方法を説明したマニュアルを近日公開予定とのこと。また引き続き、全国の都市のOpenStreetMapの変換作業を実施していく計画なので、興味のある方はぜひ作業に参加してほしいそうだ。

CityGMLのLOD1からOSMへインポートする作業マニュアルを近日公開

 PLATEAU LT 01に続いての登壇となったれごん氏は、趣味でメタバース空間を作っており、特徴的な建築物にPLATEAUのモデルを活用している。前回はPLATEAUのデータをOBJ形式に変換する手順を紹介。

 今回は、PLATEAUの3D都市モデルをデータベース化して扱う方法を発表した。

 PLATEAUのほかにOpenStreetMapなど複数の地図を組み合わせる際に、重複している幾何形状を検索する必要がある。これまではCityGMLのデータから必要な要素を直接抽出し、SQLで処理していたが、直接CityGMLをデータベース化する方法を考案。PostGISベースの3DCityDBを用いることで、PLATEAUのデータを直接データベースにインポートできるようにした。これにより、座標や面積などを検索・解析できるようになった。今は個別の3D都市モデルを様々な形式で出力する方法を模索しているとのこと。

PLATEAUをデータベースに取り込めば個別の建物出力がしやすくなる

 株式会社デナリパムは、PLATEAUをWebARで簡単に表示する方法を紹介した。3D都市モデルをダウンロードし、必要な建物情報を選択してGLB形式(Android)またはUSDZ形式(iOS)に変換。「model-viewer」を使用するとブラウザーで簡単にAR表示ができる。スマホで簡単に都市モデルが動かせるので、観光事業などに活用できそうだ。

スマホを使って大阪のランドマークを現実世界に配置

初めてのハンズオンやハッカソンの参加でここまでできる!

 阿部(べちお)氏は、PLATEAU Hack Challenge 2022で人生初のハッカソンに挑戦。UnityとPLATEAUに初めて出会い、簡易的な経路表示システムを開発した。UnityのNaviMesh機能で段差や傾斜の大きさによって通れる場所を設定すると、目的地までの最短経路が描画できる。これにPLATEAUを組み合わせることで、実際の街の簡易ナビゲーションが簡単に作れるという。

PLATEAUの3D都市モデルとUnityのNaviMesh機能で簡易ナビを制作

 東 陽輝氏は、PLATEAUのハンズオン参加の経験から、VR空間をベースにバーチャル豊洲を制作している。これまでの成果として、データの変換、Simplygonを用いた軽量化、Blenderでの地面編集、Clusterへのアップロードの手順を紹介してくれた。東氏は「PLATEAUデータの都市デザインでの実用化に関する研究」を大学の研究テーマにしており、これから現実空間と仮想空間との街歩きを比較できるように仕上げていくそうだ。

PLATEAUの3D都市モデルデータを用いて豊洲の街をClusterのバーチャル空間で再現

 島津 尚弥氏は、「PLATEAU Hack Challenge 2022 in ヒーローズリーグ」で制作した街中で花火が見られる場所を予測するアプリ「マチハナビ」を紹介。島津氏はPLATEAUデータの建物の高さや地形から花火が見られる場所を判定し、Unityで可視化する部分の開発を担当。「ハッカソン初参加でPLATEAUに触るのも初めてだったが2日間で形にできた。チームのみんなで取り組むのは楽しく、とてもいい経験だった」と語った。

候補地点からraycast(緑の線)を飛ばして花火が見えるかどうかを判定

 長田 達彦氏は、福岡で開催された「PLATEAU Hack Challenge 2022 in Engineer Cafe(福岡)」で制作した「SFロボットを用いたまちおこし」の企画を紹介。商業施設や観光地の現地とリンクしたARスタンプラリーやアニメグッズの配布・販売イベントを開催することで街の活性化や観光客の誘致に利用できそうだ。

現地に設置されているARマーカーを読み取るとAR空間上にPLATEAUモデルとセットになったロボットが出現し、記念撮影できる

 以上でそれぞれのプレゼンを振り返ってみた。プレゼン資料は、Connpassの本イベント募集ページのフィードから確認もできる。

 ハンズオンやハッカソンの参加者は、PLATEAUやUnityを使ったことのない初心者も少なくないがチームメンバーやメンターのサポートで簡単に使いこなせるようだ。

 また国土交通省では、3D都市モデルを活用したサービスやアプリ・コンテンツの作品コンテスト「PLATEAU AWARD 2022」の応募を11月30日まで受け付けている(詳しくはPLATEAU AWARD特設サイトを参照)。ハッカソンで作成した作品や、未完成のプロトタイプでもOK。アイデアが良ければ入賞の可能性もあるので、ぜひ応募しよう。

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