ワッパはRTX 3080 FEの最大2倍!GeForce RTX 4080 FE速報レビュー【前編】
ASCII.jp / 2022年11月15日 23時0分
2022年11月16日23時(日本時間)、NVIDIAはAda Lovelace世代の新GPU「GeForce RTX 4080」(以下、RTX 4080)の販売を解禁する。国内価格は既報の通り21万9800円から。最近の円安傾向も手伝い“相当に良いお値段”設定となっている。
だがAda Lovelace世代のGeForceは、従来のRTXシリーズでは利用できない「DLSS 3」、中でも次のフレームをGPU側で推測して描画する新機能「DLSS Frame Generation」(DLSS FG)に対応しているため期待度も高い。
今回筆者は、幸運にもRTX 4080のFounders Edition(以下、RTX 4080 FE)に触れる機会に恵まれた。様々な要因が重なりテストできる時間が非常に限られていたが、RTX 4080の実力についてゲーミング性能にフォーカスして前後編2部構成でお届けしたい。
RTX 3080と同レベルの回路規模と消費電力
RTX 4080は、当初「RTX 4080 16GB」と「RTX 4080 12GB」の2種類あると発表されており、その16GBと呼ばれていた製品である。RTX 4080 12GBは諸般の事情から取り下げられた。GeForce RTX 4070 Tiとして再出発するのではないかと予想されているが、これはいずれ明らかになるだろう。
RTX 4090は、RTX 3090 Tiに対して約1.5倍のCUDAコアを盛った攻めに攻めた仕様だったが、RTX 4080はRTX 3080に対して1.1倍程度と、控えめなパワーアップになっている。そのためか、TGP(Total Graphics Power)は320WでRTX 3080と同じまま。つまり、RTX 3080の電力を賄えるような電源ユニットであれば、RTX 4080も問題なく使えると考えてよいだろう。ただし、オーバークロックする場合はTGPも連動するので、それなりに出力を見直したほうがよいだろう。
検証環境は?
では、ベンチマーク検証の前に今回の検証環境を紹介しよう。比較対象としてRTX 4090 FE、RTX 3090 Ti、RTX 3080 FEの3種類のGPUを用意した。NVIDIAによれば、RTX 4080はRTX 3080 Ti(≒RTX 3090)より2〜3倍ほど速いという触れ込みだが、これが本当なら少なくともRTX 3090 Tiにダブルスコアーに近い状況で勝っている必要がある。今回用意したRTX 3090 TiはAIO水冷仕様の超ハイエンドモデルなので、かなり厳しいテストになりそうだ。
RTX 4090 FEのレビューとの環境の違いは、CPUが第13世代インテルCoreプロセッサー、マザーボードがZ790、メモリーがDDR5-5600へ強化。さらにOSも、CPUに合わせてWindows 11 22H2を導入した。ReSizable BARやSecure Boot、コア分離(VBS)やHDRといった要素はすべて有効化している。
素の性能はRTX 3090 Tiの約20%増
ではまず、定番の「3DMark」から比較していこう。最近テストが増えてグラフが見づらくなってきたため、Fire Strike&Time Spy系と、レイトレーシング系でグラフを分割している。
CUDAコア数の多いRTX 4090 FEのスコアーが飛び抜けて高い一方で、RTX 4080 FEはどちらかと言えばGeForce RTX 30世代のほうに近い。RTX 3090 Tiに対するRTX 4080の性能は9%〜19%上といったところ。Fire Strikeが最も上げ幅が小さかったが、その他のテストでは17〜19%程度と安定して高い。
一方、RTX 3080に対しては、約17%(Fire Strike)〜56%(Speed Way)とより大きくなる。RTX 3080ユーザーの移住先としては、RTX 4080はかなり良好な選択肢(価格的にどうかは別だが)といえる。ここにDLSS FGやAV1エンコード等の要素が上積みされる点も忘れてはならない。
消費電力はRTX 3080並だった
ゲームの検証に入る前に、消費電力もチェックしておきたい。RTX 4090は驚異的な性能向上を果たしたが、消費電力も大幅に増えてしまった。しかし、RTX 4080ではRTX 3080と同じTGP 320W設定(FEの場合)である。
まずはラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を用い、システム全体の消費電力を計測した。アイドル時はシステム起動10分後の安定値、高負荷時は3DMark Time SpyのGraphics Test 2実行中のピーク値となる。
RTX 4090 FE(TGP 450W)が690W、さらにRTX 3090 Ti(TGP 480W)が722Wととてつもない消費電力を叩き出している。なお、総合的な消費電力が大きいのはCPUが高消費電力なためもある。一方で、RTX 4080 FEと3080 FEは550W強で済んでいる。
どちらもTGP 320Wのカードなのだから消費電力が並んでいて当然なのだが、こうして見ると設計通りの動作になっている事が確認できたわけだ。RTX 3080 FEと同じ消費電力なのに、RTX 4080 FEは最大50%ものパフォーマンス向上を果たしている(DLSS抜きで、の話)。ワットパフォーマンスにおいて大きな進歩である点は評価すべきだろう。
そこで今回の検証では、前回のRTX 4090 FEレビュー以上にワットパフォーマンスに注目していきたい。幸い筆者が検証に使用しているフレームレート計測ツール「CapFrameX」には、計測中のGPU Powerも記録することができる(NVIDIAの「FrameView」も同様)。だがそのGPU Powerなる情報は、本当に実際の消費電力、すなわちTBP(Total Board Power)を反映しているかをいまいちど確認しておく必要がある。
そこでNVIDIAの電力計測ツール「PCAT」で計測できるTBPの実測値と、「HWiNFO Pro」で拾えるGPU Powerを突き合わせてみることにした。無論HWiNFOとCapFrameXはまったく別のツールだが、GPUのセンサー情報取得には同じAPIを経由していると考えられるため、両者が見ているデータも基本的に大差ないと考えられる。そのうえで、PCATとHWiNFOでどの程度乖離しているのか把握しておこう、というわけだ。
今回の検証は「Cyberpunk 2077」をプレイ状態で15分程度放置し、その間の消費電力をPCATとHWiNFO Proで追跡する。Cyberpunk 2077は解像度4K、画質は“レイトレーシング:ウルトラ”をベースにDLSSを明示的にオフにしている。
PCATは8ピン補助電源3系統までしか計測できないため、8ピンを4系統使うRTX 4090 FEの正確な値を計測するには向かないのだが、RTX 4090 FEは8ピン3系統でも動作し、性能的にも4系統接続時と変わらない(4系統接続時にPower Limitのヘッドルームが上がるだけ)ため、この検証のみ3系統接続で検証している。
これを見ると、ほとんどのGPUでPCATを使った実測データのほうが、平均値においてGPU Powerより20W程度高い。ただ、RTX 4080 FEの差は6W程度でPCATの実測値とさほど差がない。理由は不明だが、HWiNFOやCapFrameXで取得できるGPU Powerの観測データは、厳密性はないものの参考にはなると考えてよいだろう。PCATのデータと連動させれば済む話だが、それは時間的余裕のない今回では使えなかった、とご理解頂きたい。
「Rainbow Six Siege」はワットパフォーマンスが劇的に改善
ここより先は実ゲームにおけるフレームレート検証となる。ゲーム内ベンチマーク機能の有無に関係なく「CapFrameX」を用いて実フレームレートだけをチェックする。
まず「Rainbow Six Siege」では、APIにVulkanを選択。画質“最高”にレンダースケール100%を追加した。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
描画負荷が軽いため、RTX 4090 FEとRTX 4080 FEの差は極めて小さい。フルHD時のみ平均フレームレートで30fps程度差が付いているが、全体から見ると5%程度。WQHD→4Kと解像度を上げると差がほぼゼロになるのは、GPU以外の部分がボトルネックになっていると思われる。
RTX 30シリーズとの差はフルHDでは誤差の範囲だが、解像度が高くなると拡大する。特にRTX 3080 FEと比較した場合、WQHD以上ではRTX 4080 FEが40%程度上となる。
続いてはフレームレート計測時にCapFrameX上で観測されたGPU Powerの比較だ。ここでは平均値と最大値に着目している。解像度を変えるとGPU負荷も変わってくるので、解像度別にまとめている。
負荷の低いフルHDではフレームレートに大差はないが、逆にGPU Powerでは大きな差がついている。RTX 3080 FEがフルHDで定格TGPの97%程度のGPU Power(312W)で仕事をして平均524fpsを出しているところを、RTX 4080 FEは平均191Wで539fpsを出しているのだ。解像度が上がるとRTX 3090 Tiは450W前後で仕事をするようになるが、RTX 4080 FEでは280W前後でRTX 3090 Ti以上のフレームレートを出せる。
前掲のシステム全体の消費電力データを見てしまうと、Ada Lovelace世代のGeForceは電力バカ食いのイメージがあるが、Rainbow Six Siegeのように負荷の軽いゲームであれば、フルで回してもワットパフォーマンスは良好ということになる。
そこで解像度別の平均フレームレートをGPU Powerの10分の1で割り、GPU Power 10Wあたりが稼ぎだしたフレームレートを比較した表が次の図となる。
Ampere世代に対し、Ada Lovelace世代のワットパフォーマンスはざっと1.6倍〜1.9倍程度と見積もることができる。無論これはゲームの描画負荷に連動するので、あくまでRainbow Six Siegeの場合だ。それを踏まえても、RTX 4080 FEはRTX 3080 FEよりも完成度が上がっている。値段があれだけ高ければ当然なのだが、技術の進歩をしっかりと感じ取れる。
RTX 3080 FEの最大1.5倍の フレームレートを出した「Overwatch 2」
「Overwatch 2」では、画質“エピック”を選択し、レンダースケール100%、フレームレート上限600fps、FSR 1は無効とした。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。
Overwatch 2は画質設定を下げると低スペックGPUでも結構回る印象があるが、エピック設定まで盛りFSR 1を無効化するとそこそこの重さになる。その証拠に、RTX 4080 FEはフルHDの段階でRTX 4090 FEの約18%下、4Kにもなると約32%下まで拡大する。
また、RTX 4080 FEとRTX 3090 Tiとは4Kでほぼ差がなくなるが、RTX 3080 FEとではRTX 4080 FEのほうが最大で40%程度上の性能になる。Ada Lovelace世代とAmpere世代の同ランクと比較(3080なら4080)した場合、性能はAmpere世代の1ランク以上上に相当するといったところか。
フレームレート計測中のGPU Powerを比較すると、Rainbow Six Siegeと異なりRTX 4090 FEや4080 FEの消費電力が増えている。だが、RTX 4090 FEは4Kになっても平均406W止まりだし、RTX 4080 FEも301Wと定格より低めだ。
これは、描画負荷がRainbow Six Siegeより高いためGPUはそれなりに働いているが、まだフルパワーと言える状態ではない、ということを示している。しかし、RTX 3090 Tiや3080 FEはWQHDの時点で定格TGPに近い値を出しており、フルロードに近い状態での運用になっているようだ。
10Wあたりのフレームレートを求めてみると、RTX 4080 FEはわずかにRTX 4090 FEよりもワットパフォーマンスが高く、RTX 3090 Tiに対してはフルHD時でほぼ2倍、解像度が高くなるとRTX 4080 FEもそれなりに働くため1.7倍程度になる。ただ、RTX 3080 FEと比較するとRTX 4080 FEは最大1.67倍(フルHD時)に縮まる。
「Call of Duty: Modern Warfare II」では RTX 4090 FEとの差が大きくなる
今年リブート版が出た「Call of Duty: Modern Warfare II」も試してみた。画質は“極限”に設定し、ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
RTX 4090 FEと4080 FEの力関係はOverwatch 2に近いものがある。その一方で、RTX 4080 FEは旧世代のRTX 3090 Tiや3080 FEをさらに引き離した。RTX 4080 FE対3080 FEに注目すると、Overwatch 2では解像度が高くなるほどフレームレート格差が小さくなるのに対し、こちらは解像度が高くなるほどフレームレート格差が広がっている。
こちらもフレームレート計測中のGPU Powerを見てみる。RTX 4080 FEにとっては、このベンチマークの描画負荷はGPU Powerを全力運転するには至らないようだ。解像度が低いほどGPUが遊んでいる傾向が見て取れる。RTX 30シリーズもフルHDやWQHDでは同傾向が見られるが、遊びの比率はせいぜい10%程度にとどまる。
RTX 3090 Tiや3080 FEに対し、RTX 4080 FEのワットパフォーマンスはおよそ1.63倍〜1.94倍というのはOverwatch 2と似た結果といえる。RTX 4090 FEのワットパフォーマンスがRTX 4080 FEより明らかに高いのは、GPUの処理負荷がより高いことを裏付けるものだ。
CPUに強烈なボトルネックがありそうな 「Marvel's Spider-Man Remastered」
「Marvel's Spider-Man Remastered」では、レイトレーシングを含む全画質設定を最高設定とし、アンチエイリアスはTAAを選択。マンハッタンのマップ内を移動する際のフレームレートを計測した。RTX 40シリーズリリース後、早々にDLSS FGに対応したゲームではあるが、DLSSを利用した検証はひとまず脇に置いておく。
RTX 4090 FEの検証でも、フルHDでは差がほとんど見られなかったゲームだが、今回も同様の結果が見られた。フレームレートのはこれまで観測された各GPUの序列通りだが、解像度が低いと数fpsしか差がでない。レイトレーシングの反射を計算する処理において、反射の範囲を決める設定を高くするとCPU側がボトルネックになるため、結果として差が小さくなるようだ。
解像度が高くなるとGPU側にボトルネックが移るため、格差は広がる。特にRTX 3080 FEは4Kで大きくフレームレートを落としているが、これはVRAM不足も一因と考えられる。RTX 4080の16GBという仕様に不満が無いわけではない(特にRadeon RX 7000シリーズの発表を見た後では……)が、16GBになったことで4Kでもより安心してゲームの設定を盛れるようになったといえる。
Marvel's Spider-Man Remasteredの画質を最大限に盛ると、GPUではなくCPUにボトルネックが発生することの裏付けが上の表だ。どのGPUも定格TGPよりも低いGPU Powerで動作しているが、特にAda Lovelace世代のRTX 4090 FEと4080 FEに関してはフルHDなら200W以下の仕事しかしていないのだ。Ampere世代のRTX 3080 FEも余力を残してはいるが、定格TGPに対するGPU Powerを考えるとフルロード2歩から3歩手前といったところだ。
GPU Power 10Wあたりのフレームレートを見ると、GPUは回っていないが、RTX 4080 FEは依然として高いワットパフォーマンスを出せている。Ampere世代の2倍という結果は十分評価すべきである。
まだまだゲーム検証は折り返し地点
技術的トピックネタを省略してもなお結構な文字量となってしまった。そろそろ前編はこの辺にして後編に繋ぎたい(筆者と編集担当が共倒れになるのを防ぐ意味もある)。 後編ではDLSS SRやDLSS FGのパフォーマンス検証も予定している。
(後編のリンク:新DLSSでフレームレート爆増!GeForce RTX 4080 FE速報レビュー【後編】)
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