新DLSSでフレームレート爆増!GeForce RTX 4080 FE速報レビュー【後編】
ASCII.jp / 2022年11月15日 23時0分
本稿は2022年11月16日23時(日本時間)販売されるAda Lovelace世代の「GeForce RTX 4080」レビューの後編となる(前編はこちら)。検証はNVIDIAよりお借りしたFounders Edition(以下、RTX 4080 FE)で実施した。前編の検証では、Ampere世代のGeForce RTX 3090 Ti(以下、RTX 3090 Ti)やGeForce RTX 3080 Founders Edition(以下、RTX 3080 FE)と比較して、解像度4Kで1.5倍程度のフレームレートを出すこともあったが、フルHDでは大差ないこともあった。
しかし、ベンチマーク中の消費電力(GPU Power)はAmpere世代よりも圧倒的に低いケースも観測されただけでなく、ワットパフォーマンスで見た場合、旧世代の最大2倍に到達するデータも得られた。今回はさらにゲームの検証を続け、RTX 4080 FEの実力を明らかにしていきたい。
前編とテスト実施時期が同じなので、検証環境は前回と同一だ。上記GPUのほか、GeForce RTX 4090 Founders Edition(以下、RTX 4090 FE)とも比較している。ReSizable BARやSecure Boot、コア分離(VBS)やHDR等の要素はすべて有効化している。
VRAM搭載量でRTX 3080を圧倒した「Cyberpunk 2077」
では、ベンチマークを再開しよう。各ゲームにおけるフレームレート計測では、すべて「CapFrameX」を利用して実施している。これは、GPU側で推測して描画するDLSS 3で搭載された新機能「DLSS Frame Generation」(以下、DLSS FG)はこの方法以外に評価できないため、手法を統一した。
「Cyberpunk 2077」は、今回もDLSS FGテスト用βビルドを使用する。画質は“レイトレーシング:ウルトラ”をベースに、DLSS Super Resolution(DLSS SR)は明示的に無効化。またHDRはDLSS FG検証用ビルドの制約から無効としている。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
ただでさえ重いCyberpunk 2077の描画負荷が、レイトレーシングによりさらに重くなるため、CUDAコアモンスターであるRTX 4090 FEが最も輝いている。RTX 4080 FEはRTX 4090 FEに対し、フルHD時で約21%、4Kにもなると約31%も下になる。逆に旧世代に対しては、フルHDでもしっかりと差を付けている。特にRTX 3080 FEに対しては、RTX 4080 FEは約1.44倍〜3.22倍という高いポジションにある。4KでRTX 3080 FEが息切れするのはVRAM不足が原因だろう。
前編では、PCATで計測したTotal Board Power(TBP)とHWiNFO Proの「GPU Power」にどれくらいの差があるのか、Cyberpunk 2077を4Kでプレイ中のデータで計測した。Ada Lovelace世代のGeForceは、前編で紹介したGPU Powerに近い値が得られた一方で、RTX 3080 FEのみ大幅に低い平均230W(前回は約280W)となった。その理由は、ベンチマークシーンではVRAM不足によりGPU側の描画処理が滞り、結果として“GPUが仕事をサボっている”状況にあるためと考えられる。
ワットパフォーマンスは、RTX 4090 FEとRTX 4080 FEはほぼ同程度で、RTX 3090 TiとRTX 3080 FEに大きく差を付けているのがわかる。
上の図でRTX 3080 FEの4Kでは仕事ができずにGPU Powerが下がってしまったが、結果としてRTX 4080 FEのワットパフォーマンスはRTX 3080 FEの最大約2.59倍に到達した。4K&最高画質でのプレイを目指すのであれば、RTX 4080はRTX 30シリーズよりもワットパフォーマンスに優れた選択といえる。
「アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション」 でもワットパフォーマンスほぼ2倍
「アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション」では、最高画質に設定。このゲームはボーダーレスウインドー表示がデフォルトであるため、デスクトップの解像度を変更して解像度を調整している。シナリオ「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」のチャプター10開始直後から一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
Cyberpunk 2077ほど旧世代GeForceが失速していないが、序列としては変わっていない。4KにおけるRTX 4080 FEと4090 FEを比較すると、25%程度RTX 4080 FEのほうが低くなっている。それでも常時70fps以上をキープできているのだから、性能的には十分といえるだろう。
ベンチマーク中のGPU Powerは、どの解像度設定においても、それぞれのGPUのTGPより低い値が観測された。GPUが遊ぶように作られているのか、もしくはゲーム処理のどこかでCPUがボトルネックになっているのかまでは不明だ。常時ボーダーレス表示なので性能的にも不利なのかもしれない。
10Wあたりのフレームレートでは、解像度が低いほうが旧世代との差が大きくなる傾向があるが、消費電力がもともと大きいRTX 3090 Ti(のファクトリーOCモデル)に対しては、コンスタントに1.8倍〜2倍のワットパフォーマンスを出せている。
4Kで60fpsが厳しい「A Plague Tale: Requiem」
「A Plague Tale: Requiem」では最高画質に設定。新ゲーム開始後、最初のカットシーンをスキップした後から、一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
グラフィック描画が濃密なだけあって、RTX 4080 FEの平均フレームレートはフルHDで130fps程度、4Kになると平均60fpsを出すことも難しくなる。4Kで唯一平均60fpsを超えたのはRTX 4090 FEだけだ。無論、このようなゲームは、DLSS SRのような負荷を軽減する技術が必要だが、さらにこのゲームではDLSS FGにも対応している。この辺りについては後ほど検証しよう。
Ada Lovelace世代のRTX 4090 FEと4080 FEのGPU Powerは、各GPUのTGPよりも低い。特にフルHDやWQHDでは全力を出し切れていないようだ。その一方で、Ampere世代のRTX 3090 Tiや3080 FEはそれぞれのTGP限界をほぼ使い切っている。フレームレートが出ない理由において、新旧GeForceで微妙に理由が違うのかもしれない。
より少ない電力消費で高いフレームレートを出せるAda Lovelace世代のGeForceは、10Wあたりのフレームレートも高い。Ampere世代のGeForceはAda Lovelace世代の半分とまではいかないが、低めのワットパフォーマンスになっている。
「Forza Horizon 5」ではGPUが遊んでいる?
「Forza Horizon 5」では画質“エクストリーム”に設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。この検証ではFSR 2やDLSS SRに初対応したバージョンを利用している。
GPUの序列が特に変わっているわけではないが、上位GPUと下位GPUの差は比較的小さい。RTX 4080 FEは、4K環境でRTX 3090 Tiの1.24倍、RTX 3080 FEの1.48倍のフレームレートを出しているので優位性は確認できたが、強烈に速いという印象はない。
GPU Powerを見ると、Forza Horizon 5であまり回っている感がない理由が表れている。RTX 4080 FEではフルHDだと200W弱、4Kでも平均250W前後しか使っていない。つまり、GPU自体がフルパワーで仕事をしていないと考えることができる。RTX 3090 Ti以下のGeForceでも消費電力は少なめだが、RTX 40シリーズに比べると消費電力が大きく、それなりに頑張っていることが示されている。
GPUがあまり仕事をさせてもらえない設計のようだが、10Wあたりのフレームレートという観点では、RTX 4080 FEは5fps〜9fps出せている。RTX 30シリーズから見れば2倍近い値だ。
「F1 22」でも圧倒的な強さをみせる
「F1 22」では画質“超高”に設定。異方性フィルタリングは16x、アンチエイリアスは“TAA+FidelityFX”とし、ゲーム内ベンチマーク(条件は“モナコ”+“ウエット”)再生中のフレームレートを計測した。今回はDLSS FG対応のβビルドを使用しているが、βビルドの制約からHDRはオフにして検証している。
フルHDでは上位3モデル(RTX 4090 FE〜RTX 3090 Ti)の差は小さいが、解像度が上がるごとに差が開く。4KではRTX 4080 FEは3080 FEの1.5倍以上の平均フレームレートを出せるが、レイトレーシング処理のせいか60fpsキープは難しい。
DLSS SRの助けなしに60fpsプレイを確実にしたい人は、RTX 4090を選ぶほうが幸せになれそうだ。ただ、F1 22はDLSS FGに対応予定だ。DLSS FGを利用して、RTX 4080を選ぶ選択肢もアリかもしれない。
どのGPUもTGPの限界までは使い切れていないようだが、RTX 30シリーズよりも、RTX 40シリーズのGPU Powerの低さが目立つ。
10Wあたりのフレームレートでは、次に紹介するMicrosoft Flight Simulatorに次ぐ程度の重さ(=負荷のかからなさ)といえる。RTX 30シリーズに対しては1.57倍〜1.8倍程度のワットパフォーマンスといえる。
4Kになったら突然覚醒した「Microsoft Flight Simulator」
「Microsoft Flight Simulator」はAPIにDirectX 12を、画質は“ULTRA”、アンチエイリアスは“TAA”に設定。ランディングチャレンジ“シドニー”で一定時間飛行した時のフレームレートを計測した。カメラは常時機外後方に固定している。すでにDLSS FGに対応したビルドが正式リリース済みだが、テスト時期の関係で今回もRTX 4090 FEレビュー時と同じβビルドを利用している。
RTX 4090 FEのレビューで判明した通り、Microsoft Flight Simulatorのフレームレート天井は割と低めで、今回の検証環境では80fpsあたりで頭打ちになる。フルHDでは負荷が軽すぎるのか、RTX 4080 FEがRTX 3090 Tiに微妙に負けるシチュエーションも観測された。
4KになってようやくGPUの序列がフレームレートに表れてくる。Microsoft Flight SimulatorでRTX 40シリーズのポテンシャルを十全に引き出すには、DLSS FGの利用が欠かせないようだ。
RTX 4080 FEではフルHDでは200W以内、4Kでようやく300Wを超える程度の電力しか使っていない。Vsyncを無効化してこの程度なので、明らかにCPU側にボトルネックがあることが分かる。
また、GPU Power 10Wあたりのフレームレートを見ると、RTX 4090 FEとRTX 4080 FEのワットパフォーマンスはほぼ同じといってよさそうだ。
DLSS SRとDLSS FG適用時のパフォーマンスは?
ここまでの検証は、すべて画面の描画負荷を減らすDLSS SRを使わない設定で行った。次はDLSS SRを利用した際のフレームレートを検証するとしよう。
まずはDLSS SRだけに対応したゲームで検証する。解像度は4Kのみ、DLSS SRはすべて“パフォーマンス”設定に統一した。それ以外の画質設定やフレームレート計測方法は前掲の検証と同一である。
Call of Duty: Modern Warfare IIとアンチャーテッド トレジャーハンターコレクションに関しては、通常のレンダリング時よりも1.6倍から1.8倍程度のフレームレート上昇が確認できるが、その中でもRTX 4080 FEが他のGPUに比べてわずかに伸びているようだ。
しかし、Forza Horizon 5では、6%〜15%程度しかフレームレートが伸びなかった。DLSS SRに対応したものの、CPU側がGPUを使い切れていないのだ。これはゲームの設計の問題かもしれないが、少なくともForza Horizon 5においては、DLSS SRはあまりメリットが得られないと考えられる。
ここより先は、DLSS FG対応ゲームでの検証となる。RTX 4090 FEとRTX 4080 FEでフレームレートの伸び方に違いがあるのかに注目したい。旧世代GeForceはDLSS SR適用時のデータのみ記載している。ここでも解像度は4Kのみ、画質設定や計測方法は前掲の通りである。
※お詫びと訂正:記事掲載時、Marvel's Spider-Man Remasteredのグラフを誤って掲載していました。記事を訂正してお詫びします。(2022年11月17日)
これらのゲームでは、DLSS FGの効果は絶大だ。特に描画負荷の高いCyberpunk 2077では、DLSSなしの時のフレームレートに対し最大約3.9倍(RTX 4080 FEの場合)に到達。伸び率から言うと、約3.5倍のRTX 4090 FEよりもDLSS FG利用時のフレームレート上昇率が高い。
ちなみに、最も伸びたのがRTX 3080 FEでDLSS SRを使用した時の約5.8倍だが、これはDLSSなしだとVRAMが不足してパフォーマンスが全然出なかったところが、DLSS SRで内部解像度が半分になったことでVRAM不足によるボトルネックが解消。結果として著しいパフォーマンスゲインになったと考えられる。
DLSS FGを含むDLSS 3はゲーム側への対応が必須であるが、先月のRTX 4090リリースから1か月程度で9本のタイトルがDLSS 3に対応している(NVIDIA談)。今後登場するRTX 40シリーズの下位モデルが出るころには、さらに採用タイトルが増えることを期待している。
ゲーム中の動作クロックや熱もチェック
最後にゲーム中の動作クロックや各部温度をチェックして〆としたい。検証条件は前編で紹介した消費電力テストと同じで、Cyberpunk 2077の4K+“レイトレーシング:ウルトラ(DLSS SR無効)”設定である。各種データの追跡には「HWiNFO Pro」を使用した。
GPU温度が最も低かったのはRTX 3090 Tiとなっているが、今回検証に使用したカードは、AIO水冷仕様のハイエンドモデルだからである。空冷仕様のカード3枚のうち、最も温度が低かったのがRTX 4080 FE、続いてTGP 450W設定のCUDAコアモンスターRTX 4090 FEと続く。RTX 4080 FEのGPU温度はゲームでガンガン負荷をかけても60℃台前半なのは優秀だが、3スロット厚の巨大なカードであることを考えると、むしろ当然ともいえる。
一方、VRAMジャンクション温度はRTX 4080 FEが最も冷えていた。RTX 4080 FEのGDDR6XのデータレートはRTX 4090 FEよりも高く設定されているが、GPUのTGPが抑えられているぶんなのか、VRAM温度も下がっていると考えられる。RTX 4090 FEレビュー時に、GDDR6Xは従来のGDDR6Xよりも発熱量が抑制されているとNVIDIAは主張しているが、今回のカードでも同様の設計が盛り込まれているようだ。
RTX 4080 FEとRTX 4090 FEのクロックを比べると、やや(30MHz〜50MHz程度)RTX 4090 FEが高いが、RTX 4080 FEのクロックの変動幅はRTX 4090 FEよりもずっと大きい。この辺がTGP 450Wと320Wの差といえるだろう。RTX 3080 FEから見ると500MHz程度クロックが向上しているのは、プロセスルールの微細化の賜物だろう。
値段は高いが、RTX 30シリーズから見ると ワットパフォーマンスが激増
以上でレビューは終了だ。21万9800円よりからという“かなり良い値段”設定な割に、ゲームのチョイスや画質設定によってはRTX 3080+α程度になる場合もあるが、フレームレートが50%以上伸びた例もあり、さらにAmpere世代よりもワットパフォーマンスが格段に良い点は評価できる。
だが、ビデオカードに22万円以上出そうと考えるマニアにとって、RTX 4080はやや中途半端に映るのではないかと筆者は感じている。あと数万円上乗せすれば“これ以上強いGPUはない”という内なる平穏を得られるRTX 4090に手が届く。
ただ、RTX 4080はTGPが320W(ファクトリーOCモデルではもう少し増えるだろうが)と扱いやすいため、今GeForceユーザーコミュニティーで話題になっている12VHPWR焼損問題もそう出ないと思われる。扱いやすさと安定性のRTX 4080をとるか、それとも最強のRTX 4090を手にし内なる平穏を得るか、のどちらかだ。
また、来月になればRDNA 3世代の「Radeon RX 7000シリーズ」の販売がグローバルで開始される。スペック的にRadeon RX 7900 XTXとRTX 4080は真っ向からぶつかることになるだろう。ドルベースの価格競争では明らかにRX 7900 XTXが強いが、RTX 4080にはDLSS FGがあり、すでに現時点で対応ゲームも続々と投入されている(AMDのFSR 3は来年投入だ)。
次世代ハイエンドGPUバトルの展開に心臓が高鳴りっぱなしなのは、カフェイン摂り過ぎの筆者だけではないはずだ。
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