クアルコム、AIとカメラ性能を大幅に向上させたスマホ用SoC「Snapdragon 8 Gen 2」を発表
ASCII.jp / 2022年11月16日 22時0分
クアルコムのフラッグシップSoC Snapdragon 8 Gen 2搭載モデルがはやくも年末に登場予定
クアルコムは、15~17日の3日に渡り、米ハワイ州でSnapdragon Summitを開催中だ。初日にあたる15日には、基調講演を開催。「Snapdragon 8 Gen 2」を発表した。Snapdragon 8シリーズは、ハイエンドモデルに採用されるチップセット。昨年の同イベントで命名ルールを改め、性能を表す1ケタの数字の後に、世代がつけられるようになった。Snapdragon 8 Gen 2は、その2世代目のチップセットだ。
最大の特徴とも言えるのが、DSP(Digital Signal Processor)のHexagonを強化し、AIのパフォーマンスを向上させたこと。「Snapdragon Smart」と名づけたAI機能は、全体で最大4.35倍の高速化を実現した。高速な処理による推論を可能にした「INT4」(整数演算を4ビットで行ない、処理を軽量化する仕組み)を初めてサポート。消費電力あたりでのパフォーマンスは、60%向上したという。
推論を強化したことで、自然言語の処理能力が向上。リアルタイムの文字書き起こしや、翻訳といったアプリケーションを実装しやすくなる。イベントでは、シャオミがこの機能を活用し、端末上でリアルタイム翻訳をする様子をビデオで紹介。担当者は「シャオミの新しいフラッグシップスマートフォンでも、プラットフォームの潜在能力を生かしたアドバンテージを活用していきたい」と語っており、今後発表される同社の端末に、近い機能が搭載される可能性もありそうだ。
強化されたHexagonは、カメラの映像を処理するISP(Image Signal Processor)とも連携。AIを活用することで、リアルタイムのセマンティックセグメンテーションに対応する。セマンティックとは、「意味」のこと。被写体をその役割に応じて分割し、それぞれに最適な処理を施すことで、写真の仕上がりを向上させる。たとえば人物と風景を分離したり、顔の中で目と肌と髪の毛を分離するといったことがこれに当たる。クアルコムのプロダクトマネジャーによると、「空はより青く、草木はより緑にできる」。
ただ、写真を各要素に分解したあと、最適な処理を施す機能はさまざまなスマートフォンに搭載されている。実際、チップセットにNeural Engineを採用したiPhoneはもちろん、Tensorを搭載するPixelシリーズでもこうした処理方法は取り入れている。Snapdragon 8 Gen 2にセマンティックセグメンテーションは、その処理をリアルタイムで行なうところに強みがある。ビデオ撮影に対応しているのは、そのためだ。
ISPそのものだけでなく、センサーとの連携も強化している。昨年の同イベントでは、クアルコムとソニーセミコンダクタソリューションズとジョイントベンチャーの設立を発表していたが、その成果がSnapdragon 8 Gen 2に取り込まれている。具体的には、ソニーの「IMX 800」(1/1.5インチ)と「IMX 989」(1インチ)がSnapdragonに最適化。「Quad Digital Overlap HDR」と呼ぶ、空間と時間それぞれをずらした2枚ずつの写真、計4枚の写真を合成する新しいHDRに対応する。
基調講演後のイベントに登壇したソニーセミコンダクタソリューションズ モバイルシステム事業部 副事業部長の御厨道樹氏によると、従来のHDRよりも合成によるノイズを削減できるという。また、クアルコムとの「システムレベルでの最適化を行なった」結果、カメラ切り替えによるズームの低消費電力化を実現。利用していないカメラを低フレームレートで待機させておくことで、これを可能にした。
Snapdragon 8 Gen 2は、ソニーに加え、サムスン電子の超高画素センサーもサポートする。新たに対応するのが、200メガピクセル(2億画素)の「ISOCELL HP3」(1/1.4インチ)。周囲の光量に応じて12.5メガピクセル(1250万画素)、50メガピクセル(5000万画素)、200メガピクセル(2億画素)を切り替えられるピクセルビニング技術に対応しており、クアルコムによると、こうした機能もSnapdragonに最適化されているという。
AIを活用しているのは、カメラだけではない。Snapdragon 8 Gen 2に統合された、モデムの「Snapdragon X70 5G」もAIでその性能を向上させている。同モデムは、2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelonaに合わせて発表されたもの。AIで伝搬路情報の最適化をすることで、スループットを向上させることができるのが特徴だ。
また、より電界強度の弱い電波を安定してつかめるようになるため、エリアが拡大したような効果も得られる。スペック的には、デュアルコネクティビティ(DC)に対応しており、ミリ波とSub 6の組み合わせで下り最大10Gbpsを実現。上りのDCも可能で、こちらの理論値は最大3.5Gbpsとなる。5G-5Gや5G-4GのDSDA(デュアルSIM/デュアルアクティブ)もサポートする。
ゲーミングで注目したい新機能が、GPUの「Adreno」が採用したリアルタイムレイトレーシング。光の屈折や反射などシミュレートすることで、現実さながらの映像を作り出す技術だが、これにモバイルプラットフォームとして初めて対応する。
CPUにはクロック周波数の高い「Primeコア」が1つと、高負荷な処理をする「Performanceコア」が4つ、さらに省電力性能の高い「Efficiencyコア」を3つ搭載する。PrimeコアはArmの「Cortex-X3」で3.2GHz。Performanceコアは2.8GHz、Efficiencyコアは2.0GHzと、いずれもSnapdragon 8 Gen 1に搭載されたKryoから、性能が底上げされている。コアの構成もPerformanceコアが3つから4つに、Efficiencyコアも4つから3つに変更された。
Snapdragon 8 Gen 2を搭載したスマートフォンは、年末から登場する予定だ。Snapdragon Summitの基調講演では、ソニーやシャープといった日本メーカーに加え、OPPO、Xiaomi、Motorolaなど、日本でおなじみの海外メーカーの名前も挙がっていた。日本で発売される端末が登場することにも期待したい。
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