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クアルコム「Snapdragon 8 Gen 2」発表 20万円クラスのスマホは何が変わるのか

ASCII.jp / 2022年11月18日 9時0分

 クアルコムは2022年11月15日(現地時間)より、毎年恒例のイベント「Snapdragon Summit」をアメリカ・ハワイ州マウイ島で開催。フラグシップスマートフォン向けチップ「Snapdragon 8 Gen 2」を発表した。

 すでにASUS Republic of Gamers(ROG)、HONOR、iQOO、モトローラ、nubia、OnePlus、OPPO、REDMAGIC、Redmi、シャープ、ソニー、vivo、シャオミ、XINGJI/MEIZU、ZTEなどが採用を発表。年内中にも搭載した新製品が登場する見込みだ。

注目はAI他言語翻訳機能

 Snapdragon 8 Gen 2が発表されたことで、2023年のスマートフォンにおけるトレンドが予見できるようになってきた。昨今、各社が注力しているAI、カメラ、ゲーミング関連の進化がかなり期待できそうだ。

 Snapdragon 8 Gen 2ではAI関連の処理技術を「Snapdragon Smart」という総称でまとめている。今回、搭載されたHexagonプロセッサーではマイクロタイル推論やアクセラレーターとの組み合わせにより、最大4.35倍の処理向上を果たしている。

 なかでも注目は多言語翻訳だ。

 喋った英語から中国語、スペイン語、日本語などを同時にテキストで翻訳していく。オンラインでのクラウド処理ではなく、スマートフォンのなかで翻訳をかけていくというのが特徴だ。

 すでにデバイス上での翻訳はGoogle PixelによるTensorの音声レコーダーが有名だが、Snapdragon 8 Gen 2では同等以上、多言語翻訳ができるとアピールしている。

 今後、Snapdragon 8 Gen 2を活用した翻訳アプリなどが登場してくることだろう。

カメラは暗所撮影が強くなる

 カメラ関連では「Snapdragon Sight」として、AIニューラルネットワークが強化されている。

 被写体の顔や髪、メガネ、服、空、地面などを識別し、それぞれに最適な処理を施す「セマンティックセグメンテーション」ができるようになる。すでにAQUOS Sense 7でも採用されているが、AIにより、被写体のそれぞれに最適化された画像処理がこれから一般的になりそうだ。

 カメラ関連の取り組みとして、クアルコムはソニーと1年ほど前に協業を発表していたが、今回、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した「クアッドデジタルオーバーラップHDR」という技術がSnapdragon 8 Gen 2に向けてチューニングされている。

 4つの画素のうち、2つが短露光と長露光で撮影して空間的な認識をして、さらに2つの画素が時間をずらして同様の撮影をする。それらをSnapdragon 8 Gen 2が重ね合わせる処理をすることで、暗い部分でもノイズが出にくい映像に仕上がるという。

カメラのセンサー開発もSnapdragon仕様に

 スマートフォンにおいて、カメラ機能は各メーカーが最も注力しているポイントだ。ただ、チップはクアルコム、イメージセンサーはソニー、OSはグーグルという組み合わせの場合、それらを最適化させて画質を上げるというのは各メーカーとしても相当、苦労していると言われている。

 あるメーカー関係者は「Snapdragonの型番が変われば、画作りもやり直していくことになる。メーカーとしてノウハウの蓄積もあるが、それとは別に苦労することも多い」とぼやく。

 一方、iPhoneのアップルは、イメージセンサーこそ別のメーカーが手がけているが、チップ、OS、ハードウェアなどほとんどのアップルが設計する「垂直統合型」でものづくりをしている。

 Android陣営としてもメーカーがバラバラの水平分離型ではアップルのカメラ画質に対等な戦いを挑めないとあって、クアルコムとソニーはラボをつくるなどして、開発段階からSnapdragonにチューニングしたイメージセンサーの開発に着手したというわけだ。

 ただし、クアルコムはソニーだけでなく、サムスン電子の2億画素のイメージセンサーにも注力しているし、一方のソニーもクアルコムだけでなく、MediaTekとも友好関係を築いている。水平分業でありながら、イメージセンサーとISPの開発で緊密になることで、画質の向上を狙っているようだ。

 また、ソニーとクアルコムのようにイメージセンサーがSnapdragonにチューニングされるようになると、採用するスマートフォンメーカーも開発の負担が下げられるようになるという。採用するメーカーにとっても、開発の負担を下げつつ、画質を上げる効果が期待できるというわけだ。

ハイエンドは売れないが続けざるを得ない

 一方、ゲーム関連の「Snapdragon Elite Gaming」では、光のあたり方が進化し、水や鏡での反射や光による明るい部分と影の部分の表現力が向上する。さらに電力効率も上がるようになるとのことだ。

 通信関連ではAIを活用した5G通信の速度アップやつながりやすさの改善が期待できる。また、Wi-Fi7の対応や5G+5G/4G Dual-SIM Dual-Activeをサポートする。

 来年も着実に進化するハイエンドスマホであるが、やはり気になるのが価格帯だ。日本では円安の影響もあって20万円を超えるのも珍しくなくなってきた。

 実際のところ、iPhoneを含めた販売シェアにおいてもAndroidのハイエンドスマホは1割にも満たない台数だと言われている。

 大半がSnapdragonの7や6シリーズを中心とした、5万円以下のスタンダードやエントリーモデルばかりが売れている状況だ。

 メーカーとしては、売れ筋のエントリーモデルだけを販売すればコスト構造も改善し、収益も安定するのだが、それだけではジリ貧に終わってしまう。

 ハイエンドモデルで最新の技術を取り入れる一方で、そのノウハウを生かして、エントリーモデルの性能も引き上げていくというのがメーカーとしての勝ちパターンといえる。

 例えば、シャープではAQUOS R7で培った画像処理技術などをAQUOS sense7に生かすことで、価格は抑えつつ、他社を出し抜くカメラ性能を提供するということが可能となっている。

 各社とも自社のブランドイメージやポジションを築くため、なかなか台数が稼げないとわかっていても、ハイエンドスマホを続けていかざるを得ないのだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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