【写真家レビュー】マクロと30倍ズーム搭載 Pixel 7 Proは処理能力が向上、グーグルAIの底力を感じる
ASCII.jp / 2022年11月23日 12時0分
2021年にPixel 6 Proを数ヵ月に渡って試用してレビューしたが(「カメラ機能を重視するなら「Pixel 6 Pro」は有力な選択肢【写真家 鹿野貴司レビュー】」「写真家 鹿野貴司「Pixel 6 Pro」テストレポート」)、今回は後継機であるPixel 7 Proのカメラ機能について紹介する。
象徴的なレンズバーは「トリプル背面カメラ」に進化
サイズやデザインに大きな変化はないが、3つのレンズが並ぶ背面の「レンズバー」は、黒づくめの帯からメタリックのフレーム付きに変わった。黒づくめは味気ないというか、それがレンズであるということがわかりにくかった。風景を撮るときには関係ないが、人物を撮るときは相手に「こっちを見て〜」といいながら撮るときが多い。そんなとき「こっち」が黒づくめの帯では、相手も撮られているという感覚が薄くなるように思う。小さなことだが、こういうところで写真は違ってくるのだ。そこにグーグルも気付いたのか、はたまた違う事情なのか。
メインカメラが50メガピクセル、望遠カメラが48メガピクセルのそれぞれクアッドベイヤーセンサー、そしてウルトラワイドカメラが12メガピクセルのセンサーという点はPixel6 Proと変わらず。記録される画像はどのカメラでも12.5メガピクセルだが、メインカメラと望遠カメラでは4画素を1画素に混合。4画素はそれぞれ露出を変えており、つまり混合された1画素は非常に階調が豊かになる。
日陰やくもりなどメリハリのない場面ではこの処理による恩恵が大きいと感じた。反面、夕焼けの風景など明暗差が激しい場面では、明暗差を埋める処理が強いようにも感じる。露出(明るさ)やホワイトバランス(色温度)をスライダーで調整できるので、一律に強く処理をかけるのではなく、同じようにスライダーを設けてくれたらいいのになぁと思う。
スライダーといえば注文がひとつ。細かいところではズームを切り替えるために0.5倍、1倍、2倍、5倍の小さなボタンが表示されているのだが、これがうまく真ん中をタップしないとスライダーに変わってしまう。たとえば2倍にしたくて「2」を押したつもりが、スライダーが表示されて指標は1倍のまま。2倍にするには、そこからスライダーをいじらなければならない。しかも、このスライダーをボタンに戻す方法がよくわからない(一旦違うモードにすれば戻るが)。重要な部分だけに、もっとボタンを離すか大きくするといった配慮がほしい。
10倍まではまったく劣化を感じさせない「デジタルズーム」
とまあ要望はさておき、Pixel6 Proと比較して望遠カメラの光学ズームは4倍から5倍に、デジタルズームも20倍から30倍まで拡大された。この望遠カメラの有無がPixel 7 ProとPixel 7の大きな違いだ。Pixel 7 ProとPixel 7実売価格はそれなりに差はあるが、メインカメラは24mm相当と、一般的なカメラでいえばかなりの広角。ちょっと寄るだけでもデジタルズームに頼るというのは少々心許ない。Pixel 7 Proの望遠カメラも、それをベースにしたデジタルズームも描写が良好で、絶対にあったほうがいいと思う。
デジタルズームは10倍までは、まったく劣化を感じさせない。20〜30倍も被写体との相性はあるが、ハマったときの解像感はなかなかのものだ。たとえばスポーツ観戦で選手とか、ライブでステージを撮影できる機会があれば、この描写性能は重宝すると思う。手ブレ補正が強力すぎて被写体をゆっくり追従するようなぎこちなさはあるが、16倍以上になると右上にピクチャーインピクチャーで少し引いた映像が表示され、その中に今捉えている部分が枠で表示される。これはなかなか便利だ。
「マクロ撮影」や「シネマティックぼかし」 Googleフォトの機能「ブレ補整」が追加
ウルトラワイドカメラにオートフォーカスが搭載されたことで、マクロ撮影が可能になったのも新たなポイント。とくに切り替えもいらず、被写体に近寄ればメインカメラを使用していても、自動的にウルトラワイドカメラ+マクロモードに切り替わる。ちょっと説明すると画角が広い=焦点距離が短いレンズほど、最短撮影距離(ぎりぎり近寄れる距離)が短い。そこでウルトラワイドカメラに切り替わるのだが、料理やアクセサリー、花など小さなものを撮ることが日常的にあるような人にはありがたい機能だと思う。
ただし、マクロモードは手動でオフにできるものの、自動のままではオンオフが頻繁に切り替わり、その都度レンズが切り替わる=フレーミングが変化する場面もあった。ここの動作の安定性は今後のアップデートに期待といったところか。
また動画で背景をボカして撮影できる「シネマティックぼかし」や、Pixel 7/7 ProというよりもGoogleフォトの機能だが「ブレ補整」が加わった。手ブレやピンボケを補正してくれるのだが、ほかのスマホやカメラで撮影した画像にも適用できる。またPixel 6/6 Proで話題になった「消しゴムマジック」もプロセッサーの進化により、処理能力が向上している。
私物ではiPhoneを使って久しいので、Androidの使い勝手には正直少し戸惑いも感じる。しかし、使い込むうちに気付く点もあり、あえて難しいことをさせないiPhoneとは違った魅力を感じた。今回はカメラ機能、しかも静止画のみしか試していないが、その底力を十分感じることができた。
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筆者紹介――鹿野貴司 1974年東京都生まれ、多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーランスの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるかたわら、精力的にドキュメンタリーなどの作品を発表している。
写真集に「山梨県早川町 日本一小さな町の写真館」(平凡社)など。公益社団法人日本写真家協会会員。
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