Amazon、「Kindle Scribe」を国内披露、電書端末であり紙のノートの再発明
ASCII.jp / 2022年11月24日 18時0分
Amazonは11月24日、ペンで手書きのメモが残せる電子書籍端末「Kindle Scribe」の国内向け発表会を開催した。9月にグローバル発表した製品で、国内出荷は11月30日から始まる予定。Amazon.co.jpでの販売価格は4万7980円から。すでに予約は受け付けている。
ペンで書き込める、Kindle初のE Ink書籍端末
Kindle ScribeはKindleシリーズでは最大画面のハイスペックモデルだ。
ディスプレーはモノクロ表示の「Amazonディスプレイ」(E Ink)となっている。10.2型でディスプレーの解像度は解像度は300ppi、16階調のグレースケールを再現可能。明るさ自動調整機能も備えている。このサイズのE Inkを搭載した端末は世界初だという。
特徴はペン操作に対応したこと。電子書籍端末に手書きで注釈を追加できる(付箋機能)ほか、手書きノートやTo Doリストの作成、PDFファイルへの書き込みなども可能になっている。付属するペンは「スタンダードペン」と「プレミアムペン」の2種類があり、ストレージ16GBでスタンダードペンが付くモデルが標準モデルが最安。ほかに16GB(標準モデル+4000円)、32GB(標準モデル+7000円)、64GB(標準モデル+1万2000円)でプレミアムペンが付属するモデルがある。
ペンはともに充電不要。本体にマグネットで取付可能。プレミアムペンにのみショートカットボタンがあり、4種類の機能を割り当て可能。また、ペン先と逆側を使うことで、メニュー選択なく消しゴムを利用できる。
本体サイズは幅196×奥行き5.8×高さ230mmで、重量は433g。バッテリーは付属の9W対応ACアダプター(USB Type-C充電)を用いた場合、約2.5時間で充電が完了し、読書は最大12週間、手書きは最大3週間(ともに1日30分利用した場合)の利用が可能としている。 このほかオプションで、純正のファブリックカバー(9980円)、レザーカバー(1万3980円)、プレミアムレザーカバー(1万5980円)、交換用ペン先(1980円)が用意されている。カバーにはペンを差すことができ、折りたたんでKindle Scribeを立てて使うこともできる。
国内10年目を迎えたKindle、Scribeで新しい層へアピール
アマゾンデバイス事業本部 Kindle事業部・Fire タブレット事業部・アクセサリー事業部 事業部長の清水文弥氏は市場調査を引用しながら、「2021年度の電子書籍ビジネスは5510億円規模であり、マンガコンテンツがこれを牽引している。2022年度も6076億円と電子書籍市場は堅調な伸びを期待できる」とコメントした。
Kindleは2012年10月に国内展開が始まってから機能とラインアップを強化してきた。2017年には「Kindle Oasis」が登場。防水、色調調節ライト、明るさ自動調節機能などを搭載している。また、最近発売されたばかりの第11世代「Kindle」は、エントリーモデルながら、300ppiのE Inkを採用しており、見やすさとレスポンスの速さを兼ね備えたモデルとなった。
Kindle Scribeは10年の節目に投入される製品であり、「いつでもどこでも物語の世界に没入してほしい」「紙の本を読んでいるような感覚が得られる」といったAmazonの理想を体現するとともに、読みながら「書く」という新しい活用シーンを可能とするモデルであるとした。
ターゲットはすでにKindleを使っていてより高機能な製品を求める人が第1にあるが、手書きの要素を取り入れることで、多機能なデバイスを求める新規ユーザーに裾野を広げたいとしている。「勉強、メモなど用途の幅が広がり、知的好奇心が豊富なかたに向いた端末。手帳の代わり、業務文書や原稿のチェック、執筆、推敲などに加え、画面の大きさは老眼の人にも喜んでいただけるのではないか」と清水氏は話す。「同じ一覧性であれば、Oasisよりも文字サイズを大きくすることができ、いままでアプローチできなかった層にも勧められる」と自信を見せた。
紙のノートの再発明かもしれない
Kindle Scribeは、電子書籍端末のため、ペン対応のタブレットとは若干異なる面もある。例えば、書籍に直接文字を書き込むのではなく、注釈の形態をとる点。これは、文字の大きさによってレイアウトが変化するリフロー型の形式で的確な位置にメモを追加できるようにするためだ。注意点として、マンガコンテンツなどレイアウトが固定したコンテンツでは手書きの注釈が入れられない場合があること。Amazonでは電子書籍ストアのKindleで、Scribeに対応したコンテンツかどうかを示すようにするとしている。
手書きノートは、罫線付き、方眼、ToDoなど、18種類の標準テンプレートが用意されており、その上に手書きで文字や図形を書いていく機能。作成したノートは、クラウド上に保管され、同じアカウントでログインしたスマホ版のKindleなどからも内容を見られる。ノートブックはAmazon独自形式で、Kindle Scribe以外の端末を使った編集は想定していないという。
また、PDF、Word、JPEG画像などの外部ファイルを取り込み、その上に手書きの画像を重ねることができる。Amazonでは、文書を校正するビジネスマンにも便利な機能だとしている。高精細で広い画面の上に、様々な太さの線を引けるため、利便性は高そうだ。ただ、Kindle Scribeはモノクロの端末なので、赤字ではなく黒で書き込んだ注釈にはなる。また、WordやJPEG画像を編集し、描き出す際はPDFファイルになる点も覚えておきたい。
いずれにしても、電子書籍端末としての機能に加え、電子ノートの機能を追加したことで、Kindle Scribeは書籍やマンガを消費するだけの端末だけでなく、知識や情報を整理し、この製品を中心に考えを深める端末へと進化したイメージがある。バッテリー寿命も長く、安心して持ち運べるし、集めた情報はなくさず一か所に残せる。新しいノートの発明と言えるかもしれない。
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