前年同期比30%増で成長する世界のスマートウォッチ市場 最大市場はインドに
ASCII.jp / 2022年12月9日 12時0分
日本でも定着してきた”ブラックフライデー”を皮切りに開始された年末商戦。今年もスマートウォッチは売れ筋のようだ。世界市場を見ると、第3四半期は前年同期比30%増で成長した。牽引役はベーシックで安価なタイプで、最大の市場が米国からインドに交代した。
前年同期比30%増で成長 2022年第3四半期のスマートウォッチ市場
スマートウォッチが普及してきた。国内でも男女問わず、スマートウォッチを着けている人が格段に増えている。一見求めやすそうな価格と、スマートフォンでは得られにくくなった新しさやワクワク感がある。聞くところによると、ブランドの時計を買うよりも安価に”時計マウント”ができるという理由で買う人もいるとか(大学生の知人より)。もちろん、さまざまな健康データが得られて楽しいという人もいるだろう。
Counterpoint Researchが発表した2022年第3四半期(7~9月)の世界スマートウォッチ市場を見てみると、出荷台数は前年同期から30%増加という成長ぶり。同期に新作が登場したアップルは前年同期比48%増、サムスンは同62%増となった(https://www.counterpointresearch.com/india-becomes-biggest-smartwatch-market-q3-2022/)。
同社はハイレベルOS(HLOS)とベーシックスマートウォッチに分けてデータを出している。第3四半期の牽引役は、同期に登場した「Apple Watch 8」や「Galaxy Watch 5」などのHLOS機種というより、ローエンドのベーシックスマートウォッチだったようだ。HLOSスマートウォッチ市場は前年同期比23%増であるのに対し、ベーシックスマートウォッチはその倍以上の成長率だったという。
インド市場がスマートウォッチ全体の30%へ
ベーシックスマートウォッチの伸びが示唆しているが、第3四半期は初めてスマートウォッチの最大市場が北米からインドになった。Counterpointによると、インドの暦での新年である「ディワリ」(今年は10月24日)を挟んでいることもあり、インド市場は前年同期比171%増と大きく成長した。1年前(2021年第3四半期)と比較すると、インド市場が世界に占める比率は14%から30%に。一方で中国市場は22%から16%と縮小している。
インド市場は2022年第2四半期に中国を超えて2位となり、今回1位に。前回インドのスマートフォンを取り上げたが、インドの存在感はここでも増しているといえる。
そしてインド市場の拡大とともに、成長しているのがローカルのプレイヤーのNoiseだ(https://www.gonoise.com/)。第3四半期は前年同期比218%と驚異的に成長し、インド市場ではシェアトップに。世界でもベーシックスマートウォッチ分野では1位だ。
NoiseはAmit Khatri氏とGaurav Khatri氏が2014年に創業したベンチャー企業で、当初はスマートフォンのケースを製造していたが、スマートフォンを中心にしたアクセサリーが重要になると予想し、ウェアラブル、ヘッドフォンと事業を拡大したという経緯をもつ。若年層をターゲットに据えた戦略が奏功し、ワイヤレスイヤホンではインド最大のシェアを持つという。
そのNoiseは、インドで一番人気のスポーツであるクリケットの有名選手、Virat Kohli氏をブランドアンバサダーとし、フィットネスアプリ「Noise Health Suite」やスポーツモードなどを売りにしたスマートウォッチを多数展開している。
たとえば、9月発表の「NoiseFit Core 2 Buzz」は1.28インチ丸型、240×240ピクセルの画面を持ち、150種以上の画面をダウンロードしてカスタマイズできる(https://www.gonoise.com/products/noisefit-core-2-buzz-smartwatch)。スピーカーとマイク内蔵で、Bluetooth通話機能が大きく宣伝されている。このあたりは話好きの国民性もありそうだ。価格は5999ルピー(約9900円)。
他の製品も1万円を切るものが中心だが、CNBCの取材に対し、Gaurav Khatri氏はハイエンドも今後視野に入れていきたいと語っている。
ベーシックスマートウォッチ市場で、Noiseを僅差(0.6%差)で追うのが、同じくインドのFire-Boltt。そして3位のboAtもインド企業だ。
スマートウォッチ市場がさらに拡大するための3つのポイントは 「価格」「バッテリー」「健康機能」
スマートウォッチ市場は現時点では、スマートフォンなど既存ハードウェアメーカー(アップル、サムスン、シャオミ、ファーウェイなど)、新興メーカー(Noise、Amazfitなど)、GPSナビ由来のGarmin、そして時計ブランド(FOSSIL、セイコー)など、さまざまなバックグラウンドを持つメーカーが並び立った状態だ。
ようやく市民権を得たといえる段階に来たが、今後市場がどのように発展するのか。
CSS Insightの調査によると、初めて購入する人、買い替えの人、ともに上位に挙がった購入動機として、健康データを得られることを理由に挙げている。脈拍など心臓の健康状態を把握する機能はエンゲージが高いそうだ。
所有すると使い続ける傾向が高いというが、最大の不満はバッテリー持続時間。これについては納得という読者の方も多いのではないか。所有していない人の関心は非常に高いこともスマートウォッチ市場の特徴だが、価格が障害になっているという。
そこでCSS Insightでは、価格、バッテリー、健康機能の改善の3つを、購入を躊躇う人に訴求するポイントとしてあげている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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