Outlookの25年の歴史を整理する
ASCII.jp / 2022年12月11日 10時0分
Outlookは、Microsoft OfficeやMicrosoft 365の主要プログラムの1つで、もちろん今でも利用しているユーザーは多いだろう。Outlookのメールや予定表といった機能は、Windows 10/11の標準アプリケーションである「メール」や「カレンダー」からもアクセスが可能だ。
1997年に初登場以来のOutlookの変遷を見る
ここでは、OfficeやMicrosoft 365に含まれているOutlookプログラムを他と区別するため「Outlook.exe」と表記する。以下「.exe」がつくものは、ウェブサービスやAndroid用アプリケーションではなく、Windows用のアプリケーションを意味する。
Outlook.exeは、1997年のOffice 97に初めて同梱された。それ以前のWindowsには、スケジュール管理プログラム「Schedule+」やメール用の「Microsoft Mail」、Exchangeクライアントといったプログラムがあった。この時期のMicrosoftの製品は、企業向けと一般消費者向けが分かれており、似たような機能をそれぞれで開発していた。
電子メールにはDOS時代から続く、「Microsoft Mail for PC」(ドライブ共有を利用してメールを配信する)があり、Outlook.exeのサーバーとなるMicrosoftのExchange Server(1996年に登場)は、このMicrosoft Mail for PCの後継として登場した製品である。当初のExchangeでは、Exchageクライアントでアクセスしていた。
そこでWindows 95にはExchageクライアントが一時付属したが、Exchangeが単なるメールサーバーからNotes(旧Lotus製)対抗の「コラボレーションシステム」に変貌していく過程で、クライアントとしてOutlook.exeが開発された。
当初、Outlook.exeとExchange Serverは、MAPIと呼ばれるマイクロソフト独自のプロトコルで通信していた。これは、LAN内での利用を想定したものだ。Exchange Serverは、SMTPやIMPA4などのインターネットプロトコルもサポートするが、Outlook.exeとはMAPIを用いていた。このため、一般消費者向けにインターネットメールを扱うプログラムは別に用意することになった。
1996年にInternet Explorer 3.0が登場すると、「Microsoft Internet Mail and News」というメール/ニュースクライアントが同梱された。ウェブブラウザー戦争でライバルだったNetscapeがインターネットメールが扱えたからだ。さらにMicrosoftはHotmailを買収し、自社のメールホスティングサービスとした。
このMicrosoft Internet Mail and Newsは、1997年にOutlook Express 4.0に改名された。Outlookという名前を持つが、実際にはOutlook.exeとは何の関係もない。
この頃、個人ユーザーもOfficeを購入すれば、Outlook.exeを使うことはできたが、カレンダーの同期は不可能で、たとえばデスクトップとラップトップで同じカレンダーを参照することはできなかった。同期が可能だったのは、デスクトップマシンとWindows Mobile上のカレンダーで、Active Syncと呼ばれる技術が使われていた。これはPalmシリーズへの対抗上、Windows CEデバイスに導入された機能だった。ただし、Active SyncではモバイルデバイスをデスクトップマシンとRS-232C(シリアル)で直接接続する必要があった。
2006年のWindows VistaでOutlook Expressは廃止され、「Windows Mail」が登場するが、Windows 7では消費者向けのメールクライアントは「Windows Live Mail」という名称に変更され、Windowsとは別の「Windows Essentials」というソフトウェアパッケージの一部として配布されるようになる。
2010年頃、Windows LiveサービスにOutlookの同期プロトコルの1つであるExchange Active Syncが導入された。Exchange Active Sync(EAS)は、Exchange ServerとWindows Mobileを同期させるために作られたプロトコルだ。これで、一般ユーザーもモバイルデバイスをインターネット経由で同期できるようになった。
Windows 8が登場した2012年にOutlook.comが導入される。Windows Live、HotmailメールサービスがOutlook.comとなり、ウェブ版OfficeなどのMicrosoftの一般ユーザー向けクラウドサービスがOutlook.comに統合される。
2015年には、Outlook.comはOffice 365のインフラを利用するシステムに切り替わる。これにより、Outlook.comはExchangeサーバーとして振る舞えるようになり、ようやく個人でもOutlook.com経由で複数マシン間でカレンダーなどを同期可能になった。しかし、その頃にはすでにGoogleカレンダーなどのクラウドサービスが普及していた。
現在のOutlook.comは、マイクロソフトのクラウドサービスの起点の1つでもある。Outlook.comと呼ばれるが、実際にアクセスすると「outlook.live.com」となる。これは、もともと「windows.live.com」だった頃の名残である。
WindowsアプリとOutlook.comの関係
Outlook.exeには、「メール」、「予定表」、「連絡先」、「タスク」、「ノート」という5つの機能がある。これらは現在では、Windows 10/11アプリの「メール」、「カレンダー」、「Microsoft To Do」(タスクに対応)、「付箋」(ノートに対応)の4つのアプリケーションに対応する。
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「連絡先」は、かつては「メール/People/カレンダー」のパッケージに含まれていたPeopleが対応していたが、現在では「メール」のアドレス管理に残るのみだ。
また、Outlook.exeの機能は、outlook.comへのウェブブラウザーからでも利用可能だ。Outlook.exeのノートに対応する機能は、現在のoutlook.comのメールに表示されるOneNoteフィードでアクセスできる。OneNoteフィードは、そのほか、OneNote.exeやOutlook.comのウェブ版OneNoteでも使える。
付箋は2019年のバージョン3からMicrosoftアカウントでマシン間の同期が可能になった。Outlook.exeのノートとはこのとき同期するようになった。Outlook.comが付箋の情報をOneNoteフィードとして表示できるようになったのは2020年頃である。
Androidでは、Microsoftのモバイル版Outlook、OneNote、Microsoft To Do:List & Taskが用意され、Outlook.exeと同等の機能が利用できる。また、モバイル版Outlookには、別にOutlook Liteと呼ばれるアプリケーションが存在する。「メール」「予定表」「連絡先」という機能は同等だが、メールの接続先がMicrosoftのクラウドサービスに限定される反面、パッケージサイズが小さくなっている。
Outlook Liteは、一部の国向けの限定された製品だった。そもそも、Android版のOutlookは、サードパーティー製ソフトウェア(AcompliやSun Rise Calendar)を買収して作られたもの。Microsoft To Doも2015年に買収したWunderlistがベースになっている。
Microsoftは、Windows CEから続く同社のモバイルOSであるWindows 10 Mobileの開発を続けていたが、2017年に中止を決定、Androidなど他社のスマートフォン上でのサービス展開に切り替えた。そのため、急いでAndroid対応を進める必要があり、既存のアプリケーションを買収して、Outlook.comに統合したサービスにアクセスできるクライアントプログラムを用意することになった。
基本機能に関しては、Outlook.exeで利用できるものは、すべてWindowsアプリやAndroidスマートフォン、あるいはブラウザーから利用できる。ただし、依然としてOutlook.exeでしか実行できない機能もある。たとえば、ユーザーが独自のビューを設計したり、既存のタスクや連絡先に独自のフィールドを追加する機能などだ。これらの機能は、Outlook.exeとExchange ServerでNotes/Dominoに対抗しようとしたことの名残だ。
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