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ドコモが三菱UFJ銀行と連携 キャリアの金融事業は総力戦に

ASCII.jp / 2022年12月19日 9時0分

  NTTドコモと三菱UFJ銀行がデジタル口座サービス「dスマートバンク」を開始した。

 dスマートバンクは口座を開設し、dカードの引き落としや給与受け取りなどを行うとdポイントがもらえるのが利点だ。

 機能としては三菱UFJ銀行の口座にある残高を確認し、残高を「おサイフ」と「貯金箱」にわけることができる。

 筆者はすでに三菱UFJ銀行の口座を所有していたので、dスマートバンクの開設はビックリするぐらい簡単であった。iPhoneのFace IDが何度か作動し、顔認証をすることで、手続きがどんどん進んでいく。面倒な入力はほとんどなくdスマートバンクが開設され、三菱UFJ銀行の口座と紐付いてしまった。

 ただ、dスマートバンクが簡単に開設できたからといって、使い続けるかと言えば、正直、微妙だ。なぜなら、dスマートバンクは口座の残高や明細は確認できても、振込や振替はできない仕様となっているのだ。振込や振替が必要であれば、三菱UFJ銀行のアプリやブラウザを起動する必要がある。dスマートバンクでの振込や振替は今後、対応する予定とのことだ。

ドコモが独自に銀行を作る気はない

 NTTドコモは、今回、三菱UFJ銀行のBaaSという仕組みを活用し、あくまで三菱UFJ銀行の口座情報と連携するという機能に留め、自社で銀行をつくるというところまでは踏み込まなかった。

 KDDIが「auじぶん銀行」、ソフトバンクが「PayPay銀行」、楽天は「楽天銀行」と他キャリアが自社グループで銀行を抱えるのとは対照的だ。このスタンスの違いについては、記者会見で結構、記者から突っ込まれたポイントでもあった。

 NTTドコモが独自に銀行を作るという点に関してNTTドコモ・スマートライフカンパニー ウォレットサービス部 バンクサービス担当部長の色川州平氏は「現時点では想定していない」と素っ気ない。「NTTドコモが銀行業をゼロから始めるのではなく、国内最大基盤を持つ三菱UFJ銀行との連携で、早期にサービスを提供することが重要だった」と語る。

 端から見ると、三菱UFJ銀行からすれば、dスマートバンク経由で、新規に口座を開設してくれる人が増えるというメリットがあるが、NTTドコモのメリットは限定的のようにも感じる。

 実際、KDDIのauじぶん銀行は、住宅ローンなどを提供し、ローン商品の残高が1.9兆円となるなど、金融事業が潤っている。

 楽天グループも、基地局建設による設備投資がかさむ楽天モバイルがグループ全体の足を引っ張っているものの、金融事業は絶好調だ。実際、楽天銀行の口座数は9月末日時点で1303万口座と、前年同期比で14.5%も増えている。

金融事業の強化に躍起な4キャリア

 KDDI、ソフトバンク、楽天は、昨今、グループ内での金融事業の強化に躍起だ。

 例えば、ソフトバンクは2022年度Q3からPayPay、PayPayカード、決済代行サービスのSBペイメントサービス、PayPay証券を束ねて「金融事業」としてセグメントするようになった。

 PayPayの決済回数や決済取扱高が伸びているのは想像できるが、意外なのが、PayPayアプリからPayPay証券へのユーザー流入だ。

 PayPayアプリにはPayPayポイントを使っての投資体験ができるのだが、それに興味を示したユーザーがそこからPayPay証券に加入し、本格的に投資デビューするという流れができているという。

 実際、資産運用ミニアプリを開始した2022年8月以前は月に1万900口座程度だったPayPay証券の新規口座開設数は、2022年9月に月2万7000口座にも拡大。

 口座獲得に必要なコストは約7800円から550円までに落ちている。つまり、PayPay証券としては効率よく新規口座の獲得に成功しているというわけだ。

銀行、カード、証券など「総力戦」に

 ようやく銀行的なサービスに乗り出したNTTドコモだが、やはり同社が強いのがクレジットカード事業だ。

 2022年9月末現在、dカードの契約数が1623万件なのだが、そのうち、年会費1万1000円が必要なdカードGOLDの契約数が930万件もあるのだ。

 ちなみに国内ナンバーワンカードである楽天カードの発行枚数は2751万枚、au PAYカードは810万となっている。

 1万1000円の会費が必要な楽天プレミアムカードやau PAYゴールドカードの会員数は不明だが、いずれにしても、1万1000円を支払ってくれるdカードGOLD所有者を930万件も抱えるNTTドコモの底力のようなものを感じるだろう。

 クレジットカードにおいては発行枚数でナンバーワンの楽天カードに対して、優良顧客を抱えるdカードといった構図が描かれる。一方で、クレジットカード事業で戦略を描けていなかったソフトバンクは、ようやく「PayPayカード」で仕切り直していく格好だ。

 金融事業と言っても、銀行、クレジットカード、証券、保険、決済、融資と多岐にわたる。

 抱えているスマホユーザーにいかに金融商品にデビューしてもらい、囲い込みに繋げるか。4キャリアの総力戦が本格化していきそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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