色指定の達人になる PANTONEを知っていますか
ASCII.jp / 2023年1月17日 16時0分
BtoBでのモノ作りの必需品といえるPANTONE
「PANTONE」(パントン、パントーン)という言葉を知ってますか? もしご存知なら、プロのモノ作りに慣れた人かもしません。さらにPANTONEの色見本帳を持っているとしたら、B2Bのデザインが仕事の一部になっている人でしょう。
PANTONEは、今からおよそ60年前の1962年に、アメリカで化粧品会社に色見本帳を印刷する会社として設立されました。翌年には「PMS(Pantone Matching System)」を作り、有名になりました。PMSとは、世界基準の色見本帳を販売し、色の指定を効率化するためのシステムです。
みんなお世話になっている
もちろん、マジシャンもお世話になってます。たとえばトランプ。写真は筆者が愛用しているトランプ「前田知洋モデルタリホー」のレッドマイカとブルーマイカ。
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アメリカのケンタッキー州にあるトランプ工場で印刷されているため、発注するにはPANTONEでの色指定が必要です。メーカーは外国なので、実際に試し刷りされた色を見に行くのは、なかなかできませんからね。
もちろん、お金や時間をかければ、刷り見本を航空便で取り寄せて色校正することもできます。しかし、現在はワークフローや納期を短縮するためにPANTONEのシステムを使い、オンラインでの色校正のサービスが世界中で採用されています。
近年では、印刷だけでなく、グラフィックデザイン、ファッション、家具などの多岐にわたる製品の色指定にPANTONEは使われています。
4色分解か単色インクか?
カラーの印刷物を作る場合、CMYK(シアン、マゼンタ、イエローと、キー・プレート)と呼ばれる4色のインクを重ねてカラーを表現する方法と、使いたい色を単色インクをそのまま使う方法があります。たとえばカラー写真のようにいろいろな色が混在しているときは、CMYK印刷が向いています。
しかし、企業ロゴのように単色、もしくは数色のカラーで構成されたデザインは、単色インクのほうが美しく安定して印刷できます。乱暴な言い方をすれば、CMYKは印刷工場で色を重ねて色を作り、単色印刷はインクメーカーがインクを混ぜて色を作る方法です。
単色インクにしか表現できない色もあり、たとえばメタリック、蛍光色、ホログラム色などはCMYKでは印刷することはできません。
そこでPANTONEの出番となるわけです。
アマゾンのロゴの色なら1375C、432C
たとえば、新しい製品をデザインするとき、「赤がいい」といっても、ルビーのような赤、ワインレッドなど、いろいろな種類があります。
印刷の経験がある人なら、できあがってきたときに「あれ?イメージと違うなあ」となったことがありませんか。これは市販のプリンターだけでなく、工場で印刷しても同じことがおこります。
その理由は、コンピューターの画面で見た色、プリンターで印刷した色、工場で印刷した出来上がりの色、それぞれの色の成分が異なるからです。
たとえば、モニターの画面上の色は、液晶などに表示されるRGBの光を合成して作られていますし、プリンターは各メーカー独特のインクの組み合わせ、工場ではメーカーから買ったインクを組み合わせて印刷するからです。
PANTONEの場合、デザイン時に色見本帳で色を選んだら、工場に色番号を伝えるだけ。工場はPANTONEのライセンスを受けたインクを使い、イメージ通りに仕上がりになる(紙の種類によっても色合いが変わることがあります)。それがPANTONEが使われる理由です。
企業などは自社のロゴのカラーをPANTONEで指定している場合がほとんど。たとえば、大手ショッピングサイト、アマゾンなら「オレンジ(PANTONE1375CまたはPANTONE137U)」と「黒(PANTONE432C)」、ツイッターのブルーはPANTONE2382C。同じブルーでもFacebookは、PANTONE2727CまたはPANTONE2382Uがブランドガイドラインに記載されています。
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興味深いのは、ロゴカラーだけでも、それぞれの会社が想起できてしまうところ。人間の色の記憶の根強さがわかります。
デメリットは、お金と手間がかかること
たとえば、PANTONEの色見本帳は、それなりの値段がします。初めて見る人は少し驚くかもしれませんが、1冊2万円くらいから。さらにメタリックやパステルなど、全色をコート紙と上質紙に揃えようとすれば、10万円を超えることもあります。その上、見本帳は退色するので、1年から1年半で買い換えるようにPANTONE社は推奨しています。
色は環境(明るさやライトの色温度)で違って見えるため、色見本帳では正しい色温度を確認するライティング インジケーターと呼ばれるページがあります。これは色温度が5000Kの環境下で同じ色に見える2種類のインクで印刷されています。
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デジタルやネットによって、便利に、ローコストな時代になってきました。しかし、細かく色を指定するのはアナログでぜいたくなこと。そんなことをこの記事を書きながら再確認しました。それは、ボクの仕事のマジックも同じかもしれません。
皆様におかれましても、ご自分のイメージカラーやロゴの色を決めてみるのはいかがでしょうか。
前田知洋(まえだ ともひろ)
![](https://ascii.jp/img/2019/08/16/1521134/x/31a9d34e1514d53d.jpg)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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