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試行錯誤の結晶、raytrekの新PCケースはクリエイターのやる気をオンにする

ASCII.jp / 2023年1月24日 11時0分

「raytrek(レイトレック)」の刷新されたPCケースについて、佐藤 和仁氏(写真左)、野口 基督氏(写真中央)、黒川 裕大氏(写真右)にインタビューを実施した

 サードウェーブのクリエイター向けパソコンブランド「raytrek(レイトレック)」では、2022年12月にデスクトップパソコンのPCケースを刷新。デザインにこだわった事務所や自宅の作業部屋に置けるデザインで、かつ気付いたときに簡単に掃除ができるような仕組みを採用。

raytrekの新PCケース。従来モデルからガラッと変わっている

 加えて、ケース内部のデザインも改良し、昨今のハイエンドなCPUやGPUといったパーツを長時間稼働させてもしっかりと冷やせるエアフローも実現しているのも特徴となっている。

 見た目から機能までガラッと変わったraytrekの新しいデスクトップパソコン。発表会では、マイナーチェンジではなく、クリエイターのことを長期間にわたり考え抜いて作られたPCケースだということが伝わってきた。そこで今回は、同社がどのような想いでこのケースを作ったのか、開発のキーマンとなる3人にインタビューを実施した。

 今回お話を伺ったのは、サードウェーブ執行役員 製品・マーケティング統括本部 統括本部長の佐藤 和仁氏、同プロモーション部 raytrek プロダクトマネージャーの野口 基督氏、サブプロダクトマネージャーの黒川 裕大氏だ。

クリエイターをはじめさまざまな人の意見を踏襲 納得いくまで時間をかけて開発

──本日はよろしくお願いします。まず初めに、2022年12月の頭に発表された新PCケースですが、クリエイターさんやユーザーさんからの反応はいかがですか?

黒川 裕大氏(以下、黒川氏):発表後、さまざまなご意見をいただいております。ドスパラの店舗には、発表会の翌日から展示していますが、Twitter上では、デザインがカッコいいという意見もあれば、逆のご意見もありました。いい評価だけでなく、批判されるというのは、多くのお客様の目に留まったということだと考えています。さまざまな意見があったほうが、盛り上がっている感じがありますし、多くのユーザーさんにしっかりと認知いただけたのかなと思っています。

──売れ行き的にはいかがですか?

黒川氏:ご注文も順調にいただいております。まずはしっかりとしたスタートは切れたのかなと感じております。

──では、この新PCケース開発のキッカケを教えてください。

佐藤 和仁氏(以下、佐藤氏):弊社のゲーミングパソコンブランド「GALLERIA(ガレリア)」は、2020年7月に新デザインのPCケースを発表しました。その後raytrekも、デビューから数年が経過していた事もあり、GALLERIA同様、お客様にとって“どうあるべきか”を追求したケースの開発をスタートさせました。

2022年12月に発表された新PCケースだが、開発はかなり前から計画があったと語る佐藤氏

──GALLERIAの新PCケースのインタビューでは、コンセプトカーを手掛けるデザイン事務所にデザインを依頼したと伺いましたが、今回もデザイン事務所に依頼されたのでしょうか。

佐藤氏:raytrekの新PCケースもデザイン事務所の方にご提案いただき、そこから社内で詰めていきました。

──今回も、納得いくまで時間をかけてそうですね。

野口 基督氏(以下、野口氏):デザインのスケッチの段階から結構時間をかけましたね。また、コンセプト自体は一貫して変わっていないのですが、デザインの方向性は大きく変えてもらったこともありました。最終的には、我々のコンセプトが反映されたPCケースに近づけるために、段々と細かく、かつチェックも厳しくなっていった気がします。そのぶん、我々のイメージしたデザインをしっかりと実現できたと思っています。

──従来のPCケースから、デザインを始め大幅に変わってまったく新しいPCケースになったという印象なので、そのぶん時間もかかりそうですね。

野口氏:我々のコンセプトに加えて、さまざまな方のご意見を伺いながら進めていたこともあり、結果的には多くの時間をかけてきたなと感じています。

とことんこだわった冷却性とメンテナンス性 クリエイターの長時間作業を快適に

──発表会では、クリエイターさんの意見も取り入れたとおっしゃっていましたが、どういった意見がとくに多かったですか?

黒川氏:1番多かったのは、冷却の部分です。やはりクリエイターさんですと、CPUの性能を十分に引き出したまま、長時間安定して稼働させられるというのが一番大事なので。単純作業を1分1秒でも短縮して、次のクリエイティブに取りかかれるよう、稼働中に熱の影響で遅くなったり、とまってしまったりということがないように、冷却性をどれだけ突き詰められるかが、今回のPCケースの重要なポイントの1つでした。

レンダリングや現像など、長時間かかる作業でも安定した温度でこなせるように、冷却にはかなりこだわったという黒川氏

──たしかに大量の写真の現像や、長尺の動画のレンダリングみたいに、結構長い時間負荷がかかる作業が安定駆動してくれるのって、かなり大事ですよね。

黒川氏:ほかにも、長い期間使っていただくときに、冷却性が落ちないようにするには、メンテナンス性も重要です。そのため、“冷却”と“メンテナンス”の2つを大きな軸にデザインを固めていきました。

──メンテナンス性でいうと、かなりコダワリを感じられる構造ですよね。前面のマグネット式のフィルターとか。

佐藤氏:ありがとうございます。この辺も、さまざまなご意見をいただきながら、デザインをどう変えたらいいかを考えて、何度もやり直して、どんどんとコンセプトを凝縮していった感じですね。

前面から簡単に取り出せるマグネット式のフィルター
サイドパネルのフィルターも取り外せる
底面にもフィルターがある

全部苦労した 議論しながらユーザービリティーを1つ1つ実現

──大変な作業ですね。どういったところで苦労されましたか?

野口氏:正直全部苦労してます(笑)。冷却性の向上は必ず実現したかったので、その点はとくに苦労しましたね。冷やすというだけであれば、色々な方法がありますが、我々の場合は1台ずつ工場スタッフがパーツを組み上げてご提供するので、組みにくかったら、お客様にお届けするまでに時間かかってしまいます。そのため、組み立てやすさも重要で、当初穴をあけていた部分を閉じるといったようなことも結構ありました。

──冷却機能や使い勝手以外に、組み立てやすさも考えないといけないというのは、確かに大変そうですね。

野口氏:コンセプトはしっかり実現できていても、実用性の部分で(デザインの)巻き戻しみたいなことも発生しながら、その都度我々としてどちらにすべきかはかなり議論しました。ユーザビリティーに繋がる部分を1つ1つ実現していくというのは、やはり苦労したポイントではありますね。

──1度完成しても、納得いかないとやり直すというところに、こだわりを感じますね。

佐藤氏:発注したモデルが届いて、検証して、フィードバックするということを繰り返してきたので、そのぶん時間はかかっていますね。その前にも、モックアップから始まって、微妙な幅感や、使い勝手とデザインのバランスなど、考えることは山積みでした。

──メンテナンス性の話に戻りますが、これは場所や用途にもよると思いますが、どれくらいの期間でフィルターの清掃をすればいいんでしょうか。

黒川氏:清掃をしなくなる最大の原因は掃除のしづらさです。このケースはフィルターを簡単に取り外して清掃できるようにつくってありますので、仕事が煮詰まったときの気分転換といった感じで清掃していただければいいかなと思います。適した清掃の期間や時期は設置場所の環境にもよるので一概にはいえませんが、出来れば定期的にお願いします。本当に簡単にできるので(笑)。

360mmまでの水冷CPUクーラーを搭載可能 240mmの水冷はBTOカスタマイズも可能

──エアフローでいうと、ケース内部のファンも重要なパーツだと思います。ケース内部のエアフローについて教えてください。

黒川氏:従来のケースから、14cmファン2基というのは変わっていないのですが、背面だけの排気となると昨今のパーツでは厳しいので、新PCケースでは天面からどれだけ排気できるかということにこだわりましたね。また、240mmと360mmの水冷が搭載できるスペースを確保しています。昨今、360mmの水冷が一般的になってきたこともあり、前⾯上部のベイ上2つは排他になりますが、それが付けられる場所をしっかり確保したことも、ポイントの1つです。

天面からもしっかり排気する構造になっているという
従来同様14cmファンを2基前面に搭載
240mmの水冷CPUクーラーが搭載可能だ

──360mmの水冷はBTOカスタマイズで搭載できますか?

野口氏:現行のパーツでいうと、このケースの場合は240mmの水冷でも十分冷却できるということが検証でわかっていますので、今のところは240mmの水冷を用意しています。とはいえ、今後より強力な冷却を必要とするパーツが登場するかもしれないので、その場合は360mmの選択肢も提供できればなと考えています。

──現行のパーツでも240mmで足りるというのは、PCケースが優秀なんだと思いますけどね。

佐藤氏:そういっていただけるのはうれしいです。

5インチベイを採用する理由とは? SDカードリーダーや光学式ドライブを追加可能

5インチベイ×2を採用している

──先ほど、5インチベイの話がちょっと出ましたが、今回前面上部にベイを設けた理由は何ですか?

黒川氏:クリエイターの方々にお聞きすると、SDカードは直接挿したいという方もいらっしゃれば、USB接続という方もいらっしゃいます。また、私の知り合いがアニメの制作会社にいるのですが、アニメ業界はまだDiscドライブで納品することも結構あるそうです。そこで、光学ドライブを搭載できるベイは、クリエイター向けデスクトップでは必要だと考え、BTOカスタマイズで選択できるように、ベイを採用した次第です。

──あと、大型のビデオカードを採用する際には、カードステイが標準で付属するんですよね?

黒川氏:現行ですと、GeForce RTX 3070 Ti以上のビデオカードには、ステイが付属しています。やはり年々ビデオカードのサイズが大きくなってきており、輸送時に外れたり、経年劣化で落下したりすることがないように、ステイを付けるようにしています。このステイは専用設計で、ホールド性もしっかりしていますので、安心してお使いいただけます。

大型のビデオカードを搭載する場合は、専用設計のビデオカードステイが標準で採用されている

クリエイターのやる気をオンにする電源ボタン

──では外観について伺います。まずはやはり45度の傾斜がついた前側のインターフェースですが、ここはGALLERIAのPCケースを踏襲した感じでしょうか。

佐藤氏:そうですね。パソコンデスク上に置いたときも、下に置いたときもアクセスしやすい角度として、GALLERIAでもお客様から好評だったのでraytrekでも踏襲しました。

GALLERIA同様、raytrekの新PCケースでも前面のインターフェース部分に45度の傾斜が採用されている。加えて、インターフェース部分がわかりやすいように窪みも設けられている

──raytrekでは、角度に加えてインターフェース部分に窪みがありますよね?

黒川氏:インターフェース部分は、とくに机の下に設置する場合、暗くて見えないことがあると思います。また机の上に置いたときは、座ったままで手を伸ばしたときに見えません。そういった際に、手触りである程度どこにインターフェースがあるかわかるように窪みを採用しました。

──電源ボタンも珍しいですよね。

野口氏:机の下に設置した場合、普通の電源ボタンだと間違って押して消してしまうということがあるかもしれません。また、単なるオンオフの電源ボタンだとクリエイターの現場に合わないのではないかということで、考えたのがこのスイッチです。

最初は普通のボタンだったが、ユーザビリティーを考えたうえでこの電源に変えたのだと語る野口氏

佐藤氏例えば音楽スタジオのDTM機材には、スライドを上げるボタンがたくさん付いていると思いますが、そこにインスパイアーされてデザインしました。あのスライドを上げるときに、仕事の“スイッチ”も入るんじゃないかなと考え、同様に、パソコンの電源を入れるときに、仕事のスイッチも一緒に入れる感覚になっていただければなと思い、このデザインにしました。

──電源ボタンと一緒に仕事のスイッチが入るというのはわかります。あと、ボタンが光るギミックも採用されていますよね。これって結構コストが変わると思ったんですけど。

佐藤氏:製品の価格には影響しませんのでご安心を(笑)。ここは、何度も使っているうちに、愛着を持っていただける大事な部分ではないかなと思いこだわりました。もちろん、暗いところで電源ボタンの位置がわかりやすいという意味もあります。

──スライド式のボタンでも、手が当たったら電源がオフになってしまうということはないんですか?

黒川氏:スライドは半分くらいまでは遊びがあって、しっかりスライドしないと反応しないようになっています。そのため、多少手が当たる程度であれば問題ありません。

カーブと直線のバランスを重要視 シンプルな事務所にも馴染むデザイン

──PCケースのデザインもだいぶ変わりましたよね。

黒川氏PCケースではあまりないですが、最近の白物家電であったり、身近にあるデジタル機器は角ばっているところと、丸みを帯びている部分のバランスがいいなと思う製品が多くあります。そういう流行りの部分も取り入れて、お客様が好意的に受け取ってくれるようにデザインしました。また、製品としてパワーがあるということも示したかったので、しっかりと直線のところは直線にして、力強さというのも表現しています。

独特なデザインの前面。ソリッドな部分と丸みを帯びた部分のバランスを重要視したという

野口氏:丸すぎると、やはり可愛らしい外観になってしまうと思います。raytrekはクリエイターさんの道具として使ってほしいので、力強さに加えカッコよさも意識しています。

佐藤氏:前面は両端に曲線を採用しつつ、空気を切って入れていくぞ! というイメージでソリッドなデザインも取り入れています。

──前面のデザインにこだわりを感じる部分として、インテルやNVIDIAのシールが上に貼ってあるのも、地味にいいなと感じました。

黒川氏:最初は前に貼りましたが、それはちょっとこのPCケースにはそぐわないな、上に貼るようにお願いしました。

──シルバーが基調でブラックが織り交ぜてあるPCケースも珍しいと思いますが。

野口氏:クリエイターさんの事務所は、すごく片付けられててシンプル、かつ壁は単色というイメージがあります。例えば、白い壁の部屋だと黒はとても目立ちますが、シルバーでしたら溶け込みそうな感じがします。

──サードウェーブさんとしては完成系として出されていますが、とてもシンプルなデザインになっているので、クリエイターさんによっては、サイドパネルをキャンバスのように使ってもらうのもいいかもしれませんね。

佐藤氏:それはぜひ、できる方はやっていただきたいです。とはいえ、熱に強い素材で描いてもらえたらうれしいです。強力な冷却とはいえ、高負荷な作業を行なうとどうしてもサイドパネルは温かくなってしまうので(笑)。

単純作業を短縮してクリエイティブ作業の時間を増やす クリエイターの仕事のやる気スイッチを押すマシンに

──最後に、コンセプトの部分にも繋がってくるんですけど、クリエイターさんにどのように使ってほしいですか?

佐藤氏:仕事の“スイッチ”を入れる道具としてみていただきたいですね。仕事前の儀式といったら大袈裟ですが、このパソコンの電源を入れたら、シャキッとするみたいな感じです。

野口氏:例えば、写真や動画をあつかう際、クリエイティブ自体に費やす時間は変わらないと思いますが、レンダリングや書き出しの時間が短縮できると、本来のクリエイティブに費やす時間が増えることになります。このように、よりクリエイティブ部分の試行錯誤をする時間を増やすようなツールになってほしいです。

黒川氏:弊社のミッションステートメントである、“人々の創造活動の可能性を最大限にする”を、実現するツールになっていただければと思います。

──ありがとうございました。

 raytrekの新しいクリエイターパソコンは、サードウェーブのraytrekチームが試行錯誤を重ねて、クリエイターのための外観、エアフロー、性能、使い勝手を考慮したマシンに仕上がっている。

 従来モデルとくらべて外観からまったく異なるマシンに仕上がっているので、クリエイティブな作業の相棒としてパソコンを探している人は、ぜひチェックしてみてほしい。

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