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Google Pixelの「空間オーディオ」開始もまだ第一段階、現時点で何ができるのか?

ASCII.jp / 2023年1月17日 12時0分

2022年の開発者会議「Google I/O」で発表されたPixelデバイスの「Spatial Audio=空間オーディオ」対応がいよいよ実現しました

 グーグルが2023年の幕開けとともに、Android 13を搭載するGoogle Pixelのスマートフォン向けにソフトウェアアップデートを実施。「Spatial Audio=空間オーディオ」に対応する機能を追加しました。新機能によりPixel体験の何が変わるのか? 空間オーディオの楽しみ方とともに解説します。

Pixelスマホとふつうのイヤホン・ヘッドホンで 立体サウンドが楽しめる

 グーグルが「空間オーディオ」と呼ぶ体験は、Pixelシリーズの端末で没入感あふれる立体サウンドが楽しめることを指しているようです。対応する端末は、最新バージョンのAndroid 13にアップデートを完了したGoogle Pixel 7/7 Pro、Google Pixel 6/6 Proです。

 Pixelスマホによる空間オーディオ体験は、一般的な無線・有線接続のイヤホン・ヘッドホンを接続して楽しめます。グーグル純正品でなくても構いません。Pixelシリーズの内蔵スピーカーによる再生には、非対応です。

 筆者が本稿を執筆している1月13日時点で、今後数週間以内にグーグル純正のワイヤレスイヤホン「Google Pixel Buds Pro」のソフトウェアアップデートが提供され、Pixelスマホに組み合わせると「ヘッドトラッキング付き空間オーディオ」も楽しめるようになります。空間オーディオ再生にヘッドトラッキングをプラスすると、コンテンツの再生中にユーザーが顔の向きを変えても、役者の台詞や効果音などが「あるべき位置」に定位し続けるので、まるでコンテンツの中に飛び込んでしまったような真に迫る没入感が得られます。

グーグルの空間オーディオもドルビーがベース

 「Spatial Audio=空間オーディオ」とはある特定の技術を指す名称ではなく、一般にはスマホやタブレットなどのモバイル端末を含む、オーディオ・ビジュアル機器で楽しむ立体サウンド体験の総称です。現在メジャーなところでは、例えばドルビーラボラトリーズの「Dolby Atmos」、ソニーの「360 Reality Audio」、Xperiの「DTS:X」などが立体サウンド体験をかなえる空間オーディオの最先端技術として注目されています。

Android 13(図版右側)ではオーディオパイプラインのアーキテクチャに立体サウンドをつくり出すレンダリングエンジンとヘッドトラッキング用センサーを組み込むためのフックが設けられています

 グーグルによる空間オーディオのヘルプ情報を読むと、Pixelシリーズの立体サウンド体験はドルビーオーディオの技術をベースに互換性を確保しているようです。同様にドルビーの技術に基づいた立体サウンド体験は、アップルやアマゾン、Netflixなどが提供するコンテンツプラットフォームも採用しています。

空間オーディオの設定メニューが追加されています。左はGoogle Pixel Buds Pro、中央はJabra(他社)のワイヤレスイヤホンをペアリングした場合。それぞれのデバイスの設定画面にトグルスイッチが表示されます。右は有線イヤホンの空間オーディオ設定

空間オーディオ対応のコンテンツが必要

 今回筆者は1月5日にGoogle Pixel 7のソフトウェアをアップデートして、空間オーディオ再生の試聴と現在の対応状況を調べてみました。

 空間オーディオはPixel端末の「設定」からオン・オフを切り換えながら利用できる機能です。有線接続のイヤホン・ヘッドホンの場合は「設定」>「着信音とバイブレーション」の中にある「空間オーディオ」のトグルスイッチを選択します。Bluetoothワイヤレス接続のイヤホン・ヘッドホンの場合は、ペアリングしたデバイスの詳細設定ページごとにスイッチがあります。

 空間オーディオの設定ページの表記をよく読むと、臨場感あふれる立体サウンド体験を得るためには「対応するメディア」が必要と書かれています。対応するメディアとは何でしょうか?

 例えばホームシアターで迫力あふれる立体サウンド体験を得るため、基本的にはサラウンド音声を収録するコンテンツが必要です。ステレオ音声から擬似的に立体サウンド体験をつくり出すバーチャルサラウンドの技術もありますが、元がサラウンドで制作されているコンテンツの方が豊かな臨場感と迫力が味わえます。

 つまり、Google Pixelシリーズによる空間オーディオ体験は、デバイスとコンテンツが対になっているということです。グーグルによる空間オーディオのヘルプ情報を読むと、以下2件の記載があります。

  • Google Pixelでは、5.1以上の音声トラックに対応しているストリーミング プラットフォーム(YouTubeなど)の映画を視聴する際に空間オーディオを利用できます。
  • ドルビーオーディオまたは5.1と表示されているコンテンツを視聴してください。

※グーグルによる空間オーディオのヘルプ情報より

 Google Pixelシリーズでは、YouTubeなどサポートするコンテンツプラットフォーム の「ドルビーオーディオ」または「5.1」と記載された対応コンテンツを再生した時に空間オーディオが利用できるようです。

Google Pixel 7とGoogle Pixel Buds Proで空間オーディオをテスト

Google Pixel 7で空間オーディオを試聴

 以上をふまえて、Google Pixel 7でYouTubeアプリを立ち上げて空間オーディオ再生が利用できるコンテンツを探してみました。

 YouTubeではテレビで動画を視聴する際に、5.1チャンネルサラウンド音声を一部のコンテンツで利用できます。ただ、5.1チャンネル対応のコンテンツを見分けることがやや困難です。というのもYouTubeの各動画コンテンツのページに、5.1チャンネル対応であることの表記がないからです。

 YouTubeのヘルプページには、テレビでYouTubeを視聴する際に5.1チャンネルサラウンド音声で再生する方法の記載があります。これを読むとChromecastやAmazon Fire TVなど、一部デバイスで再生する動画を選択するとプレーヤーコントロールバーが表示され、5.1チャンネルサラウンドのオン・オフをメニューから選べるとされています。

 筆者が最新のChromecast with Google TV(HD版)で確かめたところ、確かに5.1チャンネル再生をメニューから切り換えることができました。Dolbyの公式チャンネル、YouTubeの映画とテレビ番組チャンネルなどに対応するコンテンツが揃っています。

Chromecast with Google TVには対応するコンテンツの5.1ch音声の設定をオンにするメニューがあります

 テレビ版のYouTubeから5.1チャンネルに対応しているコンテンツの目安を付けて、Google Pixelに移ってアプリで再生してみました。設定から空間オーディオのオン・オフを切り換えてみても、サウンドに明快な立体感の広がりが感じられません。Google Pixel Buds Proや、無線だけでなく有線接続のイヤホンでも試しましたが結果は同じです。

 おそらくはまだGoogle Pixelシリーズのデバイスが先行対応した所であり、いわば「フェーズワン=第1段階」が始まったばかり。YouTubeのモバイルアプリによる5.1チャンネル再生など、今後段階的に対応を拡大するのだろうと筆者は見ています。

2023年に発売が予告されているGoogle Pixel Tablet。本機の発売に合わせてグーグルによる空間オーディオが本格的にローンチするのかもしれません

本格対応はヘッドトラッキングやPixel Tabletの登場後か?

 グーグルによる空間オーディオの内容が充実して、一般に広く体験できるようになるタイミングはいつ頃になるのでしょうか?

 ひとつは「数週間以内」に予定されている、Google Pixel Buds Proとの連携によるヘッドトラッキング付き空間オーディオのローンチに合わせた本格スタートが考えられます。既にAndroid OSのソースドキュメントには、グーグルによる空間オーディオやヘッドトラッキングを組み込み、差別化を図るための情報も詳しく掲載されています。デバイスやアプリなど外部デベロッパが連携して準備を進めていることを期待したいです。

 2023年には独自設計のチップセット「Tensor G2」を搭載する「Google Pixel Tablet」の発売も予告されています。スマホよりも画面が大きなタブレットも出揃ったところで、グーグルは空間オーディオの普及に向けてアクセルを踏み込むのかもしれません。YouTubeの動画だけでなく、音楽やゲームなどにも空間オーディオ体験が広がるのでしょうか。今後の展開に注目しましょう。

 

筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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