Honda、有人月面探査で電力を供給する「循環型再生エネルギーシステム」JAXAと研究開発契約を締結

月面での循環型再生エネルギーシステムの活用 イメージ図

　Hondaは1月19日、宇宙航空研究開発機構（JAXA）と、月面探査車両の居住スペースとシステム維持に電力を供給するための「循環型再生エネルギーシステム」について研究開発契約を締結したことを発表した。今回の契約締結により、HondaはJAXAから委託を受ける形でまず概念検討を行ない、2023年度末までに初期段階の試作機である「ブレッドボードモデル」を製作する。

　循環型再生エネルギーシステムとは、Honda独自の「高圧水電解システム」と「燃料電池システム」を組み合わせたもので、太陽エネルギーと水から継続的に酸素・水素・電気を製造することを想定している。同社は2020年11月にJAXAと循環型再生エネルギーシステムの共同研究協定を締結し、月面での活用に向けた研究を進めてきた。

　米国が提案し、日本も参加する国際宇宙探査プロジェクト「アルテミス計画」では、2020年代後半に長期の有人月面探査が計画されている。長期探査のために人が月に滞在する場合、「月面探査車両を走らせる電力」と、「車両内で人が生活するための電力」が必要になる。蓄電池を月面に持ち込み、太陽光発電で作った電気をためておく、という方法もあるが、大量の蓄電池を地球から月へ持ち込むには輸送コストがかかりすぎるという。そこで電力を賄う方法として、蓄電池よりコンパクト・軽量なHondaの循環型再生エネルギーシステムが検討されている。

循環型再生エネルギーシステムの仕組み

　循環型再生エネルギーシステムは、Honda独自の高圧水電解システムと燃料電池システムを組み合わせたシステムで、太陽エネルギーと水から継続的に酸素・水素・電気を製造する。月面で使用する場合、昼の間に太陽光発電で発電した電気を使って高圧水電解システムで水を電気分解し、酸素と水素を製造してタンクにためておき、夜になったら、その酸素と水素を使って発電し、居住スペースに電力を供給する。

　Hondaの高圧水電解システムは、通常必要とされる水素を圧縮するためのコンプレッサーが不要なためコンパクトであることが特徴。また、循環型再生エネルギーシステムは蓄電池よりも質量あたりのエネルギー密度が高いため、同じ量のエネルギーを蓄えておくために必要な質量が蓄電池より小さくて済むという。これらにより、宇宙輸送における積載容量・質量の低減化も可能になる。

　Hondaは、同社が培った燃料電池自動車や高圧水電解システムを使ったスマート水素ステーションの技術を活用して本システムの実現を目指す。さらに、カーボンニュートラルなエネルギー供給手段として地上にもその技術をフィードバックしていくという。