Core i5にEコア革命!Core i5-13500/13400&Core i3-13100レビュー
ASCII.jp / 2023年1月24日 10時0分
ついにCore i5にもEコア搭載! Core i5-13500、Core i5-13400、Core i3-13100レビュー
すでに報じられている通り、インテルは2023年1月3日23時に、第13世代インテルCoreプロセッサーにMTP(Maximum Turbo Power)を抑えた“K無しモデル”の販売をグローバルで解禁した。本邦における1月3日時点の初出価格と、1月下旬時点における実売価格は以下の通りだ。
TDP 65W版Ryzenの登場も手伝っているのか、初出時よりもだいぶ安くなったモデルが見受けられる。ちなみに、Core i5-13600はインテルの製品リストに登録されているものの、Core i5-13600Kや13500との差別化が難しいという理由から、自作PC向け市場には入ってきていない。
前回はこの新モデルのうち、Core i9-13900およびCore i7-13700の2モデルを、同じ第13世代CoreのK付きモデルと比較した。
今回はK無しモデルのバリュー志向モデル、すなわちCore i5-13500、Core i5-13400、Core i3-13100の3モデルを検証する。第13世代のCore i5は、第12世代Coreでは搭載が見送られていたEコアを搭載したことで、マルチスレッド性能はもとより、PコアとEコアの使い分けによる応答性の向上が期待できるモデルである。
下位モデルはAlder Lake-S世代を流用
改めて第13世代Coreに追加された新モデルのスペックを確認しておこう。型番に“K”がないので倍率変更によるOC(オーバークロック)に対応しないというのは従来通り。だが最大の見どころは、廉価版モデルにも8基ないし4基のEコアが搭載された点といえるだろう。
これまでライトユースには物理6コアで十分とされてきたが、Eコアがバックグラウンドに回った処理を担当し、Pコアを最前面の処理に集中させることで応答性を向上させるような使い方ができる以上、Eコアはあって損のない装備だ。さらにブーストクロックも引き上げられているため、性能向上は十分に期待できる。ただし、第12世代CoreのCore i5と比べると、MTPは117W→154Wないし148Wに引き上げられた。
なお、Core i3-13100についてはCore i5より上のモデルと違い、旧世代と同等の物理4コアでEコアは非搭載。結果としてCore i3-12100のクロックを引き上げただけの製品になっている。
CPU-Zの表示から気がついたと思うが、今回テストするCore i5-13500/13400およびCore i3-13100のL2キャッシュはコアあたり1.25MBとなっている。つまりこれは第13世代Coreの廉価モデルはAlder Lake-Sベースの製品であることを示している。
さらに、DDR5メモリーの対応クロックはCore i9-13900K〜Core i5-13600KまでがDDR5-5600なのに対し、Core i5-13600〜Core i3-13100はDDR5-4800と低く設定されている。これらの情報から、今回Core i5-13600より下のモデルには第12世代CoreのクロックおよびMTPを引き上げたものが使われているということになる。
もう少し詳しく解説しておくと、第13世代コアには3種類のステッピングが使われていることが判明している。それぞれの違いは表の通りだ。各欄の数字はそのステッピングが最大いくつのコアを持っているか示している。なお、GPU欄はどのステッピングも搭載できるので1になっている。
つまり、Core i9-13900K〜Core i5-13600Kまでは、Pコア8基にEコア16基までを収容できる「B0ステッピング」で製造され、Core i5-13600〜Core i5-13400はPコア8基にEコア8基までの「C0ステッピング」、そしてCore i3-13100はPコア6基までの「H0ステッピング」となる。純然たるRaptor Lake-SはB0ステッピングであり、C0とH0ステッピングはAlder Lake-Sベースということだ。
そして今回、Core i5-13400/13400Fには、Core i5-13600Kと同じダイから生まれ、Eコア12基を無効化したB0ステッピングのモデルと、最初からEコアを4基しか持たないC0ステッピングの2種類が“存在し得る”ことがインテルの資料から確認されている。
となると、B0ステッピングのCore i5-13400とC0ステッピングのCore i5-13400では性能も変わってくると考えられるのだが、残念ながらB0ステッピングのCore i5-13400の存在は確認できていない。
とある代理店筋に取材したところ「現状Core i5-13400はC0ステッピング品しか入荷していない」という。Core i5-13500がC0ステッピングであることを考え、ユーザーの混乱を防ぐため仕入れをC0ステッピングのみに絞った可能性がある。今後B0ステッピングのCore i5-13400が入手できたらぜひとも性能差を検証してみたいものだ。
新旧Core i5&i3で性能比較
今回入手したCore i5-13500および13400、さらにCore i3-13100の性能を見るために、前世代のCore i5-12400およびCore i3-12100と対決させる。さらに、K付きで一番下のCore i5-13600Kも比較対象に加えているので、前回の記事と合わせて見れば第13世代CoreK無しモデルの全体像が把握できるだろう。この検証は前回の記事の検証と同一時期(2022年末〜23年始)のものであるため、BIOS等の影響は考慮せずに前回の結果と比較することができる。
検証環境は以下の通りである。Secure Bootやコア分離(VBS)、HDRといった機能はすべて有効化した状態で検証している。
そして前回と同様に、K無しモデルについてはMTP無制限で運用する設定と、MTPを定格に絞って運用する設定の2通りでテストした。以降のグラフにおいて「(MTP ○○W)」と記してあるのは、MTPを定格に絞った場合の性能となる。Core i9-13900やCore i7-13700はMTPを絞った時のパフォーマンス低下が激しかったが、廉価版CPUではどうなのだろうか?
MTPを絞っても差が出ない場合もある
まずは定番の「CINEBENCH R23」から検証をスタートしよう。Core i9-13900とCore i7-13700では、MTPを絞るとマルチスレッドのスコアーは下がり、1つ下のモデルのMTP無制限より遅くなるという結果が得られたが、廉価版CPUでも同じ傾向が見られるのだろうか?
同じコア数であっても、Core i5-13600Kと13500の間にはマルチスレッドテストにおいて20%程度の開きがある。Raptor LakeとAlder Lakeの差は無視できない程に大きいといえるが、シングルスレッド性能ではCore i5-13600Kより約8%下にとどまっている。
そして、MTPを定格(154W)に絞ると、Core i5-13400よりもマルチスレッド性能は下がるが、差は400ポイント程度と僅差である。Core i9-13900やCore i7-13700のMTP制限時に比べると、スコアーの下落率が非常に小さい。
Core i5-13400より下のモデルでは、MTPを絞っても1ランク下に負けることはないどころか、旧世代のMTP無制限時よりスコアーが高いことが読み取れる。また、Core i3-13100については12100からのスコアーの伸びがほぼ感じられないが、Eコアも増えていない上にクロックしか変わっていないことを考えれば当然の結果といえる。なお、Core i3についてはMTPを絞ろうが限界で回そうが誤差程度の差しか出ていない。
続いては「Blender Benchmark」での検証だ。Blenderのバージョンはv3.4.0を指定している。
全体傾向はCINEBENCH R23と変わっていない。Core i5-13400より下のCPUでは、MTPを絞っても絞らなくてもパフォーマンスは誤差程度の差しか生まない(微妙に逆転している部分もあるが、これもブレの範囲といえる)。Core i5-12400から13400への差はEコア4基ぶんの差がキッチリ出ている一方で、Eコア非搭載であるCore i3-12100から13100への差はクロック上昇ぶんの差しか出ていない。
次にPCの総合性能をみる「CrossMark」で検証する。
CPUの性能順に順当なスコアーの伸びが確認できるが、見どころはCore i5-12400よりもCore i3-13100のスコアーのほうが一部テストにおいて高いスコアーを出しているという点だ。
写真や動画編集などに使われる処理性能を見るCreativityテストでは、Pコアの多いCore i5-12400が高スコアーを出しているが、文書やメール作成等に使われる処理性能を見るProductivity、アプリの起動やファイルオープン等を行うResponsivenessテストではベースクロックの高いCore i3-13100のほうがわずかだが高スコアーを出している。
Creativityスコアーのおかげで辛うじてCore i5-12400が総合的に上という判断はできるものの、ライトユースではCore i5-12400とCore i3-13100の差はないと言ってよい。この点において、Eコアが4基増えたCore i5-13400はCore i5-12400はもちろんCore i3-13100にもしっかり差を付けており、上位CPUとしての面子を守った形になった。
クリエイティブ系アプリでも同様の傾向
ここからはクリエイティブ系アプリでのパフォーマンス検証となる。最初に「UL Procyon」の“Photo Editing Benchmark”で検証する。このベンチは「Photoshop」「Lightroom Classic」を実際に運用した際のパフォーマンスをスコアー化するものだ。
比較するCPUが多いためわかりづらくなっているが、Core i5-13600KからCPUの型番や世代が1つ下がる毎にスコアーの上限が段々と下がっていく。MTP無制限と制限下のスコアーを比較すると、MTPを絞ったほうがスコアーは下がるが、無制限時から1〜2%程度しか下がっていない。
続いてはLightroom Classicについて、DNGからJPEGに書き出す処理における検証も行う。100枚の61メガピクセルのDNG画像から、最高画質のJPEGに書き出すが、その際シャープネス(スクリーン用、標準)を付与している。CPU負荷はCINEBENCH R23ほどではないが高い負荷がかかるテストだ。
第13世代Core初出時のレビューだと第13世代が第12世代を圧倒していたテストだった。だが今回、Core i5-13600K対13500で比較すると、コアの設計がAlder Lake-SベースであるはずのCore i5-13500は13600Kに対しそれほど遅くないな、という印象を受けた。
さらに、このテストではCore i5-13500のMTP制限下運用がCore i5-13400のMTP無制限より短時間で処理を終えている。第13世代Core上位のK無しモデルよりも今回の下位モデルのほうが、MTPを制限して運用しても性能はあまり変わらないということになる。
動画エンコードの検証では前回に引き続き「Media Encoder 2023」と「Handbrake」を利用する。
再生時間約3分の4K動画を「Premiere Pro 2023」上で用意し、これをMedia Encoder 2023上で1本の4K動画に書き出す時間を測定した。ビットレートはVBR 50Mbps、1パスのソフトウェア(CPU)エンコードとし、コーデックはH.265とした。
トップはアーキテクチャーや動作クロックに優位性のあるCore i5-13600Kで、その後はCINEBENCH R23の序列と同じような順で処理時間が長くなってゆく。ここではMTP制限下のCore i5-13500はMTP無制限のCore i5-13400より処理時間が長くなっているが、その差は10秒と短い。Core i5-13400はMTPを絞ってもCore i5-12400より遅くなることはないが、これはEコア4基ぶんの差と考えられる。
Handbrakeでは再生時間約3分の4K@60fps動画をプリセットの“Super HQ 1080p Surround”でフルHDのMP4形式に書き出す時間を計測した。
Core i3勢が遅いのは単純にコア数とクロックの問題であり、Core i5-12400と13400もEコアの数だけしっかりと処理時間が短くなっている。全体の傾向はMedia Encoder 2023とほぼ同じだ。
クリエイティブ系アプリの最後は「Topaz DeNoise AI」を使用する。30枚のJPEG画像(24メガピクセル)を用意し、学習モデル“Severe Noise”を利用してノイズ除去処理をする時間を計測した。
Core i9-13900/Core i7-13700の検証では、トップと最下位の差がわずか7秒しか出なかった検証だが、今回のような廉価版CPUでは20秒程度の差に拡大した。とはいえ、Core i5-13600Kと13500、Core i5-13400と12400というように隣り合ったCPUを比較すると差はせいぜい10秒、場合によっては2秒しか違っていない。
ゲームでは劇的にCPUパワーが影響する
ここからは実ゲームでの検証となる。前述の通りGPUはGeForce RTX 3080なので、廉価版CPUにはあまり釣り合わないGPUだが、CPUパワーの違いが高性能GPUの性能に対してどこまで影響を及ぼすか見てみよう。
ここでの検証はどのゲームも解像度はすべてフルHDのみ、画質設定はプリセットの一番下の設定とした。ゲーム内ベンチマーク機能の有無に関係なく、フレームレートは「FrameView」で計測している。
最初に試すのは「Overwatch 2」だ。画質“低”、FSR 1はオフとした。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。
ここまでRaptor Lake-Sの強みを今ひとつ生かし切れていなかったCore i5-13600Kが、ここでは他のCPUを完全に引き離している。同じGPUを使ってもCore i5-13500は13600Kの80%程度のフレームレートしか出せていないのは、Core i5-13600Kのアーキテクチャーやクロックの差に加え、メモリークロックの差も影響していると考えられる。
Core i5-13500より下ではCPUパワーとフレームレートが連動している。Core i5-13500ではMTP無制限でもMTP制限時でもフレームレートはほぼ変化しないが、Core i5-13400より下のCPUではMTPを制限した時のフレームレートが大きく下がる。Core i5-13400と12400の比較では13400のほうがEコアが増えているぶん平均フレームレートが18fps増えているが、Core i3-13100と12100はクロックしか変わっていないため平均フレームレートにほとんど差が出ていない。
ちなみに、Core i5-13500がMTPを絞ってもフレームレートが落ちない点については、TDP 65W版Ryzenレビュー時でも確認されている(この時はGPUが異なる)。
「F1 22」では画質“超低”、異方性フィルタリングは16x、アンチエイリアスは“TAA+FidelityFX”に設定。ゲーム内ベンチマーク(条件は“モナコ”+“ウエット”)再生中のフレームレートを計測した。
ここでもCore i5-13600Kが群を抜いてフレームレートが高く、Core i5-13500〜12400までがほぼフラット。ただし、Core i5-12400はMTPに制限をかけるとフレームレートが下がる。Eコアを持たないCore i5-12400ではMTPを制限するとPコアの処理性能が下がるに従ってゲームの処理も遅くなるが、Core i5-13400/13500ではパワー効率に優れるEコアがバッファーとなって働くためフレームレートに影響が出なかったのではと推察している。
Eコアを持たないCore i3-13100/12100にMTP制限をかけるとフレームレートが下がっている点も、EコアがMTP制限下のパフォーマンスを補完している説を裏付けている。
「Cyberpunk 2077」では画質“低”、FSR 1は無効に設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
このゲームはCPU負荷が高いため、MTP設定がフレームレートに多大な影響を及ぼす。MTP制限下ではフレームレートが低下するが、Core i9-13900/Core i7-13700検証時ほどの落ち込みはない。Overwatch 2やF1 22とはCPUの使われ方が異なるようだ。
「Forza Horizon 5」では画質“最低”、MSAAはx2に設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
MTPを制限してもしなくても、フレームレートにほとんど影響が出ないが、これはCore i9-13900/Core i7-13700検証時とは対照的だ。MTPを無制限に設定するといっても、上位のCore i9やi7とは電力の使われ方が異なるのだ。
ここまで使用してきた4本のゲームベンチ中に、どの程度CPUが電力を使ったかをCPU Package Powerの平均値を使って比較する。
総じてCore i5-13600Kの消費電力が高いが、高フレームレートを維持するためにはそのぶんCPUもゲームの処理を高速で回す必要があるので高くて当然。Core i5-13500以下のCPUは13600Kよりも格段に低い消費電力で動いているが、同時にフレームレートも出ていない。
そこで各ゲームの平均フレームレートをベンチマーク中のCPU Package Powerで割り10倍したもの、即ちCPU Package Power 10Wあたりのフレームレートもチェックしておこう。
前回のCore i9-13900/Core i7-13700の検証ではMTPを絞った時のワットパフォーマンスはMTP無制限時よりもワットパフォーマンスが突出して高くなる結果が得られたが、今回の廉価版CPUでは特に突出するイメージはない。むしろ今回の検証環境では、MTP無制限時のほうがワットパフォーマンスが高い場合もある。
電力を可能な限り消費してパワーを引き出すCore i9/i7と異なり、Core i5のK無しやCore i3は、空冷クーラーでも運用できるようチューニングされているという印象を受けた。
消費電力と熱は?
では、消費電力や熱といった側面を検証する。まずはシステム全体の消費電力をラトックシステム「RS-WFWATTCH1」でチェックしよう。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、Handbrakeエンコード(設定については前述のベンチと共通)時の“高負荷時(最大)”と、処理中盤以降に出現する“高負荷時(安定)”の値をそれぞれ計測した。
また、このテストでは発熱やクロックの推移を見るため、Handbrakeでのエンコードは同じエンコードを3回繰り返している。
Core i9-13900/Core i7-13700の場合、最大値と安定値の差が大きかった(処理中にPower Limit Exceededフラグが立つ)が、Core i5-13600Kより下のCPUでは「MTP無制限であっても」最大値と安定値の差は小さい。ただ、MTPを各CPUの定格値に制限すると165Wあたりで頭打ちになるようだ。
次も消費電力だが、今度はEPS12Vコネクターに流れ込む電力(以降CPU Power)をElmorLabs「PMD」を利用して追跡してみた。グラフはCore i5系とi3系で分割している。
まずCore i5系だが、CPU Powerが最も高いのはCore i5-13600K、その後にCore i5-13500、13400、12400(いずれもMTP無制限)と続く。Core i5-13400のほうが12400よりCPU Powerが高いが、せいぜい10W程度しか増えていない点に注目したい。
一方MTPを制限すると、Core i5-13500〜12400までどのCPUも85W近辺に収束する。処理開始直後のほんの短時間はMTP無制限と同程度の電力消費を記録するが、すぐに85W程度まで低下する。
Core i3-13100と12100に関してはMTP無制限と制限時の差が小さいため、グラフが非常に見辛くなってしまったが、Core i3-13100が83W前後(時折90W超)、MTPを制限すると76W前後にまで下がる。Core i3-12100はMTP設定の差はほとんどCPU Powerに表れていないといった感じだ。
続いてはこのエンコード処理中のCPUクロック(全コアの平均値)やCPUパッケージ温度を追跡してみよう。クロックと温度の追跡は「HWiNFO Pro」を使用している。
Core i5の場合、MTPを無制限にするとクロックはほとんど変動しなくなる。もっと正確に言うと変動はするが変動幅が非常に小さく、さらに平均をとっているため変わっていないように見える、といったところだ。ここでCore i5-12400のクロックはCore i5-13400や13400よりも微妙に高くなっているが、これは第13世代のCore i5にはPコアより低いクロックで動作するEコアが搭載されているためだ(全コアのクロックの平均をとる場合、コア数が少なく、かつPコアしかないCore i5-12400のほうが高い値が出やすい)。
Pコアだけのクロックを見るとCore i5-13500が4.5GHz、Core i5-13400が4.1GHz、Core i5-12400が4GHzと、CPUのモデルが上になるほどクロックも上昇する。MTPを定格に絞ると上位モデルほどクロックが下がっているように見えるのはこのためだ。Core i3に関してはほぼ見たまま。Core i3-13100と12100の差は200MHzしかない。
CPU温度に関してはCore i5-13600Kが79℃前後と突出して高い一方、Core i5-13500は67℃前後、Core i5-13400は49℃前後と下のモデルに行くほど劇的に温度が下がる。ただ、Core i5-13500/13400の温度が20℃近く違うのは興味深い。360mmラジエーターのハイエンド簡易水冷だからこの温度に納まっているが、より安価な簡易水冷や空冷クーラーで運用するのであれば、Core i5-13400のほうがより扱いやすい(=空冷向き)CPUといえる。
最後に、CPUのワットパフォーマンスもチェックしておこう。前述のHandbrakeエンコード検証で得られた「エンコードのフレームレート」を、ここで観測されたCPU Powerの平均値で割り、それを100倍した「CPU Power 100Wあたりのエンコード効率」を求めた。
Core i9-13900/Core i7-13700検証では、MTPを無制限にするとエンコード効率が劇的に低下し、むしろMTPを制限したほうが効率が上がるという結果になっていた。
今回の検証でもCore i5-13500〜12400はMTPを絞ったほうが若干ワットパフォーマンスが向上したが、下位モデルになるほど無制限設定時とのギャップが小さくなる。Core i3ではほとんど変わらないレベルにまで縮まった。
※お詫びと訂正:記事初出時、CPU Power 100Wあたりのエンコード効率において、誤ったグラフを参照しておりました。訂正してお詫び申し上げます。(2023年1月27日)
まとめ:Eコア増設によりCore i5は順当進化
以上でK無し第13世代Coreの下位モデル検証は終了となる。今回K無しのCore i5にもEコアが搭載されたことで、マルチスレッド性能が向上した点は高く評価できるものだ。懸念される消費電力については第12世代Coreと比較すると確かに増加はしたが、Core i9-13900Kや13900KSのような荒ぶりは観測できなかった。
MTPを無制限、かつフルロードに近い状況であっても消費電力はマイルドである。特にCore i5-13500はAlder Lake-Sベースという点において(筆者のようなテック系オタクには)残念ではあるが、Eコア8基が生み出すマルチスレッド性能は魅力的。現在の売れ筋CPUになるのも頷ける話だ。
ただ、残念でならないのは最下位のCore i3-13100の存在だ。H0ステッピングを採用している段階でEコアの搭載は期待できない(=Eコアを製造時より排除している)が、Core i3-12100との違いがクロックしかない。廉価版モデルにAlder Lake-Sを使うという決定をした瞬間からこの結果は決まっていたようなものだが、もしCore i5-13600以下もRaptor Lake-Sベースで作っていたら、今回のベンチマーク結果ももっと違ったものになっていただろう。
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