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シーイヤーの立体音響技術がスゴイ? finalの「ZE8000」も頼ったその技術を独占取材

ASCII.jp / 2023年1月24日 13時0分

シーイヤー
CearFieldのデモ機(独自基盤と筐体)

finalへの技術協力もしている、技術力を持つメーカー

 シーイヤーはCES 2023に合わせて、独自の立体音響技術を用いたワイヤレススピーカーを発表。その実機を使用したデモの試聴ができた。

 シーイヤーはオーディオの音響ソフトウェア開発が主業務であり、特に立体音響の技術に強い会社だ。設立は2018年と新しいが、元々は精密加工や金型製造などを手掛ける共栄エンジニアリングの音響部門として2011年から活動をしている。音響関連では音の指向性や立体音響に強い点が特徴だが、これはメンバーが大学時代から取り組んでいたテーマを元にしているからだそうだ。この分野ではいくつかの特許を保有している。

シーイヤー
開発担当の廣木洋介氏、村山好孝氏、高岡仙氏

 活動としては様々な会社に音響に関わる信号処理の技術的なサポートや評価をしている。自社内に無反響室も備え、最近では「Snapdragon Sound」のテクニカルサポートや通話品質の評価といった業務が多いという。自社技術としては空間音響技術に関わる「Cear Field」、ビームフォーミングマイク技術に関した「Cear Microphone」、そして製品開発に関する「Cear Products」がある。

 実はfinalの「ZE8000」発表会の際にも細尾社長が、技術協力先として何度かシーイヤーの名を上げていた。

 ZE8000ではアクティブ・ノイズ・キャンセリング(ANC)のチューニングをサポートしたほか、マイクのビームフォーミング技術の一部もサポートしている。このZE8000にも使われたシーイヤーの技術を用いたビームフォーミング・マイクについてはテスト機材を用いて実際にデモをしてもらった。試してみると、かなり指向性が高いことがわかる。マイクの方向から外れた無駄な音はほとんど拾わずに話者の音だけが聞こえる。また少し離れた場所の会話を拾う点も特筆できる利点だと感じた。

 ZE8000に関してはSnapdragon Soundのプレテストもサポートしている。ZE8000の発表会にはSnapdragon Soundの試聴機が置かれていた。

 このようにB2Bで他社に技術提供をする点では、以前に書いたインターフェイスに似た立ち位置の企業と言える。

独自のソフトウェア技術を自社開発製品にも応用

 そんなシーイヤーは、自社でも製品開発をおこなっている。

 2015年にはビームフォーミングマイク技術を応用した「DOMNO 2MIC」を開発し、CESのInnovation Awardを受賞している。これはMEMSマイクを2基用いている。iPhoneのLightoning端子に装着可能なMFIアクセサリーのマイクだ。iPhoneはカメラに比してマイクの性能進化が遅いので、現在でもVlog用途などに活用できそうな製品に思える。

シーイヤー
DOMNO 2MIC
シーイヤー
ビームフォーミングマイクのデモ機材

 また2016年にはすでに触れた独自の空間音響技術Cear Fieldを用いたBluetoothワイヤレススピーカー「pavé」のクラウドファンディングを実施している。これはキューブ状のコンパクトなワイヤレススピーカーだが、Cear Fieldによりかなり広い音場を作り出すことができる製品だ。

シーイヤー
pavé

 CES 2023に出品した機材は、このCear Fieldでは最新の第5世代技術を搭載したBluetoothワイヤレススピーカーだ。

 ただし、見かけ上は普通のBluetoothワイヤレススピーカーにすぎない。それもそのはずでデモ機は筐体やスピーカーなどのハードウェアを市販のBluetoothスピーカーから流用して作っている。

 真のポイントはその内部に据えられた、シーイヤーの製作による基板にある。この基板にはクアルコムの最新のSoCが採用されていて、ソフトウェアの中はCear Fieldの第5世代技術が隠されている。

 早速その音を聴かせてもらうとちょっと驚いた。

 目の前に置かれた小さなワイヤレススピーカーから出ているとは到底思えない広い音場だからだ。両手を広げた幅ほどはあるだろうか。実際に音が回り込んで聞こえるほどで、実際にスピーカーがあるのではないかと思えてくる仮想音場で、指で触りたくなるほどの臨場感がある。

 もう一点気がついたことは、音楽そのものが鮮明でクリアに聞こえることだ。とても明瞭感が高いサウンドで、オーディオマニアでも満足できるような透明感が高いサウンドである。

 切り替えスイッチで元の製品の音に戻すと、まったく違う音がするのにも驚いた。いわゆる一般的なワイヤレススピーカーの音になる。とても同じハードウェアから出ているとは思えないほど音が異なっているため、耳がついていけないほどだ。いわゆる「頭がバグる」というやつだ。

シーイヤー
CESでの展示風景

 第2世代のCear Fieldを用いたpavéとも比較試聴してみた。pavéも確かにサイズと比較すれば広い音場だが、今回のデモ機には到底及ばない感じではある。また音のクリアさも劣っている。音が濁らないのは音を立体化したときに副作用が出てしまうので、それを抑える独自のノウハウがあるということだ。再生にもビームフォーミングの考え方が適用できるという。それを使うと音源がきちんと分離されて濁らないように聞こえるという。従来は信号処理の速度が遅く、実現が難しかったが、クアルコムの最新のSoCならば、プログラミングの柔軟性と処理速度の高さを兼ね備えている。ようやくこのレベルのサウンドが可能になったそうだ。

低価格で魅力ある音が出せる製品の登場に期待

 デモを聞いていて思わず「これが欲しいのでどこで売っているんですか」と聞いてしまったほどだが、もちろんこれはデモ機であり、手に入れることはできない。市販品を改造しただけでこんなに優れた音が出せるのには正直驚いた。

 シーイヤーはスピーカーもきちんと設計したものにすればもっと立体音響の効果は高いと語っている。そこでシーイヤーは製品化を目指した開発を進めている。製品は低価格で実現できそうだということだ。もちろんSnapdragon Sound対応で、さらにLE Audioにも対応する予定だという。

 こうした立体音響の効果は、耳の個人差にも左右されるという。シーイヤーでは将来的に、AIを空間オーディオに応用することでこの個人差を解決する方法に取り組んでいくつもりだ。

 立体音響・空間オーディオはこれから進化していく技術ではあるが、それがピュアオーディオのマニアにも受け入れられるかは純粋に音質の問題もある。音が広がっても音自体が悪ければオーディオ的には受け入れられないだろう。音質と立体音場の両立に回答を見出せそうなシーイヤーの技術に注目していきたいと感じた。

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