フロッピーやMD、CD-Rに写真を保存できるモデルも! ソニー「サイバーショット」シリーズ
ASCII.jp / 2023年1月30日 12時0分
デジカメの登場で 写真はより身近で手軽なものになった
写真を撮りたいと思ったら、すぐにポケットからスマホを取り出してパシャ。息をするのと同じくらい当たり前の光景になりました。スマホが便利すぎて、コンパクトデジタルカメラは今や瀕死状態です。そんなコンデジの前のフィルムカメラの時代は、写真を撮ったあとに現像するというワンアクションが必要でした。
カメラ本体もそこそこ高く、フィルムを買い揃えて、撮るたびに限りあるフィルムの残量を気にしながら撮影して、撮ったらカメラ屋さんに持っていって現像してもらって。さらに現像するまでどんな仕上がりなのかもわかりません。めんどくさすぎるこのプロセスを破壊したのは、富士フイルムのインスタントカメラ「写ルンです」でした。
数千円出して「写ルンです」を買えば、撮って使い切ったら現像。もうこれだけで神機です。後年、フラッシュもついたモデルも登場し、私の大学の卒業旅行までは大活躍していた記憶があります。ですが、そんな写ルンですにも時代の波が押し寄せます。転換期になったのは1994年頃、ついにデジタルカメラが世の中で発売されたのです。
内蔵ストレージに写真をデジタルデータとして保存でき、何度も使い回せる画期的なデジタルカメラは、各社からいろんなアプローチで様々モデルが登場することになります。
ソニーのデジカメ第1弾は 他メーカーに少し遅れて1996年に登場
我らがソニーは1996年、サイバーショットの初代モデルとなる「DSC-F1」を発売しました。デジタルスチルカメラという文言はなく、“サイバーショット”というだけあって、その姿形はクラシカルなカメラとはまるで異なるデジタルアイテムともいうべきコンパクトかつシルバーメタリックなボディーデザインを採用していました。金属素材を使っているだけあって、手にしたときのひんやりとした手触りと堅牢性を兼ね備えていて、なんともスタイリッシュ。
特徴的なのが、回転式レンズです。レンズ部分だけを回転させて自撮りしたり、ローアングルの撮影もとても楽ちん。全体のデザインをくずさず、かつレンズの回転軸に連動して、本体の右側に回転式のロックダイヤル、左側に電源とモード切替を兼ねたダイヤル式スイッチなど、今見てもよくできたデザインでした。
カメラの性能としては、1/3インチの総画素35万画素CCDセンサーに、4.8mm F2.0の固定焦点でズームなどは一切ありません。背面にある1.8型の液晶モニターは、さすがに今みると小さすぎるというか、よくこのサイズで認識できてたなと思います。メニュー操作は、この頃のソニーで流行っていたクルクルまわしてピっと押せるジョグダイヤルがとても便利でした。
初期のサイバーショットは、外部のメモリーカードには対応せず、内部にあるフラッシュメモリーのみで記録します。容量にして4MB。記録できる枚数は公称値で、108枚(エコノミー)、58枚(スタンダード)、30枚(ファイン)。35万画素しかない画像データにもかかわらず、たったのこれだけしか撮れませんでした。
すぐに容量いっぱいになる画像をどうやって保存するのかというと、当時のWindowsに備わっていたRS-232Cに接続して転送という方式です。しかも、本体だけでも8万8000円もするのに、RS-232C出力する専用ケーブルが別売になっていたので、買い揃えるだけでも結構な出費だったのです。
同時期に発売されたソニーの昇華型プリンター「DPP-M55」には、赤外線で転送できる機能をそなえていたので、ワイヤレスで写真を転送して印刷できる! と意気込んで試してみたものの、おそろしいほど遅くて数枚の写真に数分間待たされ続けるのは苦行以外の何ものでもありませんでした。
あと辛かったのはバッテリーの持ちがなんとも短いこと。リチウムイオンの専用バッテリーをフル充電で27分というのはカタログスペックであって、実際につかうとまぁ驚くほどに早くなくなってしまい。 これもほぼお約束のようですが、真冬の寒い時期になるともっと短くというか、使いだしたかと思ったらすぐにバッテリーがなくなるなんてことも日常茶飯事でした。
ただ、ガジェットらしくビデオ出力の端子もあり、テレビに撮った画像を映し出してみんなで鑑賞会をするという使い方としては良かったように思います。
1997年に発売された、2代目“サイバーショット”「DSC-F2」では、シャッターを押してからの画像を保存するまでの時間が前モデルから半分に。3代目“サイバーショット”「DSC-F3」では、新色としてブラックのモデルを追加。内蔵フラッシュメモリーが従来モデルから2倍の8MBになりり、セピアやモノクロ画像を加工する「特殊撮影機能」などが追加されました。
今俯瞰して見ると、それを新モデルというの? というくらいに進化のスピードがゆっくりに感じられます。
今となっては信じられない 挑戦的なモデルを続々リリースしたソニー
ただ面白かったは、この頃ソニーは、サイバーショットの定番シリーズに終わらず、チャレンジングなデジタルカメラを発売してきたこと。
フラッシュメモリー内蔵型のサイバーショットとは別のアプローチとして、記録用メディアにMD(ミニディスク)を採用した「DSC-MD1」や、フロッピーディスクを採用したDigital Mavica「MVX-FD5」なるものを発売しています。
「DSC-MD1」は、音楽記録専用だったMDを記録メディアにして、写真と同時に約40分の音声を同時に記録できたり、MDレコーダーとして利用ができました。
やっぱり極めつけは、3.5インチフロッピーディスクに写真を記録するDigital Mavica「MVX-FD5」でしょう。カメラとして使うには大きくて、当時でさえなぜフロッピーディスクを使うのか? という疑問がありました。ところが、フロッピーディスクの最大の利点はなにしろ1枚のコストが激安で、しかも当時のパソコンには必ずといっていいほど搭載されていたフロッピーディスクドライブに差し込むだけという利便性がありました。
実際にコレを使った記憶があって、覚えているのはやたら海外の人からのウケがよかったこと。おそらく体格の良さからしてカメラの大きさも気にならなければ、フロッピーディスクをフル活用していたと思われ、「ファンタスティック! イッツァソニーズカメラ!」とものすごいハイテンションで話しかけられた事を鮮明に覚えています。
その後、調子にのったのかチャレンジ精神旺盛なのか、2000年には同様のコンセプトで8cmCDを記録媒体にしたCD Mavica(CDマビカ)なんてものも出てきました。最終的には、ソニーがなんとしてでも全世界に普及させたかった「メモリースティック」を採用したモデルが主流となるのですが、またその「メモリースティック」も……。
その悲しい話はまた今度ということで。
筆者紹介───君国泰将
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