1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

リサイクル材約67%使用のarrows N F-51Cを最速分解! エシカル・サステナブルな裏側も全部見せます!

ASCII.jp / 2023年2月10日 11時0分

arrows N F-51C

 FCNTはスマートフォンブランド「arrows」を、地球環境を大切にするエシカルライフをリードするブランドにリニューアルし、ロゴのデザインも新しくした。リブランドの第1弾として2月10日に発売されたのが「arrows N F-51C」(ドコモ)だ。電気電子部品を除く、部品総重量の約67%にリサイクル材を使用したモデルである。

 そもそもホントに約67%も使ってるのか? というASCII.jpの疑問に、FCNT側は端末を分解という力技で答えてくれたので、まずは分解したところを写真を動画で紹介しよう。

最速分解!? arrows N F-51Cをバラバラにする!

 のちほど登場するFCNTの田中氏が、arrows N F-51Cを分解して中身を見せてくれた。なかなかスマホの中身は見ることはないと思うので、どのような構造になっているのかをこの機会に覚えておいてほしい。

実はリアパネルは簡単に取り外せるようになっている。修理のしやすさや部品のリサイクルのために、解体しやすい仕様にすることも業界の方向性だという
arrows N F-51Cのリアパネルは両面テープで接着し、固定されている。両面テープを貼り付けたものはリサイクルできないので、ほかの素材や方法で固定することを検討する必要があるそうだ
オレンジ色の四角い部分がFeliCa、その下の黒いペラペラのシートが熱を拡散させるためのグラファイトシート。内部はたくさんのネジで固定されていて、今回はドライバーを用いて手作業で開けたが、工場では電動ドライバーで締めている
内部のアルミパネルには再生アルミを用いて、細かい部品には再生プラスチックが用いられている

 以上のように、リサイクル材が多く使われていることがわかってもらえたかと思う。このような“地球にやさしいスマホ”を生み出す背景には、どんな苦労があったのか? 企画・開発に携わった方々に、あらためて話を聞いた。

東京都内のFCNTオフィスでお話を聞いた

arrows N F-51Cのターゲットは エシカルな人たち

──まず、arrows N F-51Cのターゲット層を教えてください。

吉澤氏 arrows N F-51Cはエシカル、サステナビリティをテーマに開発したスマートフォンです。端末や個装箱に環境配慮材を使うだけではなく、中身も電池の長寿命化を実現する充電制御技術を搭載するなど、永く快適に使っていただけるよう配慮しました。すでにエシカルな行動をされている方や、関心を持っている方に選んでいただきたいのはもちろんですが、現在arrowsをお使いいただいている方にもぜひリピートしていただきたいですし、幅広いユーザーに使っていただきたいですね。

arrows N F-51Cの企画を担当した、プロダクト&サービス事業本部 プロダクト&サービス企画統括部の吉澤光喜氏

──エシカルに関心を持つ方とは、具体的にどのような方でしょうか?

吉澤氏 従来の端末ではメインターゲットとして想定する年齢層がありましたが、今回は特に年齢は定めていません。arrows N F-51Cの開発にあたって、一般の方々への調査も行ないましたが、エシカルを意識することは年齢とは関係ないようです。たとえば、若い方は、学校でエシカル消費に関する教育を受けるなど、関心を持っている方が少なくありません。お子様をお持ちの親世代は、子供の将来のために、そういうマインドで行動されている方もいらっしゃいます。会社でSDGsの取り組みが始まったことで社会問題を知り、エシカル消費に関心を持った方もいらっしゃいます。

──エシカルを訴求する上で、デザインでこだわった部分を教えてください。

淺野氏 エシカルに関心がある方は、無駄がなく質素でシンプルなものを好まれると思います。そのため、シンプルでニュートラルなデザインを目指しました。長く使っていただきたいので、なるべくクセがなく、普遍的なデザインがいいとも考えました。しかし、あまりにもクセがないと、親しみにくい印象になるので、少しアイコニックな要素を持たせるために、メインカメラの周りにはレンズ保護を兼ねたリング形状を施しています。また、よく見ないとわからない部分ではありますが、アルミのカメラフレームはストレートに立ち上げるのではなく、上に向かって少し絞り込ませることで、やさしさを感じていただけるようにしました。

arrows N F-51Cのデザインを担当した、プロダクト&サービス事業本部 プロダクト&サービス企画統括部の淺野達哉氏
このカメラ周りのデザインにもこだわりが詰まっている

──実際に手にすると、非常に持ちやすい印象を受けました。

淺野氏 持ちやすさは、従来のarrowsを踏襲しています。FCNTは日本のメーカーで、日本のお客さまに使っていただく製品を作っています。今回あらためてユーザー調査も行ないましたが、この72mmが最適なボディー幅と考えています。それから、これまでのarrowsは電源キーの下にボリュームキーを配置していましたが、arrows N F-51Cではボリュームキーを電源キーの上に配置しました。arrows以外のスマートフォンを使われている方の使い慣れた配置でもあり、初めて使う人にも快適に操作していただけると思います。

──それでは、ボディーカラーでこだわった点は?

淺野氏 カラバリはフォグホワイト、フォレストブラック、ブラッシュネイビーの3色を用意しました。フォグホワイトは、漂白された白ではなく、少し濁った風合いのある白に。フォレストブラックは、ただの黒ではなく、少し緑がかった色にしました。ブラッシュネイビーはドコモオンラインショップ限定です。フレームはブラックと同色ですが、リアパネルには、リサイクル材を使っていることを意識していただけるように細かい模様が入っています。グラデーションを入れて、朝焼け感と言いますか、これからの光を予感させる演出も施しています。

フォグホワイトは真っ白ではなく、どことなくグレーにも見える

──パッケージもエシカル仕様なんですよね?

淺野氏 個装箱の素材にもこだわっています。FSC®認証紙(適正に管理された森林から産出した木材を使用)を受けた紙を使い、印字に使うインクも環境に配慮されたバイオマスのものを使っています。リサイクルに出せる素材で、リサイクルに出しやすいように簡単に折りたためるようにしました。ですが、丈夫でなければならないので、構造としては結構複雑なんですよ。

個装箱には、arrows N F-51Cに使われているリサイクル材の情報や、資源としてリサイクスできることの説明などが記されている
箱もこのようにたためる。裏面の情報量が多いが、インクはバイオマスインキを使用

吉澤氏 箱状に固定して止める部分なども、無駄をはぶき、必要最低限の紙で作っています。

リサイクルできる紙を使った上で、最小限で丈夫なものを作るように配慮されている

田中氏 古紙や植物繊維を使って成形したパルプモールドを用いるメーカーもありますが、自治体によっては古紙としてリサイクル出来ない地域もあります。

渡邊氏 こうした素材の選定や、環境に配慮した物づくりが評価されて、2022年のグッドデザイン賞もいただきました。

リサイクル材の選定から携わった、プロダクト&サービス事業本部 プラットフォーム開発統括部 プリンシバルプロフェッショナルの田中健太郎さん(右)と、REINOWAホールディングス グループ経営戦略室 広報の渡邊楠都子さん(左)

──本体のデザインで最も苦労されたことは?

淺野氏 リサイクル材を使うことによって、どういう色になるのか、ということには悩みました。事前に調べた情報では、アルミはさほど心配はないが、プラスチックは黄ばむかもしれないと言われていたので。そのため、黄ばんでも大丈夫な色を用意する必要がありました。しかし、実際に作ってみると、再生プラスチックを用いたパネルのほうがうまくいき、むしろ、アルミの色が黒く沈んだりしました。それを沈まないように持ち上げるなど、色の調整には結構苦労しましたね。

──arrows N F-51Cは従来のarrowsと同じように、MIL規格の試験をクリアしています。リサイクル材の強度は問題ないのですか?

田中氏 リサイクル材とバージン材では、まったく変わらないと言っていいほど、強度は変わりません。それは、あらゆるリサイクル材が丈夫というわけではなく、いつも使っているものと変わらない強度の材料を探して、本当に変わらないのかどうかを確認するという地道な作業を経て、素材の採用にいたっているということです。

リサイクル材だから強度が弱いということは決してない

吉澤氏 arrowsは独自の落下試験を行ない、画面割れに強いという特徴を持っていますが、arrows N F-51Cはもちろんその試験もクリアしています。

渡邊氏 リサイクル素材だからといって脆いわけではなく、今までのarrowsのDNAを受け継いで、堅牢性も備えている。それがarrows N F-51Cの大きな魅力だと思っています。

──最近は従来モデルに比べると端末価格が高くなってきていますが、リサイクル材を使った場合の製造コストはどうなんでしょうか?

田中氏 現状は、世界的にまだリサイクル材のボリュームが少ないこともあり、バージン材よりもコストがかかります。しかし、リサイクル材の利用が増えていけば、将来的に、バージン材よりもコストが下がる可能性はあると思います。

渡邊氏 価格はキャリアさんが決めていますが、エシカルの意識があるお客さまは、 安いから飛びつくという方 ではないと思います。

──外見だけではリサイクル材を使っていることがわかりにくいですよね。リサイクル材を使っていることを知らずに購入される方もいるのでは?

田中氏 普段使っているスマホと何も変わらないように置き換えたいという思いがありますから、知らずに買って普通に使っていただけたら、むしろうれしいです。たとえば、アウトドアに特化したスマホなど、それがひと目でわかるデザインになっているものもありますが、今回のarrows N F-51Cは、環境に配慮したことをわかりやすくすると、購入していただけるユーザー層を狭めてしまうかもしれません。そうならないように、リサイクル材を使いつつ、今までと変わらない見栄えを実現することを目指しました。

淺野氏 長く使っていただきたいので、今、ぱっと見てわかりやすいデザインであったとしても、4年後にはどうかなぁと思ったりもします。そういう意味で普遍的なデザインにしましたが、4年後にはリサイクル材を使うことが当たり前になっていてほしいです。

──ホーム画面のデザインも、かなり変わりましたね?

吉澤氏 arrowsのリブランドを機に、UIも刷新しました。われわれが掲げたビジョンに合わせて、あらゆる年齢層の方に、そして初めてarrowsを使っていただく方にもわかりやすいようにしました。

「arrows N F-51C」のホーム画面。ホームのUIも刷新された
こちらは「arrows We」のホーム画面。大きく変わったことがわかる

淺野氏 使う色合い、イラストなども一新しました。すべてを変えたわけではなく、いいところは残して、これまで足りなかった部分を底上げしました。

吉澤氏 たとえば、arrows独自の機能を紹介する「arrowsオススメ機能」アプリのデザインは全面的に変えました。初めてarrowsを使っていただく方にもわかりやすくしたので、ぜひ使ってもらいたいです。

FCNTが掲げるエシカルなスマホ作り

──arrows N F-51Cに用いたリサイクル材について詳しく聞かせてください。

田中氏 arrows N F-51Cはミドルレンジなので、外観に高級感を持たせるためにアルミを採用することを前提にしていました。実は、われわれが触れるステンレスはほとんどがリサイクル材ですが、アルミは見た目ではわからないようなリサイクル材がなかなかなかったんですよ。アルミを生産する工場から出た、アルミくずを100%再利用した再生アルミを使っています。それを金属ケースとカメラのフレームに使っています。淺野が申し上げたように、アルミを再利用すると黒っぽくなるのですが、そうならないように調整して、このデザインを実現しました。

リサイクル材を使った部分について説明する田中氏
6つのパネルが立っているが、一番左のディスプレーと右から3つ目の基盤の部分以外にリサイクル材が使われている

──背面パネルに使った素材は?

田中氏 使用しているプラスチックは、リサイクル材を約64%使用しています。しかし、われわれとしては、リサイクル材を使っていることをわかるようにするのではなく、今までと変わらないデザインや質感にしたかったので、素材探しには非常に苦労しました。メーカーさんがあまりアピールしていなくて、最後の最後に見つけた材料です。

淺野氏 リサイクル材が約64%とは思えないほど透明で、色を作る意味ではやりやすかったですね。心配していた黄ばみも出ずに、狙い通りの色にすることができました。あとは、デザイン要素や開発設計含め、「フェイク的なモノづくり」をしたくなかったんです。見た目がエコっぽいのにパーセンテージが実は低いとか、嘘や見せかけだけのデザインや製品づくりにならないように、リサイクル材の数字を出すことを含め、誠実なモノづくりを心掛けています。

田中氏 カメラのフレームやリアパネルといった、ユーザーの目に触れる部分には“プレコンシューマリサイクル材”を使いました。製品化されて消費者が使った後のゴミではなく、工場で発生したゴミや廃棄物を使ったリサイクル材です。実際には見えない内部の部品や、樹脂の表面に塗装する材料などは、たとえばペットボトルや照明のカバーなど、消費者から回収された材料から作られた“ポストコンシューマリサイクル材”を使っています。

──ここにある再生プラスチックは白や黒に着色されていますが、もともとはどのような色なのですか?

田中氏 いろいろな色が混ざった、ごちゃごちゃした色です。たとえるなら、小学生が絵の具の筆を洗うバケツのような(笑)。

──ディスプレーやバッテリーは、従来通りの素材ですか?

田中氏 ディスプレーやバッテリー、基板といった、電気電子部分は従来と同じものを使っており、それらを除いた部品の総重量の約67%にリサイクル材を使用しています。しかし、今後はそうした部品も、環境に配慮した材料に置き換えていきたいと考えています。日本のスマホメーカーとしてわれわれが一歩を踏み出したと自負していますが、必ずしもトップランナーにならなくてもいいとも思っています。業界全体でリサイクル材を使えばコストも下がりますし、周りを巻き込んで、エシカルやサステナブルなモノづくりを実現する方向に進んでいければいいなぁと。そのために、いろいろなメーカーさんとできることはないかと相談している段階です。

──arrows N F-51Cは、本格的にリサイクル材を使った第1弾ということで、開発にも時間を要したのでしょうか?

田中氏 新たに使う材料を探して、調査をするのに4~6ヵ月くらいかかりました。その分は、通常モデルよりも長くかかっています。2021年6~7月頃から材料についてのヒアリングを始めたので、発売までは1年半くらいでしょうか。

吉澤氏 企画もほぼ同じ時期から動いておりました。

エシカル・コンシェルジュを取得 そして新たに見つかった課題

渡邊氏 吉澤さんは、arrows N F-51Cの企画のために、エシカル・コンシェルジュ講座も受講されたんですよ。

吉澤氏 エシカル協会(一般社団法人)が主催する講座で学んで、エシカル・コンシェルジュを取得しました。「エシカル」と言っても、環境問題だけではなく、食品ロス、アニマルウェルフェア、人権問題など非常に幅広くて、いろいろな分野の講師の話を聞けて勉強になりました。今、地球でどんなことが起きていて、どんな行動が必要で、その行動がどのように役立つのかということを、全部つなげて理解できるようになったと思います。arrows N F-51Cの企画・開発に活かせたことはもちろん、今後の製品づくりにも役立てていきたいです。

──arrows N F-51Cの開発を経て、新たに見つかった課題はありますか?

田中氏 リサイクル材を使って作ったものを次にどうするのか? ということも考えていかなければならないと感じています。スマートフォンは家電リサイクル法の対象になっていないので、リサイクルという意味では弱いのが現状です。キャリアさんや他社さんも含めて、業界全体で何か取り組みができればいいなぁと。

★★★★

 また、今回のインタビューには、事業企画やアライアンスを担当されているプロダクト&サービス企画統括部プリンシパルプロフェッショナルの外谷一磨氏にもオンラインで参加いただいたので、arrowsの今後のビジョンについてうかがった。

外谷氏 arrows N F-51Cをきっかけに、サスティナビリティということをシンボリックに打ち出させていただきましたが、これからも環境に配慮した製品を提供していきます。具体的には、2025年度までに、すべての商品に環境にやさしい物づくりを適用させていきます。arrows N F-51Cを製造する国内の工場では、再生可能エネルギーを使っていますが、2023年度中には新製品でないものも含めて、われわれが国内工場で製造する全製品については、再生可能エネルギーに切り替えていきます。

 そして、最も大切なことは、作ったものの本体や部品を回収して再利用したり、次の形に生まれ変わらせたりすることと考えています。そうしたサーキュラーエコノミー(循環型経済)をどうやって作っていくか? まだ入り口に立ったところなので、いろいろなパートナーさんと相談しつつ、次のモデルでは、サーキュラーエコノミーも考慮に入れて、商品の素材や形状を考えていきたいと思っています。

★★★★

 さて、インタビューには、FCNTのオウンドメディアを担当している入社2年目の徳本実智留さんが勉強として同席されていた。最後に徳本氏にもarrows N F-51Cへの思いをうかがった。

徳本氏 arrows N F-51Cに使われている素材や設計の話などを聞いて、よりいっそうarrow Nへの理解が深まりました。ユーザーのみなさまは、まだ「arrows=エシカル、サステナブル」というイメージを持たれていないと思うので、それを伝えていき、世の中にエシカルなマインドが広げていけるメディアを作っていきたいと思います。

営業統括部 プロモーション担当の徳本実智留さん。シニア向けの「らくらく情報局」などのメディアで記事を執筆している

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください