空間オーディオ再生充実! 第2世代「HomePod」速報レビュー
ASCII.jp / 2023年1月31日 23時0分
アップルがSiri搭載のスマートスピーカー「HomePod」の第2世代機を2月3日に発売します。初代機からの進化点を整理しながら、新しいHomePodの実力をレポートします。
2年ぶりに復活した大きいほうのHomePod
アップルのHomePodは初代機が2019年夏に日本で発売され、2021年春に販売を終了しました。今回登場する第2世代機は、初代機の設計とデザインをベースに音質を強化。さらにスマートホームに関わる機能を追加しています。
デザインは初代機と同じ茶筒型。第2世代機は本体の高さ寸法が4mmほど短くなり、質量は0.2kg軽くなりました。
カラーバリエーションは、ミッドナイトとホワイトの2色。ブラック系の名称がスペースグレイからミッドナイトに変わっていますが、iPhone 14やApple Watchのミッドナイトのような青みを抑えて、色合いをブラックに寄せています。100パーセント再生メッシュ生地で覆われた筐体のエレガントな雰囲気も、初代機から継承しました。
筆者も自宅でHomePodを使いながら、いつもメッシュ部分をキレイに保つことに腐心しています。アップルが公開している「HomePodのお手入れ」の方法には、乾いた布によるから拭き、または少し湿らせた布でホコリを拭き取りながら定期的に清掃することが推奨されています。以下は完全に筆者我流のメンテナンス法なので強くおすすめはしませんが、毛の柔らかなブラシを使うとメッシュ部分のホコリがキレイに払えます。
「頭脳」はよりスマートに。音響面では細かな仕様変更も
新しいHomePodはアップルが独自に設計するシステムチップのS7と、iOSと連携するHomePod独自のソフトウェアにより制御されます。本体には360度へ自然に音を広げる5基のビームフォーミングトゥイーターによるアレイ、および低域用の4インチウーファーを内蔵しています。
それぞれカスタムメイドのユニットによるシステム構成は新旧世代機で変わっていませんが、トゥイーターの数は7基から5基に変わりました。音のリスニング感は後ほど報告します。
なお、Siri用のマイクも6基から4基に変更されています。その数は減っていますが、音声操作に対する感度は変わらないように感じます。マイクのレイアウト、コンポーネントの性能など新世代のHomePodに設計を最適化したのだと考えられます。
無線通信機能はWi-Fi対応。前機種はIEEE 802.11ac対応でしたが、第2世代機ではIEEE 802.11nに止めています。新しいHomePodは、無線メッシュネットワークに対応する低電力消費が特徴のIoT無線通信規格「Thread」をサポートしていることから、Wi-FiとThreadの両方のインターフェースにより、屋内の電波が届きにくい場所にHomePodを置いた場合も高い接続性能を確保するのだと思います。
スマートホームの新規格「Matter」に対応
第2世代のHomePodは、スマートホームの新しい標準規格として2022年から本格始動した「Matter(マター)」にも対応します。アップルのMatter対応製品は、第3世代のApple TV 4K以来です。同じMatterに対応するスマートホームデバイスとはWi-Fi、またはThreadによってつながります。
現在、HomePodではアップル独自のスマートホーム向けプラットフォームである「HomeKit」に対応するデバイスが、Siriを介して操作できます。Matterに対応する製品やサービスの設定や操作は、アップルデバイスと「ホーム」アプリによってHomeKit対応デバイスと同じようにシンプルに扱えそうです。対応製品が出揃ってきたころに、また実機を試したいと思います。
HomePodには、温湿度センサーも新しく内蔵されました。HomePodが設置した場所の温度・湿度を自動計測し、Matterに対応する家電に情報を伝達、室内のコンディションを整えるといった「音声操作も不要」なスマートホーム連携の幅が広がりそうです。今春以降のソフトウェアアップデートにより、HomePodの内蔵マイクが火災報知器のアラームを聞き取り、ユーザーのデバイスに通知を知らせる「サウンド認識」の機能も加わる予定です。
聴きたい音楽の検索・再生はiPhone連携が便利
HomePodは、iPhoneやiPad、Apple TV 4Kなどアップルデバイスと連携して、さまざまなコンテンツのサウンドを高品位に再生します。
Siriの音声操作により、聴きたい楽曲の検索・再生ができるサービスは、Apple Musicです。ほかにもAirPlay 2を使えば、iPhoneで再生をはじめたAmazon MusicやSpotify、YouTubeの動画音声などをWi-FiでHomePodに飛ばして“いい音”が聴けます。
iPhoneで楽曲再生を始めてからHomePodに端末を近づけると、自動で再生を引き継げるHandoff(ハンドオフ)の機能がとても軽快で便利です。第2世代のHomePodにも、近接デバイスを認識する超広帯域チップが内蔵されたことで、UWB(超広帯域無線通信)によるスムーズなハンドオフが可能になりました。クラシックや洋楽の楽曲はタイトル名がとても複雑だったり、英語の発音につまずいたりするので、音声アシスタントによる選曲が時にはとても困難です。筆者の場合、HomePodシリーズではハンドオフを使う頻度のほうが高いかもしれません。
筆者は新しいHomePodに、Bluetoothオーディオ再生の機能追加を期待していました。Androidウォークマンのような、Bluetoothオーディオ再生に対応するハイレゾオーディオプレーヤーに保存した楽曲も、HomePodを使って部屋いっぱいに鳴らしたい時があるからです。
残念ながら第2世代機のHomePodも、iPhoneやiPadなど連携するデバイスとの通信用にBluetoothを内蔵していますが、オーディオデータのストリーミングには対応していません。Android端末の場合はGoogle Playから「AirMusic」というアプリ(有料)をダウンロードすれば、HomePodにも楽曲をストリーミングして楽しめるのでおすすめです。
Siriによる音声操作も便利
HomePodは、Siriに対応するスマートスピーカーです。本体に内蔵する4つの音声操作用マイクにより、ウェイクワードの呼びかけに常時待機。本体から離れた場所からの呼びかけに対して正確に応答します。
Siriは複数ユーザーの声が識別できます。家族の声を登録しておけば、各自にパーソナライズされたApple Musicのおすすめ楽曲を再生したり、リマインダーやメールの読み上げ・送信機能などが声を識別しながら使えます。
カレンダーに登録した予定をSiriに聞いたり、ニュースの読み上げやスマート家電の操作履歴などはランダムに生成された識別子と関連付けて記録されます。ユーザーのプライバシーを高度に保護する機能を盛り込んだ、セキュアなスマートスピーカーであることもHomePodシリーズの魅力です。
置き方は自由 コンピュテーショナルオーディオが「いい音」を自動調整
HomePodは内蔵するS7チップとソフトウェア、システムセンサー、低周波イコライザーマイクを連携させて、ユーザーが再生する楽曲の聞こえ方を常時リアルタイムに最適化します。またHomePodは内蔵マイクにより反射音を集めて、置いた部屋のアコースティック環境(壁との距離、家具の配置など)を自動測定します。
HomePodが内蔵するS7チップ、各種センサーやソフトウェアによる「コンピュテーショナルオーディオ」はとてもスゴいことを瞬時にこなしていますが、設定のオン・オフを切り換える操作や、稼働時に動作音が鳴ることもないので、ユーザーにはそのありがたみがわかりにくいかもしれません。ユーザーが意識することなく「いつでもベストなリスニング体験」が得られるように設計されている機能だからです。
コンピュテーショナルオーディオを持たないシンプルなスピーカーと比べてみると、HomePodの賢さは明らかです。それぞれのスピーカーを部屋のコーナー、テーブルの上など置き場所を変えながら音を鳴らしてみると、HomePodは音の聞こえ方が一定であることがよくわかると思います。
空間オーディオ・ステレオペア再生を聴く
筆者宅のリビングルームで、新しいHomePodの実機を鳴らしてみました。楽曲はApple Musicからセレクトしています。第2世代のHomePodは中高域の音抜けがよく、透明感が高まった印象を受けます。低音の分離もよく、パンチの効いたパワフルなビートを鳴らし切ります。音場の広がりがとても豊かです。歌ものの楽曲はボーカルのディティールがクッキリと浮かび上がります。
Apple TV 4Kの設定から「デフォルトオーディオ出力」としてHomePodを設定すると、Apple Music、Apple TVのサウンドも一段とリッチな環境で楽しめます。「ドルビーアトモスによる空間オーディオ」の立体音響体験にも対応。HomePodは単体、または2台をペアリングした環境のどちらでも空間オーディオ再生ができます。
1台のHomePodで、Apple TV+のオリジナルコンテンツ「太古の地球から〜よみがえる恐竜たち〜」を再生すると、映像に描かれる世界をよりリアルに感じさせる雄大なサウンドがわが家のリビングルームを満たしました。新しいHomePodは高さ方向に広がる音の立体感と見晴らしの良さ、繊細な効果音も引き立たせるシャープな解像感を特徴としています。
「太古の地球から」では、まさに“大地を揺るがす”ような重低音を味わうこともできますが、特に集合住宅の場合、夜間のコンテンツ鑑賞時には低音が出すぎる感じがするかもしれません。その場合は「ホーム」アプリからHomePodの設定に移動して「低音を減らす」のチェックをオンにすると良いでしょう。
HomePodを2台揃えると、ステレオペア再生が楽しめます。なお、新旧世代のHomePod、1台ずつをミックスしてステレオペアにすることは不可です。2台の新HomePodを用意できたので、Apple Musicのコンテンツをステレオ再生で聴いてみました。やはり中高音域の透明度がとても高く、ボーカルや楽器の音像が力強く浮かび、ステージが奥行き方向へ限界を感じさせることなく広がる臨場感に息を吞みました。
2台揃えると約9万円の出費になりますが、それでもアンプやプレーヤーなどピュアオーディオのコンポーネントを揃える予算と、その場合必要になる設置スペースを考えれば、2台のHomePodだけでこれだけ本格的なサウンドにのめり込めるのであれば「お買い得」と言えそうです。
現時点で最も完成度の高いSiri内蔵スマートスピーカー
HomePodは、音質と操作性がとても洗練されているスマートスピーカーです。第2世代機では、それぞれの要素に深みが増しています。HomePod miniよりも重厚な低音と、豊かに広がる中高域を楽しみたい方は、さらにHomePodを買い足す価値があります。Apple TV 4Kとのシンプルな組み合わせで、省スペース設置を実現しながら空間オーディオの極上スピーカーリスニング環境が作れる魅力は大きいと思います。
アップルはスマートホームの新しい規格であるMatterの立ち上がりに伴い、これからさらにHomePodシリーズのラインナップを充実させることも狙っているのかもしれません。引き続き、年内にHomePodのバリエーションモデルが登場するのでしょうか。もしそうだとしても、新しい第2世代のHomePodは音質とサイズ感、シンプルな操作性のバランスがとても良く、高い完成度が実感できるスマートスピーカーです。空間オーディオ対応の映画館、コンサートホールを自宅に再現したい方にも本機を最良の選択肢としておすすめします。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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