【速報レビュー】M2 Pro搭載「MacBook Pro」から見る新モデルのヒエラルキー(西田宗千佳)
ASCII.jp / 2023年2月2日 1時0分
M2 Proの価値はどうなのか? 結論から言えば、「パフォーマンスはちゃんとアップしているし、ハードも最新」だ。当たり前に思えるかもしれない。だがM1世代からM2世代に変わり、「今後のAppleシリコンはどう変化していくのか」を考える上では、非常に順当な進化であるのが確認できた。
2月3日に発売される「MacBook Pro(14インチモデル)」を試用できたので、そこからわかったことをお伝えしたい。
CPU性能の「序列」がようやく明快に
「M2とM1 Proって、どっちが速いの?」昨年M2搭載のMacが出た時、まず出たのがこの疑問だ。プロセッサーの世代的にはM2の方が最新だが、CPUやGPUのコア数、メモリーのバンド幅などではM1 Proの方が上だった。そして、そこに「M2 Pro」「M2 Max」が出てきた。
というわけで、M1からM2 Proまでをベンチマークで並べてみた。といっても、M1などは過去に計測したものなので、OSのバージョン変化などで多少のブレは出ているはず。厳密に言えば「参考値」と考えていただきたいが、実際に差がひっくり返るようなことにはなっていない、と想定している。
手元には、私物で使っている「MacBook Pro・14インチモデル・2021年後期モデル」(プロセッサーはM1 Pro/CPU 10コア/GPU 16コア、メモリー16GB)がある。貸し出された最新のMacBook Proと、プロセッサーの世代以外は同じクラスであるので、比較としてはちょうどいいだろう。
というわけで、まず以下のグラフをご覧いただきたい。こちらは、ベンチマークとしては定番の「GeekBench 5」でのCPUベンチマークと、「Cinebench R23」の結果だ。どちらも、SoCのうちCPUの性能を主に測るもの、と考えていただいていい。
並べてみると非常にすっきりしている。CPUの世代(M1かM2か)で2割程度早くなり、「Proかそうでないか」で6割から7割速度が変わる。
すなわち「速度を求めてMacを買う」なら、やっぱりProもしくはMaxを狙うべきであり、そうでないならできるだけ世代の新しいものを……という結論になる。アップルとしては「Pro」以上のSoCが搭載された製品について、明確に線引きして設計しているのがよくわかる。
おもしろいのは、シングルコアの性能はそこまで大きく変わっていない、ということである。半導体製造プロセスの進化がゆるやかなタイミングの製品であり、性能差をコア数+細かな進化で実現しているということなのだろう。搭載しているビデオ編集用の「メディアエンジン」や機械学習用の「Neural Engine」は、SoC世代の変化で大きく変わっている。M1 Proが出る時に一度大きく進化し、その後は同じ「M2世代」なら共通……という進化の方向性だ。
今回はM2 Max搭載製品のテストができていないが、この傾向をみると、CPU性能はメモリー帯域分少し上がった程度でM2 Proと大差なく、M2 Maxとしての性能差は「GPUで出していく」形になっていると想定できる。
コア数増加以上にGPU性能がアップ
速度の違いとしては、GPUの方が顕著だと感じた。今回試用したモデルの場合、GPUコアは19個ある。M1 ProモデルはGPUコアが16個だったので、3つ増えているわけだ。
GeekBench 5での速度差は26%程度だったのだが、これはコア数の増加(計算上3コアで18%アップ)以上の性能向上だ。
前出・M2 Maxについての予測でも書いたように、アップルは「高性能製品」での差をGPU周りでつけようとしている。それは、半導体プロセスの進化を待つ事情、ということもあるのだが、それだけでなく、「プロもしくは同様のハイエンドを求める人々のニーズ」として、GPUによるリアルタイムCG性能の向上や、AIなどのGPU演算性能向上が重要、と判断しているのではないだろうか。
実アプリケーションで言えば、Appleシリコンに最適化された「バイオハザード ヴィレッジ」(カプコン)でフレームレートをチェックすると、やはりおおむね「3割増し」になっている。WQHD(2560×1440ドット)・画質優先のセッティングの場合、M1 Proだと毎秒60フレームを切るシーンがかなり多くなるが、M2 Proだと毎秒50〜70フレームで安定しやすくなる。
まだMacを「ゲーマーに最適」というのは難しいが、性能面ではかなり健闘していると言っていいのではないか。ノートPCで、うるさいファンも回さず、かなり快適なまま「HDRでゲームができる」のは美点だ。そして、CPUコアやGPUコアが増えているにも関わらず、体感上の発熱はM1 Proモデルと大差ない。これもまた、歓迎すべきところだろう。
もちろんさらに時間が経てばもっと性能は上がるのだが、「今高性能なものを選びたい」なら、このモデルを選んでいいと考える。
Wi-Fi 6EやHDMI 2.1にも対応。ただし「M2 Pro」から
デザインなどは変わっていないので、M1 Proから買い換える人は少ないかもしれない。一方で、最新のハードウエア仕様になっている部分もいくつかある。例えば、Wi-Fiは6GHz対応の「Wi-Fi 6E」になった。
まあ家庭などの場合、「2.4GHz帯も5GHz帯も、どうしようもないくらい混んでいる」のでないかぎり、Wi-Fi 6と6Eの差が明確にわかることはないだろうと思う。しかし、今から買うのだから6Eの方がいいのは間違いない。
HDMIの出力も「2.1」準拠になっている。HDMI 2.1では、4K・120Hzでの出力や8K出力、可変リフレッシュレート(VRR)などに対応している。最新のテレビとつなぐ場合、やはり気になるところだった。M1 Proモデルでは4K・60Hz固定でつながるところが、M2 Proモデルでは可変フレームレート(最大120Hz)で接続できる。
ただ現状、Mac miniを選ぶ時には注意していただきたい。同じ最新モデルでもSoCがM2の場合、HDMI 2.1対応にはならないようである。すなわち、HDMI 2.1仕様は現状「M2 Pro以上」の特権、ということになりそうだ。なお、MacBook Pro(14インチおよび16インチ)はM2 Pro以上となるので、どのモデルもHDMI 2.1に対応する。
筆者紹介――西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)、新著「メタバース×ビジネス革命」(SBクリエイティブ)などがある。
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