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【先行レビュー】強化版M2チップ搭載「MacBook Pro」プロだけじゃない!みんなが欲しくなる

ASCII.jp / 2023年2月2日 1時0分

最新のM2 Maxチップを載せた16インチのMacBook Proをレポートします

 アップルが独自設計のM2チップを強化した「M2 Pro」「M2 Max」を発表、最上位のモバイルノート「MacBook Pro」の14インチと16インチに搭載します。上位M2シリーズのチップはMacBook Proにどんな革新をもたらすのでしょうか? 2月3日に発売を迎える新製品をレポートします。

AppleシリコンはM2 Pro/M2 Maxが選べる

 アップルは、独自設計のApple M2チップを2022年6月のWWDCで発表しました。現行の13.6インチMacBook Airと、13.3インチのMacBook Proがいち早くM2チップを載せて登場。続く秋に、iPad ProもM2チップを採用しています。

Apple M2シリコンの上位チップである「M2 Pro」「M2 Max」が発表されました

 M2 Pro、M2 Maxの各チップは、M2チップをベースにパフォーマンスの強化と電力効率の改善を図っています。14インチ・16インチのMacBook Proは、ともにカスタムオーダーが可能。M2 Pro搭載機は14インチが28万8800円、16インチが34万8800円から。M2 Max搭載機は14インチが44万8800円、16インチは49万8800円からとなります。M2 Maxを選択した方が、14インチと16インチの間の価格差が、1万円縮まるところが興味深いです。

 12コアCPU/19コアGPU、16GBメモリ、1TBストレージのM2 Pro搭載機であれば、14インチと16インチの価格差が1万8000円まで接近します。全体のラインナップを俯瞰すると、M2 Proを搭載する14インチのMacBook Proが唯一20万円台を実現しています。CPU/GPUのコア数など仕様を少し変えているものの、アップルが「初めての上位MacBook Proユーザー」にも優しい価格設定のマシンを用意したことを歓迎したいです。

安全に着脱できるMagSafe 3コネクタを引き続き採用

タフなバッテリー持ちが魅力的

 M2 ProとM2 Maxは電力効率の良いチップです。アップルは、新しいMacBook Proが本体を電源につないでいる時と同等のパフォーマンスをバッテリー駆動時にも発揮すると強調しています。

 アップルが公開する新しいMacBook Proの仕様を比べると、14インチのMacBook Proよりも16インチのモデルはワイヤレスインターネット、動画再生の連続使用時の「バッテリー持ち」が数時間ほど長いことがわかります。アップルが2021年に発売したM1シリーズのチップを搭載する14インチ・16インチのMacBook Proとの比較では、新しいモデルが1時間ほど連続使用できる時間が伸びています。

 アップルはMacBook Proに搭載するバッテリーパックのサイズは変えずに、シリコンの電力効率を高めて、さらにバッテリーに関連するソフトウェアとシステム全体の見直しを図ることでスタミナを強化しています。

 今回筆者は、M2 Max搭載の16インチMacBook Proを試しました。バッテリー駆動だけでテキストタイピングや写真の加工編集、Webブラウジングに動画・音楽コンテンツの再生など、普段通りの使い方をした結果、24時間経過後の残量は30%前後でした。MacBookにもっと負荷の大きなハードワークをさせたい方にはあまり参考にならないかもしれないので、目安として捉えてください。

 バッテリーが長持ちすれば、例えば海外へ長い「空の旅」に出かける際にも機内でMacBook Proを充電することに気をもむ必要もありません。14インチは96W、16インチは140WのUSB-C電源アダプタによる高速充電ができます。もし残量があやしくなってきても、乗り継ぎの際に短時間チャージすれば残る道中も安心です。

筐体のリア側に排気ダクトを設けていますが、かなり負荷の大きなタスクを継続して実行しないかぎりファンが回ることはなさそう。とても静かなMacBookです

 新しい14インチ・16インチのMacBook Proも、2021年のモデルと同じく筐体内部に熱を冷ますためのファンを内蔵しています。ただ、M2チップの電力効率がとても良いので、よほど負荷の大きなタスクを継続実行しないかぎりファンは起動しません。筆者もまだ一度もMacBook Proのファンがうなっている音を耳にしていません。こんなに静かならMacBook Proによる動画や音楽再生にも集中できそうです。

高精細なHDR対応のSuper Retina XDRディスプレイを搭載。iPhone 14 Proで撮影したHDRビデオがとても映えます

高精細で表示領域の広いLiquid Retina XDRディスプレイ

 14インチ・16インチのMacBook Proは、高いオーディオ・ビジュアル性能を備えるモバイルPCです。ここからはエンターテインメントマシンとしての魅力を深掘りします。

 MacBookシリーズの中で、14インチ・16インチのProだけがHDRビデオをダウングレードせずにそのままの画質で表示できるLiquid Retina XDRディスプレイを搭載しています。アップル製品の中では、ほかにiPad ProとApple Pro Display XDRが同じLiquid Retina XDRディスプレイを搭載。iPhone 14シリーズのSuper Retina XDRディスプレイもHDRビデオの表示に対応します。

 14インチ・16インチのMacBook Proは、HDRビデオの再生時に最大1600nitsの明部輝度を再現します。筆者が昨年、iPhone 14 Proで旅の思い出を撮影したドルビービジョンによるHDRビデオをAirPlay経由でMacBook Proに飛ばして視聴しました。まるでその場所にいるような臨場感が伝わる、活き活きとした映像です。このリアリティに一度触れてしまうと、やはり16インチの大きなMacBook Proが欲しくなります。

 MacBook Proは動画ファイルの処理に特化するメディアエンジンを積んでいるので、iPhone 14 Proで撮影した4K ProResビデオもスムーズに再生できます。プロフェッショナルの動画クリエイターにはやはりMacBook Proが最も信頼のおけるマシンになるでしょう。

 Liquid Retina XDRディスプレイはProMotionテクノロジーによる最大120Hzの可変リフレッシュレート表示にも対応しています。これは13インチのM2搭載MacBook Proにない機能です。高画質なビデオの表示が滑らかになるだけでなく、Webブラウジングのスクロール表示もチラつきが抑えられるので、ふだん使いの場面でプラスの効果があります。

ディスプレイ設定からリフレッシュレートを固定、または最大120Hzまで可変応答するProMotionテクノロジーが選べます

 動画を編集する際などには、ビデオファイルの撮影時リフレッシュレートに合わせてディスプレイの表示を固定することもできます。macOSのシステム設定に入り、「ディスプレイ」の中にあるリフレッシュレートを選択します。

 Liquid Retina XDRディスプレイは、ベゼルを狭くして画面領域を広げています。上部中央のノッチには、FaceTime HDカメラなどをコンパクトに配置しました。画面占有率が高く感じられるので、Excelで作った表もすみずみまで一望できて作業がはかどります。動画コンテンツの再生時にはメニューバーが消えて、上下に黒い帯が入ります。ノッチの形に映像が切り欠かれて没入感が削がれる心配は不要です。

内蔵スピーカーでApple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオコンテンツを再生。モバイルPCで再生していることがにわかに実感できないほど豊かな包囲感が得られました

6スピーカーサウンドシステムで再生する 空間オーディオの見事な臨場感

 14インチ・16インチのMacBook Proは4つのウーファー、2つのトゥイーターにより構成される6スピーカーサウンドシステムを内蔵しています。本体のスピーカーによる空間オーディオ再生にはMacBook Airも対応していますが、6スピーカーサウンドシステムの豊かな音の広がりと包囲感は別格でした。

 Apple TV+の空間オーディオに対応する映画やドラマを視聴すると、Liquid Retina XDRディスプレイの映像の迫力と相まって、モバイルPCで視聴していることを忘れてしまうほど作品に深く引き込まれます。

 AirPodsシリーズのワイヤレスイヤホン・ヘッドホン、ビーツのワイヤレスイヤホン「Beats Fit Pro」を組み合わせると、ドルビーアトモスによる空間オーディオがダイナミックヘッドトラッキングとともに楽しめます。立体的な音場の中で、コンテンツの音の位置があるべき所に定位する機能です。MacBook Proで空間オーディオ再生を楽しむのであれば、筆者は断然「内蔵スピーカーで鳴らす」方をおすすめしますが、夜間などスピーカーで大きな音を出しにくい場面ではAirPodsも上手に併用すると良いでしょう。

 14インチ・16インチのMacBook Proは強化された3.5mmヘッドホンジャックを搭載しています。M1シリーズのチップ搭載機から継承する機能です。

ほかのノートPCでは十分に鳴ってくれないハイエンドなオーディオファイル向けのヘッドホンも、MacBook Proなら十分に実力を引き出せます

 MacBook Proには接続された有線タイプのヘッドホン、イヤホンのインピーダンスを自動検知、出力電圧を最適化する回路も組み込まれています。アップルはインピーダンス値の高い、高音質なオーディオファイル向けのヘッドホンが軽快にドライブできるとうたっています。確かにインピーダンスが300Ω(オーム)のゼンハイザー「HD 820」もスムーズに鳴ってくれます。

 「高インピーダンスなヘッドホン=最高にいい音」というわけでもなく、あくまでキャラクターの違いを生む要素のひとつ。でも高インピーダンスな製品もしっかりと鳴らせる、オーディオ目線で大事なパフォーマンスをMacBook Proがしっかりケアしていることに筆者は好感を持ちます。

 なおMacBook Proも最大96kHz/24bit対応のDACを内蔵しているので、Apple Musicのハイレゾロスレス音源が高音質に楽しめることも覚えておきたいポイントです。

こちらは本体内蔵の1080p FaceTime HDカメラによるFaceTimeの映像

14インチと16インチはどちらを選ぶべきか?

 14インチ・16インチのMacBook Proは、ともに1080p FaceTime HDカメラを搭載しています。FaceTimeやZoom、WebExなどビデオ会議アプリケーションと連携して、人物の表情を明るくきれいに映しながら相手に伝えることができます。

iPhone 14 Proを組み合わせて連係カメラを実行。肌の精細感が高まってしまいました

 macOS Venturaから新しく提供が始まった「連係カメラ」を使うと、iPhoneがMacの外付けWebカメラになります。iPhone 14 Proを連係させて画質を比べてみると、やはりiPhoneの方が画質が優秀です。加えて現行のMacBook Proシリーズが揃って搭載する「スタジオ品質の3マイクアレイ」があれば鬼に金棒。専用アクセサリーを使わず、MacBook Pro単体でも最高品質のビデオ会議をシンプルにこなせる環境が整います。

 ほかにも、新しい14インチ・16インチのMacBook ProはWi-Fi 6Eによるワイヤレス接続ができたり、HDMIがマルチチャンネルオーディオ出力に対応しました。デジタルインターフェースは左右側面に計3基のThunderbolt 4/USB-Cポートがあるので拡張性はハイレベル。デジタルカメラで写真・動画を頻繁に撮るユーザーには不可欠なSDXCカードスロットも便利です。

 14インチ・16インチのMacBook Proはどちらを選ぶべきでしょうか? カスタムオーダーの内容が同じであれば、あとは画面サイズ以外に目立つ差はありません。

 本体の質量は14インチが1.6kg以上、16インチが2.1kg以上。13インチのMacBook Proは1.4kg、M2搭載MacBook Airが1.24kg、M1搭載MacBook Airは1.29kgです。可搬性の面では14インチのMacBook Proがリモートワークにも柔軟に馴染みそうなので一歩リードです。一方で16インチMacBook Proのバッテリー持ちの良さと、極上のPCエンターテインメントが楽しめるスケールの大きさは、他のモデルで代えが効くものではありません。

 新しい上位M2チップを搭載するMacBook Proの魅力は、角度を変えて見ながらじっくりと吟味する価値があると思います。

 

筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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